
本稿は、 microverse の創業者で代表取締役の渋谷啓太氏による寄稿。
渋谷氏は、ブロックチェーンゲーム開発や IP コンテンツホルダー向けの NFT プロデュース事業を行う double jump.tokyo で、大手 IP ホルダーの NFT マーケットプレイス開発案件のディレクターとして従事したのち、2020年11月、IP やコンテンツのファン向けのデジタルグッズ NFT の販売・配布支援を行う microverse を創業した。
2022年から本格に活動を始め、音楽ユニット「ずっと真夜中でいいのに。」や VTuber 等の NFT を販売・配布している。
web3.0の会社への投資や無数のプロジェクトが立ち上がるなど、〝web3.0熱〟は急激に増しています。
一方で、web3.0の根幹をなすブロックチェーンが基盤となったサービスを利用しようとすると、ウォレットの開設や暗号資産の入手、ガス代の支払い等、一般の人が使うには UX 上まだまだハードルが高い状況です。
しかし私たち microverse は、このようなハードルはいずれ解決され、web3.0のテクノロジーや思想が浸透すると考えています。本稿では、web3.0の現状の UX 的な課題を明示しつつ、そのように考える理由について書いていきます。
web3.0のテクノロジーの UX 的な課題

現状のweb3.0の根幹をなすブロックチェーンを活用したサービスを利用しようとすると、次の3つの UX 的な課題があると考えています。
- ウォレット
- ガス代
- 暗号資産の入手
まず、ウォレットについてですが、主流となっているメタマスクなどを利用しようとすると、シードフレーズの保存等、馴染みのない行為が求められます。ユーザとしてはこの時点で戸惑う人も多いかと思います。さらに、シードフレーズの保存を忘れるなどすると、自身が保有している暗号資産や NFT にアクセスできなくなるというようなこともあります。
次にガス代と暗号資産の入手についてですが、Ethereum と呼ばれる主要なパブリックブロックチェーンを利用しようとすると、時期によりますが、数千円から数万円の高額なガス代の支払いが必要となります。ものを買ったり送金したりする度にこの金額の手数料がかかるとなると、とてもではないですが、日常使いは難しいと考えています。
ならば、Polygon や Astar 等ガス代の安いブロックチェーンを利用しようという発想になりますが、これらを利用しようとすると、日本の取引所では現状手に入れることが難しい暗号資産を入手する必要があります。これらの入手のためには、DeFi 等を駆使する必要があり、ブロックチェーン等に馴染みのないユーザにとっては、高いハードルとなります。
ここまで UX 的なハードルを列挙しましたが、これらの課題はテクノロジーの進歩によって解決されると考えています。そして、これら課題が解決されて、一般の人の生活に web3.0のテクノロジーや思想を基盤としたサービスやプロジェクトが浸透すると考える理由をここから書いていきます。
web3.0が浸透すると思う理由1:決済面における圧倒的な便利さ
前提として私たちは、
- 圧倒的に便利になる
- 人の欲望を満たす
……のどちらかまたは両方が満たされないと新興の技術は浸透しないと考えています。
まず前者についてです。
みなさんは、暗号資産で NFT 等を購入されたことはありますでしょうか?
ない方はぜひ一度試してみてください。
既存の決済方法に比べて、すごく楽です。
クレジットカードなどの既存の決済手段を利用して EC サイトなどで買い物をしようとすると、だいたい次のようなフローが必要となります。
- 電話番号やメールアドレス、氏名、住所などの個人情報を入力し、アカウントを開設
- アカウント開設時に、SMS やメール等を利用し、本人確認を行う
- クレジットカード情報を入力
- 決済
ブラウザの機能等もあり、入力はだいぶ楽にはなりましたが、まだまだかなり面倒なのではないでしょうか?
しかし、web3.0の世界では、次のような決済フローとなります。
- ウォレットをサイトに接続(ワンクリック)
- (購入ボタンをクリック後)「署名」を実行(ワンクリック)
個人情報の入力や、認証のために別のアプリを開く、クレジットカード番号を入力するといった手間は一切ありません。
このように、web3.0の世界では、決済の UX が圧倒的に便利になっています。
便利なものは必ず浸透していくと考えているので、数年/数十年後の世界では、ウォレットを繋いで暗号資産で決済するということが当たり前になっていることでしょう。
web3.0が浸透すると思う理由2:〝好きなことで生きていける〟時代が本当に来るかもしれない
web3.0のテクノロジーや思想が広がれば、好きなことで生きていける時代が本当に来るかもしれません。
具体的に、アイドルを応援することを考えてみましょう。
まず、web2.0の時代に立ち上げ初期からアイドルを応援することを考えてみます。
現在の世界において、アイドルの立ち上げから応援しようとすると、下の図のように、ファンはクラファンの支援やライブ開催情報の拡散、グッズの購入などをします。しかしそれに対して、初期は直接的なお礼などを言ってもらえたりしますが、アイドルが成長するにつれて、ファンとの距離は遠くなってしまいます。
ファンは、ずっと時間やお金を使い続けますが、使い続けるにつれて距離が遠くなってしまいます。
では、web3.0の時代でアイドルを応援することを考えてみましょう。
web2.0の時代と同じく、ファンはクラファンの支援やライブ開催情報の拡散、グッズの購入などをします。web3.0の時代の違いは、これらの貢献に対して NFT やトークンを付与することができます。NFT やトークンを持っている人は、アイドルがどんなに有名になってもチケットやグッズを優先的に購入できるような設計が簡単にできたり、Twitter や Instagram 等が NFT 対応した世界では、持っている NFT によって自分が古参であることの証明などが容易になり、ファンは精神的なインセティブを獲得できるようになります。
さらに、ファンが増えていくにつれて、古参ファンが持っている NFT やトークンの価値も高まり、経済的なインセンティブも獲得できるかもしれません。これらの設計から、web3.0時代では、推し活等の自分の好きなことをしているだけで生きていける時代になるかもしれません。
最後に
本稿に書いたことはまだまだ夢物語のように思われ、実感が湧かない人も多いでしょう。ただ、暗号資産の保有者数や NFT プロジェクトの立ち上がりなどをみていると、時代は確実に動いています。私たち microverse も、時代の針を進めることに全力を尽くしていきます。
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