病院向けスマホとDX「日病モバイル」展開のフロンティア・フィールド、10億円をシリーズB調達

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「日病モバイル」の端末イメージ
Image credit: Frontier Field

医療機関向けスマートフォンおよび DX(デジタルトランスフォーメーション)サービス「日病モバイル」を展開するフロンティア・フィールドは8日、シリーズ B ラウンドで10億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)がリードし、Global Catalyst Partners Japan(GCPJ)、アルフレッサ、伊藤忠テクノソリューションズ(東証:4739)が参加した。調達額には日本政策金融公庫からのデットが含まれる。GCPJ は、2020年9月のラウンド(ラウンドステージ不明)に続くフォローオン。

なお、同社は、桑島洋一氏(元・シミックホールディングス取締役副会長、現・山梨大学客員教授、薬剤師)が DX 戦略担当執行役員に、内海雄介氏(元・ノバルティスファーマ デジタルイノベーショングループマネージャー)が経営戦略担当執行役員に就任していたことを明らかにした。桑島氏出身のシミックホールディングス(東証:2309)は、フロンティア・フィールドが2021年2月に実施した資金調達に参画している。

フロンティア・フィールドは2016年7月、NTT ドコモ出身で、医療データベース大手の日本アルトマークで事業部長を勤めた佐藤康行氏により創業。全国各地の医療機関に対して、セキュアな環境下でのスマートフォンサービス日病モバイルを提供している。

多くの医療機関では、医療従事者間のコミュニケーションに PHS や紙・FAX が用いられる中、個人情報漏洩やランサムウェアのリスクの高まりから ICT ツールへのセキュリティ要求が高まっている。日病モバイルは MVNO などと同じ要領でモバイルキャリアの交換機と日病モバイルのシステムを IP-VPN や専用回線で直結、医療従事者にセキュアな環境で情報アクセスを実現する。

日病モバイル端末を通じて、NEC の電子カルテシステム「MegaOak アシストらくらく看護師さん」を使う事例。
Image credit: Frontier Field

日病モバイルは、セキュリティを担保しながらナースコールや電子カルテとの連携、緊急事態を他の職員に伝える緊急通報機能など、医療機関に特化した連携機能やアプリケーションを備えているため、個人情報漏えいリスクを抑えつつ、医師・看護師の働き方改革や多職種連携の簡易化を実現できる。現在、茨城県立こども病院・鹿児島徳洲会病院、を含めた19病院に導入済み(2022年3月末時点)で、2022年12月末までに約40病院、2024年末までに300病院、60,000回線の導入を計画しているそうだ。

この仕組みは病院内でもケータイの電波が来ていれば情報にアクセスできるのはもちろん、特に威力を発揮するのは訪問医療の現場だ。訪問医療では医療従事者が訪問先で患者の健康状態や治療内容などを紙ベースで記録、それを病院やクリニックに戻ってからパソコンに入力するという二度手間が生じているが、日病モバイルを使えば、訪問先から直接情報を入力できるようになる。日本の病院や医療組織の多くが加入する日本病院会の協力を得て、「日病モバイル」のブランドで医療現場への浸透を図っている。

フロンティア・フィールド代表取締役の佐藤康行氏は、BRIDGE の取材に対し、患者の個人情報を多く預かる病院はインターネットに接続することにセンシティブで、日病モバイルのクローズドなネットワークで動作する点が最大の安心を与えていると語った。スマートフォンからの VoIP 通話で必要な SIP についても複数メーカーのプロトコルに対応しているため、病院が導入済の構内通話システムを選ばない。病院では医師が数年おきに入れ替わるためアカウントの権限管理が煩雑化しており、共通の認証基盤で複数のアプリケーションが動かせるようになるメリットは大きいと、サービスの可能性を強調した。

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