#5 ウィスキー樽をNFTで販売ーーレシカ・クリスCEO × ACV飯澤

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト。グローバル・テックシーンを見つめてきたITジャーナリストの松村太郎をナビゲーターに迎え、旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

昨年のマーケット加熱によりテック業界を賑わせるNFT。「次のパラダイムシフト」としてこの巨大なトレンドに注目していない人はいないかもしれません。

NFTとは何か。この問いに対して蒸留酒樽をNFTと紐づけた「UniCask」プロジェクトを共同で手掛けたレシカ代表取締役、クリス・ダイ氏とアクセンチュアのビジネスコンサルティング本部AIグループ、プリンシパル・ディレクターの飯澤拓が語ります。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。太字の質問はすべてナビゲーターの松村太郎さん)

ポッドキャストで語られたこと

  • メタバースはIP、データAIは広く注目
  • デジタル世界で生活する時代
  • トレードでデジタル価値が上がるデジタルネイティブ

クリス:ブロックチェーンが今、大きくなってる背景にはデジタルの世界で私たちが生活をしなければならない時代になってきた、という点があります。単なる情報ツールとして使うんじゃなく、情報そのものが世界になるという大きなトレンドが世の中で起きているんです。

例えば、僕なんかはスマホからの毎日のレポートを見ると、6、7時間ぐらい使用しています。睡眠時間を除くと1日の半分近くの時間をデジタルの世界で過ごしてる訳ですよね。自分のプライベート時間とか考えてしまうと、もしかしたらパブリックにコミュニケーションする時間の大半がデジタルの世界にいるわけですよ。物理的な世界ではなくなった時に、物理世界よりもデジタルの世界の方が重要になってくるんじゃないか、かつ経済活動もそっちにシフトしはじめてるっていうのを実感として持っています。

例えば仮想通貨だったり、モノの売買だったり、デジタルコンテンツの配信だったりとか経済圏がどんどん大きくなっていく。将来的にはデジタルの世界で何を持ち、買うのかという方が大事になってきて、アバターに金を払ったりしますし、デジタル世界の洋服を買うことになるかもしれない。そのビジョンに基づいて私たちは今、頑張ろうとしてるところです。

飯澤:いずれクリスさんが今、おっしゃっていただいた世界が来ると思うんですけど、まだその過渡期に当たるわけですよね。だからデジタルにあるものって現実にあるものの劣化版だったりとか単なるマークみたいなものに捉えられていて、コピー可能というところが今のデジタルの大きな特徴だと思うんです。

そこからNFTの登場で、デジタルの中に一個一個ユニークなアイテムとして識別されていった時にどういう体験になるのか、それは私もまだ未知数だと思います。今でもユーザーからのお問い合わせは結局、チャットみたいなチャンネルも用意しても最終的には電話のチャンネルにどうしても落ちてくるし、手元に困っていることがあったら実際に会いに行って話したいというのは、どういう風に変わっていくのかすごく興味がありますね。

物の価値は、基本的には目の前にある机みたいなフィジカルなものをデジタルに持っていった価値というのが今、言われているところで、クリスさんがおっしゃってるのはデジタルネイティブな価値に置き換わっていくんだっていうことだと思うんですけど、その世界を早く見てみたいなと思います。

クリス:いきなりデジタルのグッズが価値を持ち始めるというのではなく、これには時間がかかると思います。少しずつ、一般社会で生活している人たちが受け入れられるようにしなければなりません。例えばインターネットの時代もそういう過程を経て今になっていると思います。最初にインターネットを使い始めたのは、ファックスの代わりとしてのメールでした。

NFTには実は二種類ありまして、まずはピュアにデジタルだけ、例えばデジタルアート。今年の二月ぐらいにBeeple(ビープル)の作品が6,900万ドルで落札されたのが有名になっていますが、ピュアにデジタルにしか存在しない、リアルなものってない。私たちがやってるのがもう一種類の方で、実物とデジタルを紐づけるもので「UniCask」がやっているのはウィスキーの樽なんですね。ウィスキーの樽は存在するので買ったらそれはちゃんと物理的なものとして私たちの所で保管していますよと。物が存在するので分かりやすい。

(中略)

私たちの樽は10年後とか、20年後に実物をNFTを持っている方に渡すんです。その時にNFTを返してもらいます。ここが一つ面白いクエスチョンなんですけれども、全員が引き換えるかっていうところが僕たちの興味深い社会テストなんですよ。

というのも10年後にNFT自体がすごくレアになってきます。これを引き換えたらなくなるわけですよ、デジタルの世界から。自分のメタバースに今まで飾ってたものがなくなる、でも代わりに実物を渡すとしたら、それを引き渡さないっていう人たちも出てきます。だって樽を実物でもらって家にあっても誰も知らない訳で、それはメタの世界では存在しないのとイコール。ソーシャル的な価値はないですね。

これがデジタルの考え方じゃないですか。最初の入り口は実物があるから安心だよねと言ってデジタルのものを見せつけるんですけど、それがある程度慣れてくるとデジタルでいいじゃんみたいな。

そこがトランジションだと思ってます。

次回につづく

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