※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。
シンガポールを拠点に、音声認識や自然言語処理技術を活用したプラットフォームを開発する AI Communis は18日、エンジェルラウンドのエクステンションで30万米ドルを調達したと発表した。このラウンドには、THE SEED、中国や台湾の MCN(マルチチャンネルネットワーク)、日本の YouTube 業界に造詣の深いエンジェル投資家、既存投資家らが参加した。
これは AI Communis にとって、2021年9月に実施したエンジェルラウンドの 1st クローズ(50万米ドルを調達)に続くものだ。同社では今後も資金調達を続け、2022年内にシードラウンドに挑戦する計画だとしている。
AI Communis は2020年4月、動画の翻訳・字幕追加・編集などを手掛けてきた鈴木信彦氏により創業。従来、こういった動画の海外市場対応、多言語対応は手作業によるものだったが、Amazon Transcribe(音声からの書き起こし)、DeepL や Google Translate(翻訳)の精度が以前に比べ著しく向上したこともあり、多くを機械処理で行えるようになった。
AI Communis はこうした、動画の翻訳 → 字幕追加 → 編集といった一連作業をクラウドで一元的に対応できる「Auris」という Web アプリを昨年ローンチした。AI Communis では、このアプリを使って、クラウドワーカー(クラウドソーシングされたギグワーカー)らがアジア10カ国の言語への動画多言語化を支援する事業を本格化させる計画だ。
こうした動画の多言語化は、国際展開したい YouTuber やプロダクトを海外マーケティングしたい企業などで需要が大きいという。現在はまだ本格運用前ということもあり、需要の急増に対応が追いついていないようだが、数十分程度の動画であれば、素材提出から一週間程度で字幕が入った形で納品してくれる。
納品形式も多様だ。中には、YouTuber らから「○○語版の私のチャンネルの管理をお願い」と、動画の多言語化はもとより、そのチャンネルの運営や視聴者を増やす施策実行までをまとめて依頼されるケースが増えてきたという。今回の投資家に、MCN や YouTuber ビジネスの関係者を含んでいるのは、動画で視聴者のエンゲージメントを高めるノウハウを得るためだという。
Auris が現在対応しているのは、英語、中国語(普通話)、韓国語、日本語、ベトナム語、タイ語、タガログ語、インドネシア語、ヒンドゥ語、マレー語の10ヶ国語。つまり、人口だけで言えば、世界人口の3分の1以上の市場にリーチできるコンテンツの開発を効率化できることになる。
Auris のユーザはβローンチの2ヶ月後の11月で100人程度だったが、その後、2022年1月に1,000人、3月に3,000人、3月末には8,000人、現在では約1万人にまで急速に増えた。インフルエンサーや KOL などの多言語需要、あるいは、こういったツールを使ったデスクワーク形態のギグワークを期待するユーザを魅了したのかもしれない。
AI Communis は、NUS(シンガポール国立大学)や Singtel らがアクセラレータを置く、シンガポールのスタートアップハブ「BLOCK 71(BLK71)」に拠点を構えている。東南アジアじゅうから、起業家候補やインターン候補が集まるこの地では、多言語サービスを開発するスタートアップにとって何かと好都合で、彼らは AI Cmmunis の事業の発展に大きく寄与しているようだ。
<参考文献>
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