どうなる中国エンタメ市場、注目のポイントはーー中国スタートアップトレンド(3)

本稿は1月に開催されたオンラインイベント「BRIDGE Tokyo」で配信したセッション動画です。アクセンチュア・ベンチャーズはグローバル化するスタートアップシーンに必要なノウハウやトレンドの話題を提供しました。初回の話題は中国スタートアップトレンド、前回からのつづきです。

中国エンタメ市場、注目のポイントは

唐澤:時間はまだ20分ありますね。次の質問に行きましょうか。最近、日本で多くのエンタメ産業の顧客と交流があります。そこで、次は中国のエンタメ市場について伺いたいんです。先ほど「元世界(メタバース)」についてお話しされたでしょう。これは日本だけでなく世界中で流行していますね。

政府からは昨年、ゲーム産業に厳しい規制が加えられたものの、近年、中国のエンタメ市場は指数関数的に成長を遂げていて、中国企業が今、全世界のスマホゲームに占める売上は、2021年12月のデータで、30%以上なんですね。トップ100社のうち、34か35社が中国企業でした。売上高ベースで30%以上ですから、これは10年前には想像もできないことでした。それともう一つ私が気になっていることですが、POP MART(泡泡瑪特)にせよ、Tencent(騰訊)にせよ、新しい IP が多いでしょう。

日本の企業もIPは多いんです。サンリオのハローキティ、バンダイナムコのガンダム、スクエニのファイナルファンタジーなど、日本では、以前から世界的にも有名な IP があったんです。ただ、率直に言って、ここ数年の新しい IP を見ると、鬼滅の刃とか、数えるほどしかないんですね。一方で中国を見ると、新しい IP がたくさんあります。

エンタメで新しいゲームにせよ、コンテンツにせよ、インタフェースにせよ、イノベーションを起こし、成功しているんです。国内から見て、中国のエンタメ産業の力や今後の発展のトレンド、潜在的ベネフィットをどう見ていますか。

POP MART(Japanサイトより)

Max中日のカルチャーエンタメで大きく違うのは、最近の大ヒットの最大要因として、中国は人口が多く、消費力が高いということでしょう。ですから、すばらしいアイデアがあって、すばらしい体験を届けられれば、驚異的な企業やゲームが出てきやすいんです。例えば「王者栄耀」のようなゲーム、POP MART(泡泡瑪特)のような企業ですね。

最大の要因は、ここ数年、中国の消費力が高まっていることでしょう。そして、特に若い世代がこうした商品やゲームの環境で消費する力を身につけているということですね。こうなると、企業にしてもゲームタイトルにしても、指数関数的成長を示すということになります。これが最初のボーナス。

2つ目に、中国ではこれまで、こういったものが少なかったということです。また、中国企業は、こういう分野での模倣能力が高いですね。初めて POP MART(泡泡瑪特)を見たときに「これは、日本で昔からあるものかな」と思いました。前に日本で働いていて、フィギュアショップで見たときに、中国人もいずれこういうものが好きになるのかな、と思っていました。1990年代後半〜2000年代生まれは好きになるかもしれない、新たな産業が生まれるかもしれない、と思うことはありました。

「王者栄耀」にしても、PC ゲームの「Dota」とそっくりですよね。スマホに移植され、ゲームシーンがより柔軟に、多様化したという感じ。また、WeChat(微信)のような SNS の効果もあって、一気に広まったわけです。これが近年、中国でこういうものが出てきた2つ目の背景です。また、中国人は学習能力と模倣能力が非常に高く、中国の Qiyi(奇芸)や地方テレビ局の自社製作バラエティ番組にしても、日本、韓国、欧米の音楽やスター番組を模倣したものが多いんです。

ここ数年で、この分野に集まる注目は、中国国外から見るとすごいのかもしれません。3つ目の要因は、これが継続するかという問題です。一歩目を他から学び、模倣するのはかまわないと思います。イノベーションの多くは既存のものから生まれるのですから。ただその後、継続的に、新しいものを生み出し続けられるか。POP MART(泡泡瑪特)などにはそうした面で長期的な課題が存在していると思います。2021年に目にしたように、中国の iQiyi(愛奇芸)のように生き残りに向けた展望が立っているとは言いがたいです。

すばらしいコンテンツや IP などが出てくるか、これは中国企業にとっての課題だと考えています。4つ目は先ほどお話しされた日本のことです。日本ではここ数年大ヒットに恵まれていないとはいっても、日本の IP や漫画が世界的な影響力を持っていることは否定できない事実です。漫画を読まない私も、日本の有名な IP はいくつか知っています。でも、POP MART(泡泡瑪特)の IP は知らないんです。

ですから、中国企業と日本企業の能力が大きく違うのは、IP と製品の範囲・領域の極大化という点ではないかと思います。これについては、中国企業は日本企業ともっと交流した方がいいのではないでしょうか。例えば、ソニーから、bilibili(嗶哩嗶哩)への戦略的投資があり、Bilibili には二次元の動画がたくさん出ていますよね。〝日本モノ〟は、bilibili(嗶哩嗶哩)の最大の強みとなっています。iQiyi(愛奇芸)や Tencent(騰訊)には、ほとんど無いからです。こういった提携は参考になります。

