イーロン・マスク氏、Twitter買収ーープレスリリースには何が書かれた

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ピックアップ: Elon Musk to Acquire Twitter

ニュースサマリ:Twitterは25日、イーロン・マスク氏が提案していた買収提案を受け入れると正式に発表した。買収提案はTwitter株を1株あたり54.2ドルの現金で100%完全買収する。買収総額は約440億ドル(今日時点の日本円換算で約5兆6,380億円)。買収が完了次第、Twitterは非公開企業となる。

話題のポイント:買収金額にして5.6兆円、こういうニュースの場合は数字を切って表記することが多いんですが、約380億円相当が「端数」に相当するとんでもない買収劇場です。個人でTwitterって買えるんですね。

さて、世界の言論プラットフォームを個人が保有することの是非や、買収スキーム、ジャック・ドーシー氏はどうするの?、なんかよくわかんないけどドージコイン爆上げしてる!などなど、おそらく向こう1週間ぐらいはこの話題であれこれみなさん語るんだろうなと思いつつ、個人的に注目したのがプレスリリースでした。

この世界的な買収劇で企業は公式な声明をどう出すのか?読んでみるとシンプルかつ、結構重要なことが書いてありました。以下、原文(PRNewswire経由)の一部翻訳です。

Twitter, Inc.(NYSE・ティッカーシンボル:TWTR)は本日、イーロン・マスク氏が100%保有する企業が1株当たり54.20ドルの現金で、約440億ドル相当の取引で買収する正式契約を締結したことを発表しました。この買収が完了すると、Twitterは株式非公開の企業となります。

本契約に基づき、Twitterの株主は本取引の完了時に保有するTwitterの普通株式1株につき54.20ドルを現金で受け取ります。この買収価格はマスク氏がTwitterの約9%の株式を保有したことを公開する前の最後の取引日である、2022年4月1日の終値に対して38%のプレミアム価格となります。

Twitterの取締役会長(Independent Board Chair)であるBret Taylor(ブレッド・テイラー)は、「Twitterの取締役会はその評価、確実性、経済性を特に意識してイーロン氏の提案を評価するため、思慮深く包括的なプロセスを実施しました。提案された取引は多額の現金プレミアムをもたらすものであり、Twitterの株主にとって最善の道であると信じています」と述べています。

また、TwitterのCEOであるParag Agrawal(パラグ・アグラワル)は次のように述べています。

「Twitterは全世界にインパクトを与えるという意志を持ち、そしてここに関与しています。我々のチームを深く誇りに思い、かつてないほど重要な案件に刺激を受けています。マスク氏は『言論の自由は民主主義の基盤であり、Twitterは人類の未来に不可欠な出来事が議論されるデジタルな街角になる』と語りました。私は新機能による製品の強化、信頼性を高めるためのアルゴリズムのオープンソース化、スパムボットの撃退、そしてすべての人間の認証によって、Twitterをこれまで以上に良くしていきたいと考えています。Twitterは非常に大きな可能性を秘めています。私は、会社やユーザーのコミュニティと協力して、その可能性を解き放つことを楽しみにしています」。

取引条件と資金調達

Twitterの取締役会が全会一致で承認したこの取引は、Twitterの株主承認、適用される規制当局の承認の取得、その他の一般的な完了条件の充足を条件として、2022年に完了する予定です。

マスク氏は、255億ドルのフルコミットメント型借入金および有利子ローンによる資金調達を確保しており、さらに約210億ドルの株式コミットメントを提供する予定です。本取引の完了に際して(新たな)資金調達の条件はありません。最終的な取引契約に含まれるすべての条件の詳細については、この取引に関連して提出されるTwitterのCurrent Report on Form 8-Kを参照してください。

2022年第1四半期の業績

Twitterは2022年4月28日の市場取引開始前に2022年度第1四半期決算を発表する予定です。本日発表された取引に鑑み、Twitterは対応するカンファレンスコールを開催しません。

シンプルな声明の発表なんですが、中でも現CEOであるアグラワル氏の「信頼性を高めるためのアルゴリズムのオープンソース化、スパムボットの撃退、そしてすべての人間の認証によって、Twitterをこれまで以上に良くしていきたいと考えています(I also want to make Twitter better than ever by enhancing the product with new features, making the algorithms open source to increase trust, defeating the spam bots, and authenticating all humans.)」というコメントが光ります。

フィルターバブルという言葉をご存知の方も多いと思いますが、ソーシャルメディアに身を置くと、フォロワーやこういったアルゴリズムの影響でタイムラインに並んでくる情報に偏りがどうしても生まれてきます。この根源となるアルゴリズムがオープンソース化された場合どのような影響・変化が生まれるのか。また、認証についても実名ではなく「人間」としている点も注目です。

今、Web3などの文脈で偽名経済という言葉が出つつありますが、DAOに参加するコントリビューター、Discordのユーザーなどは必ずしも実名である必要はありません。

一方、Twitterにはびこるボット軍団は、私が「Metamask」と入力するだけでパスコードをくれとスパムを寄越します。本当に引っかかりそうになったので、案外、被害出てるんじゃないかな。実名と匿名の良さを兼ね合わせた「人間の認証」がTwitterバースにどのような影響を与えるのか。興味は尽きません。

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