
Image credit: Mitsubishi Estate
三菱地所(東証:8802)は30日、スタートアップ向けの CVC ファンド「BRICKS FUND TOKYO」を組成したと発表した。今後5年間で100億円程度を出資する。チケットサイズは数千万円から最大で5億円程度。CVC ではあるが、三菱地所グループとの短期的な事業連携は前提としておらず、10年スパンでの長期的なシナジーを目指すため、投資領域は不動産やプロップテック領域にとどまらないとしている。投資テーマは、(1)新たなライフスタイル、(2)既存産業のパラダイムシフト、(3)サステナビリティ。具体的な領域は次の通り。
- コマース
- モビリティとロジスティクス
- SaaS
- フィンテック
- Web3
- クライメートテック
- ソーシャル+
- エンターテイメント
- プロップテック
- サイバーセキュリティ
- フードとアグリ
- ライフサイエンスとバイオテック

三菱地所がスタートアップエコシステムに関わるのはこれが初めてではない。これまでにも、Coral Capital、JAFCO、Draper Nexus Ventures、UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)、Atomico といったファンドへの出資、EGG JAPAN や FINOLAB などワークスペースの運営、東大の卒業生・在学生向けスタートアップ支援プログラム「FoundX」の起業支援施設への寄付・協力など、さまざまな形で起業家創出やエコシステム醸成に貢献してきた。
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機は熟したということだろう。三菱地所ではスタートアップとのアライアンス構築や社内新事業提案程度「MEIC」などの運営を手がける新事業創造部を創設しており、ここが主導となって新ファンドの運用を行う。また、ディールソースなどにあたっては、海外にも強く電通ベンチャーズの運営にも協力しているプライムパートナーズのメンバーが、新ファンドの運用に協力する。新事業創造部の橋本雄太氏によれば、投資先の3割程度は、海外スタートアップ(特に北米)になるだろうとのことだ。
CVC である以上、長期スパンとはいえ、スタートアップとの事業協創を標榜することについては間違いない。新ファンドを運用するのは8名程度のメンバーだが、これだけでは事業協創を展開していく上ではややパワー不足だ。三菱地所では各事業部ごとに新規事業担当者がいて、彼らがスタートアップとの事業協創をリードしている。ファンドの運用メンバーらは、会社全体の事業部横断で新規事業担当者と連携しながら、効果的な投資活動を展開していくという。

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BRICKS FUND TOKYO からはすでに出資が始まっている。先週伝えた matsuri technologies の資金調達記事では、出資者の一つが名前非開示の不動産デベロッパ大手としたが、これは他ならぬ BRICKS FUND TOKYO だった。同ファンドは不動産やプロップテックに特化したファンドではないが、図らずも初号案件はプロップテックのスタートアップになったそうだ。ファンド名に三菱や地所といった名前が見当たらないところにも、彼らが本業と隣接しない領域で事業創出を目指す覚悟を感じとることができるだろう。
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