唐澤:日本の IP ホルダーや企業と、中国エンタメ企業には、格好の提携ポイントがあるということですね。

Maxそうですね。

唐澤:例えば、私が IP を持つ日本企業で、中国で事業を展開したいとしたら、中国の POP MART(泡泡瑪特)や Tencent(騰訊) のような企業に何を期待できるでしょうか。中国の人口は日本の何倍もありますよね。

Max中国の既存のチャネルとプラットフォーム、ユーザ数は日本企業には持とうとしても持てるものではないですね。ただ、日本企業が現時点で保有する著名な IP、アイデアの生み出し方は、すぐに模倣でマスターできるものではありません。既存の IP アイデアを構築する能力を持つ企業が、日本にはがたくさんあると思います。

それとPOP MART(泡泡瑪特)や Tencent(騰訊) のような大量の流量チャネルを持つ企業が手を結べば、可能性は一気に広がると思います。私が今、中国で日本の IP 製品を買うとすれば、Taobao(淘宝)や JD(京東)を最初に思いつきますが、1つ目に本物であることが保証されていません。2つ目にスピードが遅い。3つ目に価格が高い。日本の IP を中国でローカライズするなら、できることは大変多いです。

唐澤:そこには大きな可能性があるということですか、Maxさんから見て。

Max大きな可能性があると思います。

唐澤:それに中国の消費者として、選択肢があまり多くない、IPを消費するための選択肢が多くないということですね。

Maxそう思います。

唐澤:分かりました。

Max例えば、私なら、ある種の企業の製品は好きではないけど、聖闘士星矢やガンダムなど古めの IP が中国にあれば、フォローするかもしれません。日本の多くの IP には、全年齢層がターゲットとなる特別な強みがあります。日本の漫画はお年寄りも読むかもしれません。年齢層ごとに違いがあると思います。

日本の IP はターゲットとなる層が非常に広いんです。そうすると、中国の人口は大きいので、消費対象が幾何級数的に拡大します。POP MART(泡泡瑪特)を大きくしていく以上の可能性がそこにあるということです。

唐澤:興味深いですね。これについては、オフラインでもビジネスができるかもしれませんね。

Maxそれもいいと思います。

唐澤:ありがとうございます。あと3〜4分しかないので、最後の質問です。「チャイナリスク」という言葉がありますね。あまり好きではありませんが。何をするにしてもリスクはつきものですから。中国の法令や一部不透明なところは、一定程度のリスクや難しさがありますが、リスクのあるところにはチャンスもあるわけです。

ですから、昨年の政府による政策上のさまざまな転換や規制は、日本のエンタープライズやスタートアップは、どう見るべきでしょうか。逆に、チャンスはないでしょうか。

Max外国人から見るとどう見えるかということですね。これは皆にとってチャンスであると考えていいと思います。中国の市場が標準化され、規則や秩序が整ってきていることは、外国企業にとってチャンスであるのは間違いないと思います。逆に、非常に自由で規制が全く無かったり、規制が緩かったりすれば、外国企業の競争力は現地企業に及びません。

昨年の政策で、中国の一部産業も打撃を受けました。一方で、国はずっと、投資や事業で外資が動きやすいようスペースを作ってくれているわけで、これは両面から見る必要があると思います。2つ目に、全く不透明だと先ほどおっしゃいましたが、それは当然のことです。どの国の法令であっても、どんな規制をしているのか分かりにくいというのは、よくあることです。

どんな企業であれば、より正確に予測できるかということが試されるわけですが、今後3年〜10年の長期的な戦略は、より正確に予想できるでしょう。ただ、そこには絶対ということはありません。この点については、ごく当然のことです。これは中国市場に特有の問題ではありません。その環境に適応すれば、その環境のもとで戦略を実行し、そして、考えることができるようになります。

3つ目に、先ほどおっしゃった外国企業の進出についてですね。これまでに中国での事業経験が多くない場合、サービスプロバイダやパートナーを探すことをおすすめします。アクセンチュアや私たちも、良いパートナーとなりえますね。そして少しずつ、摸索していくことです。皆さんに改めてお伝えしておきたいのは、どの国に行こうと、現地のビジネスの効率、スピード、流儀に適応する必要があるということです。

そこでは、現地の文化を理解していなければ、最終的な成果を最大化することはできません。ですから、さまざまなことが起きるでしょうが、悪いことばかりとは限りません。ただ、これからさらに標準化され、秩序が整いつつある市場環境は、外資にとってはチャンスです。

唐澤:なるほど。中国のクリエイティブ企業は、未経験の変化を経験してるのですね。彼らの日本企業を含めた外資への要求も変化しつつあるということなんでしょうか。

要求は高くなっていくでしょう。市場が自由で、消費者の要求がさほど高くないから、当面は成長を続けられます。ただ、消費者の要求が高まり、規則が増え、より高い専門スキルが求められるようになった時、企業がそれにすぐ対応できるとは思いません。

よりプロフェッショナルな人材、パートナー、投資家を巻き込む必要があります。こうした場合に、外国企業はとてもすばらしい選択肢になります。中でも日本企業、ドイツ企業はパートナーとして良い相手です。この1年で、日本企業と中国のスタートアップとの提携や、私たちの顧客が増えたことからも、ロジックが証明されたと感じています。

唐澤:ありがとうございます。もう時間になったようです。まだ話題は尽きないんですが、今回はこの辺で。

(おわり)

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