元マイネットCFO嶺井氏率いるグロース・キャピタル、上場後の資金調達と成長を支援する新パッケージをローンチ

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新パッケージを説明するグロース・キャピタルの創業者で代表取締役 CEO の嶺井政人氏(右)。左は、グロース・パートナーの一人であるマーケットリバー代表取締役の市川祐子氏。
Image credit: Masaru Ikeda

<12日午後8時更新> 訂正線部を削除、赤字部を加筆。

上場企業の資金調達支援や付随サービスを提供するグロース・キャピタルは4日、都内で記者会見を開き、2つのパッケージの提供を開始すると発表した。上場に至るまでのスタートアップを支援する資金調達手段としてはベンチャーキャピタルなど充実しつつあるが、上場後については、十分な株式の流動性が確保できず適切な株価でスムーズに資金調達できない、戦略を議論できるパートナーの不在や実行力が社内に存在しない、などの理由から成長に課題が立ちはだかる。

グロース・キャピタルでは、戦略的 IR 支援と株式による資金調達、グロース・パートナーとの連携による経営支援と株式による資金調達の2つのパッケージを用意し、上場後のベンチャー企業の成長を支援する。後者のパッケージでは、グロース・パートナーとして、アルファドライブ代表取締役の麻生要一氏、CAMPFIRE 代表取締役の家入一真氏、MIH アドバイザリー代表取締役の牧知秀氏、ファミリーマート CMO の足立光氏、マーケットリバー代表取締役の市川祐子氏が月次の経営アドバイスを行う。

グロース・キャピタルが支援対象とするのは、上場企業(約3,800社)の約3割に相当する時価総額100億円1,000億円未満の企業。こうした企業は機関投資家の投資対象とならないため、主に個人投資家が IR(インベスターリレーションズ)の対象となるが、これまで株式発行体(企業)や証券会社が行なってきた IR 活動では十分な露出や情報リーチができていなかった可能性がある。グロース・キャピタルでは個人投資家の層ごとにペルソナを立て、彼らにあった認知度向上のための活動を企業に提案していくという。

新パッケージの初号顧客となるイオレ代表取締役社長の冨塚優氏
Image credit: Masaru Ikeda

上場会社のファイナンス手段として新株予約権が一般的になりつつある。従来、新株予約権は年平均100社ほどが発行し、これを証券会社が取得して自社顧客などに提供してきた。グロース・キャピタルではこのうち年間5〜10社程度の新株予約権を取扱い、企業のフェーズに合わせた独自の個人投資家向け IR 戦略フレームワークにより企業を支援する。このサービスの第一弾として、「らくらく連絡網」などを展開するイオレ(東証:2334)が「戦略的 IR 支援と株式による資金調達」パッケージを導入すると明らかにした。

上場後の企業の資金調達が難しくなる問題——〝ポスト IPO の谷〟については、以前インタビューしたハヤテインベストメントも指摘していた。また、上場企業の認知に関する指標の一つとしてよく挙げられるのが、証券アナリストが出す決算分析レポートの数だ。このレポートは個人投資家が投資判断の参考にできるとされるものだが、カバーしているのは全銘柄の7分の1程度に過ぎない。xenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)のように、この情報非対称をテクノロジーで是正しようとするスタートアップも存在する。

東証は今日、1部、2部、ジャスダック、マザーズだった市場区分を、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編した。持続的な企業価値向上の動機づけ、つまり、上場後もさらなる高みを目指して成長しようとするスタートアップのモチベーションづくりが、今回の市場再編の理由の一つだ。この動きには賛否両論あるが、グロース・キャピタルの創業者で代表取締役 CEO の嶺井政人氏は、結果的には上場後の企業成長を促す流れにつながるだろう、と好意的な見方を示した。

嶺井氏の説明によれば、2013〜2019年に日本で上場した新興企業のうち、時価総額1兆円を上回る企業(いわゆるデカコーン)は存在しない。一方、同期間にほぼ同数が上場した NASDAQ ではデカコーンは21社に上る。
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グロース・キャピタルは2019年、以前はマイネット(東証:3928)で CFO を務めた嶺井氏により創業。嶺井氏は早稲田大学在学中にマーケティングソリューションを提供するセールスサポートを創業し、ネオマーケティング(東証:4196)に売却。その後、モルガン・スタンレーで投資銀行部門やクレジットリスク管理部門で、テクノロジー企業の資金調達や格付業務に従事した。マイネットでは、2013年に東証マザーズへの上場、2016年に副社長に就任し東証一部への鞍替え上場を実現している。

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