#8 今考えるべきデジタル民主化 〜THE BRIDGE CEO × ACV唐澤〜

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト。グローバル・テックシーンを見つめてきたITジャーナリストの松村太郎をナビゲーターに迎え、旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

岸田政権は2022年を「スタートアップ創出元年」として、官民をあげてスタートアップ支援を強化することを表明しました。ひと頃前は新興企業とか、ベンチャーとか呼ばれることが多かったスタートアップですが、この呼称も一般名詞として世の中に随分と定着しました。

スタートアップはいつ頃から生まれて、どのような変遷をたどって今日に至るのか。10年以上に 日本のスタートアップシーンを取り上げるメディアを運営する THE BRIDGE の CEO 平野武士氏をゲストに迎え、アクセンチュアの ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクターの唐澤鵬翔が語ります。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。太字の質問はすべてナビゲーターの松村太郎さん)

ポッドキャストで語られたこと

  • メタバースやトークンエコノミーは、日本のスタートアップが世界に打って出るチャンス。人口の少なさはディスアドバンテージではなくなる。
  • DeepL の登場で言葉の壁もなくなりつつある。トヨタやソニーといった以前からの日本の成功体験に依存せず、新たな価値観で世界で勝負できるようになる可能性がある。

唐澤:現在、アクセンチュアの中でエンタメ業界を担当していますが、エンタメ業界が最近元気になってきていると感じています。一億総クリエイターみたいな話は確かにあると思っています。以前 Snapchat の創業者が「 Snapchat はコミュニケーションツールで、Instagramはステータス。TikTok がなぜ流行ったかというとクリエイティブの価値をうまく射抜いたから」と面白い話をしていました。

TikTokは元々中国が出自なこともあって、自分のクリエイティビティを発揮しサービスの一部になりながら、ただ搾取されるのではなく、自分がオーナーシップを持って作っていく流れは間違いなくあります。最近は、そういうことを前提としたサービス設計も増えてきていると思います。既存プラットフォーマーに対して脅威になっていることが、幾つかの業界では起こっています。

日本の企業をメインに支援してる中で思うのは、日本は、実は凄くクリエイティビティーのある国なんですよね。単純なエンタメコンテンツの話だけではなく、日本企業も含めて元来クリエイティビティーがあるにもかかわらず、うまく外に見せられてないと感じます。先日、中国の36krグローバルCEOの馬成氏とBRIDGE Tokyoでも対談させていただいたのですが、面白いことを言っていました。、最近は、「モバイルゲーム」というと大体中国じゃないですか。モバイルゲームのTop 10のうち4割か5割が中国ですし最近エンタメ系のベストプラクティスも結構中国が多いです。「それはすごいじゃないか」と話したら「全然だ」と言っていました。中国から見ても日本のエンタメコンテンツや、日本企業がゼロから作り出したものはとてもクリエイティブだと捉えられていて、中国が今当たっているのはたまたまだって言うんですよ。要はお金が沢山あり、可処分所得の変動幅が凄い。

なので、クリエイティビティがそんなになくても突っ込めちゃう。外からだとそういう見方しないじゃないですか。今、中国は締め付けがあったり、もっと落ち着いてくる中で、今後は品質が低くてはもうさすがにやっていけない。だから日本企業のコンテンツやクリエイティビティをもってうまく中国企業とコラボするチャンスがすごくあると話していました。

平野:今もう別に国という概念がないかもしれないですが、OpenSeaのGMV(流通取引総額)を見ると爆発的に上がっていってるので、中にいる人達は正直誰がどこの国の人なのか全く分からないですよね。ブロックチェーンの可能性は、権利の移動みたいな部分が国とか大きい単位じゃなくて個人になった時に、何かシステムで回そうとし、人手をかけると当然処理しきれなくなるので、これを完全にトラストレスな状態で自動化させたところがエポックメーキングな出来事じゃないですか。

個人の可能性をマーケットプレイスに乗せて、国とかあまり関係なくインターネットで全部繋いで取引させていると。最近NFTのプロジェクトで日本のアニメのようなものがいくつか出てきてるんですよね。作ったのは、もしかしたら日本人かもしれないし、全然違う国の人かもしれない。それぞれの国の規制の問題とか最終的に法定通貨に換える時のKYC(本人確認)があるかもしれないですが、出口だけのプロトコルになるんじゃないかと思っています。

唐澤:大企業のクライアントと話していると「メタバース」が流行っています。メタバースについて議論したいと週に2〜3件予定が入るのですが、お伝えしているのはメタバースはレゾリューションの議論じゃないと。つまりどうやってきれいな3D空間作ってやるかではない。僕はまさに「国造り」だと思っています。自分たち独自の経済圏を作る。メーカー思想からの脱却なんですよね。モノづくりの発想ではなく、場を作って国を造って、そこで商売する人たちを呼んできて、治安維持して、最後税金としていただくという発想でやらないとうまくいかない。

国として捉えた時に、国土が広ければ広いほどいいですよね。なので初めからグローバルが前提になります。自動翻訳の精度は閾値まで来ていると思っています。そういうものを活用し、最初からグローバルのユーザーをターゲットすべきだと話します。これは日本企業にとってはチャンスです。リアルな世界だけなら一番のディスアドバンテージは人口なんですよね。中国で、日本のスタートアップのビジネスモデルを変えずにそのまま中国に持っていったら企業価値評価が10倍になる。なぜならユーザーが10倍いるから。そのディスアドバンテージが、実はメタバースとかトークンエコノミーではなくなります。

平野:海外に出ていくスタートアップの話は昔からありますよね。ウォークマンの話があったりとか、車を持って行ってフォードを打ち負かしたみたいな話とか。2010年ぐらいに、2000年代に起業したテクノロジー企業がビックテックにどうやっても勝てない要因は人口だとみんな分かっていたので、最初からグローバルだと言ってデラウェア登記組が出たんですね。アクセラレーションプログラムを使って最初に登記するのはデラウェアだと。

その国の文化を全く分からない人たちが進出して、「これどうですか」と言っても車みたいに物がないサービスは絶対にカルチャーフィットしないと受け入れられない。それが2010年の教訓だったかなと。ここから10年経った今、何が起こってるかというと、DeepLの登場により言葉が綺麗に通じるようになった。ギャップは多少はあるかもしれないけれど、読むに関しては全然問題ない。

カルチャーの部分に関して、最近教えてもらった面白い話があります。私が今使用しているツイッターのアカウントには「kigoyama」というペンネームが付いているのですが、それは本当にあなたですかと。もし法定通貨でギャラを取らずにトークンでギャラをもらって、Discordで仕事したら僕が誰かは絶対分からないまま仕事ができてしまいます。それが成り立つ世界が来ています。こうなったときに、「カルチャーって何ですか」とか、「誰に何を売りますか」みたいな話は全然違ったアイディアが必要になってくると思います。ここに今チャレンジできるのは凄くチャンスです。昔の人達がこう言ってたからなど考えずに解放された状態でチャレンジすると全く違うスタートアップが出てくるんじゃないかなと思います。

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