お葬式もDX——Farewillにみる海外事情/GB Tech Trend

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英国の葬式関連スタートアップ「Farewill」(Image Credit:Farewill)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

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コロナ禍によって世界的にSaaS化・DXの流れが加速しましたが、その影響は葬式のプロセスにも及んだようです。具体的にはオンライン遺言書の作成、死亡税や財産税の整理、火葬の注文などのタスクをデジタル上で完結させる流れです。こうしたニーズを取り込もうと登場したのが「Farewill」です。すでに3,500万ドルの調達を終えています。

Farewillは「死をデザインする」をコンセプトに、これまで高額で冗長だった葬式のプロセスをよりシンプルかつわかりやすいものへと変えようとする英国拠点のスタートアップです。

オンラインで遺言を書き、検認サービス(相続人等に対し遺言の存在を通知するとともに遺言書の形状や内容等を明確にし、後日の偽造・変造・隠匿・滅失等を防止して遺言書を確実に保存するための手続き)を手軽に行えたりするなど、火葬注文のプラットフォームになっています。

TechCrunchの報道によると、2020年時点ですでに英国の遺言市場の10%を占めているそうで、すでに市場最大のシェアを誇るサービスにまで成長しています。また、同社が提供する火葬サービスは従来のコスト比で5分の1ほどと安価であるため、余った予算で他の葬式オプションの購入も促進できているようです。

競合としては「Everdays」が挙げられます(同社はすでに事業多角化へ路線を変更中)。Everdaysは故人の思い出コンテンツをまとめ、逝去したことを関係者へ伝えるサービスを展開しています。通知プロセスにはAIを用いて、関係値の高い友人・知人へ連絡できることから従来の手順を大幅に改善するとしています。コロナ禍の影響で、オフラインの葬儀で故人を忍ぶこともできない社会になりつつあることから、Everdaysが展開するこうした「バーチャル葬式」にも、徐々に注目が集まっています。

もともとは全米各国の葬儀業者と提携し、葬儀手配を斡旋することで収益化を目指していました。2017年時点でEverdaysの利用葬儀会社は800件近く、さらに4,000件の葬儀社がサービスの利用を約束していたそうです。米国内の業者数は約2万5,000件あるそうなので、約20%弱のシェアを占めていることがわかります。

日本におけるコロナ禍は徐々に収束の方向に向かっているように感じますが、まだまだ予断を許さない状況です。葬式自体は小さく実施し、思い出を共有するようなEverdaysや、遺言などの事務手続きをネット上で完結させるFarewillといった葬儀の新たな形に注目が集まるかもしれません。

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