すべての人にセカンドハウスを——営業レス×職人に頼らないファブレス住宅メーカーIT’S HOUSEの挑戦

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「RAKU TAP」
Image credit: IT’S HOUSE

都市と田舎、あるいは、ある都市と別の都市の2ヶ所に生活拠点を持つデュアラー。この造語はコロナ禍以前から存在したが、リモートワークやワーケーションの普及で、より自由な生活形態を求める人は増えたように思える。つまり、デュアラー支援をする事業体にとっては追い風となるはずで、ここに商機を見出すスタートアップも少なくない。普通にデュアラーすると固定資産的なものも一通りデュアル(ダブル)になるが、シェアリングなどのテクニックを駆使し、コストが膨らまない仕組みを作るところも現れ始めている。

IT’S HOUSE 代表取締役 八島睦氏
Image credit: IT’S HOUSE

今回紹介する IT’S HOUSE もそうだ。同社は裕福でなくても、普通の人がセカンドハウスを持てるようにすることを標榜する住宅メーカーだ。メーカーとはいえ、ファブレスなので自ら製造はしないが、独自のノウハウやテクニックを駆使することで、日本の各地で比較的安価にユニークな住まいを持つことを可能にする。住販大手ユニバーサルホームで執行役員を務めた八島睦氏が、実業家の笹川順平氏(宅配ボックス大手のナスタ代表、故・笹川良一氏の孫)と共に2年前に創業した(創業当時の社名は LIVNEX House)。

人口が減る中で住宅メーカーは斜陽産業と呼ばれて久しい。現在、全国に50万人いる大工は高齢化による引退で、2030年には30万人になる。これからの業界参入は競争激化が必至で、コストも販売価格も高騰を避けられない。そこで後発でもある IT’S HOUSE は、Web マーケティングで営業レスにし、かつ、職人(大工を含む)に頼らなくても家が建つ仕組み「RAKU TAP」を開発した。IT’S HOUSE はこの仕組みを全国の工務店に貸与することで、自らは職人を持たないファブレスの住宅メーカーを目指す。

RAKU TAP の体験は画期的だ。発注者は販売中の土地に対し、Web 上で複数の選択肢から上屋を選び、自由に配置できる。斜線制限(道路や隣地の採光・通風を考慮した制限)、外壁後退(建物の外壁と敷地境界線までの距離制限)などが自動的に考慮され、出来上がりのイメージ図(パース)が作成可能。住設機器、建付家具の多くは同社オリジナルだそうで、同等既製品の市場価格よりも安い上、引き渡しから15年間、アプリ経由で修理が依頼し放題となる保証が付く。完成価格はその場で確定、資金計画もオンライン完結できる手軽さだ。

RAKU TAP は建築を請け負う工務店の DX も加速させる。まず、発注者と工務店の契約はクラウドサインで完了、発注者の要望は仕上表として工務店に届き、施工管理は「ANDPAD」とデータ連携する。IT’S HOUSE は、工務店〜発注者間のエスクローとして機能し、IT’S HOUSE は発注者から預かった代金を、第三者機関による検査ステップに応じて工務店へ支払う。エスクローだけでなく第三者機関の検査を入れたことで工務店の理解も得やすく、仮に工務店が建設中に倒産しても、発注者の損失なく、別の工務店が作業を引き継げる。

「RAKU TAP」
Image credit: IT’S HOUSE

IT’S HOUSE は約3年にわたるサービスの開発と R&D 期間を経て、この4月から正式な住宅販売を始めた。R&D 期間中から募集したものを含めると、これまでに11棟が売れたという。セカンドハウスとしては理想的なロケーションである軽井沢では、モデルハウス4棟が売り出しを始めると即完売。今後、河口湖、沖縄、東京・吉祥寺などでも一部住宅販売を開始、または、計画中とのことだ。IT’S HOUSE では、全国の工務店とボランタリーチェーンの構築を急ぎ、ユーザに対しサービスの魅力を訴求していきたい考えだ。

IT’S HOUSE は創業以来、前出の笹川氏が経営する LIVNEX の100%子会社として運営されてきたが、RAKU TAP の開発や提供に一定のメドがついたことから、昨年12月に独立して運営されることとなり、この際、社名も変更した。現在の資本構成は定かではないが、笹川氏も出資する形でスタートアップとして新たなスタートを切った形だ。なお、IT’S HOUSE には、イグニション・ポイントの創業者で、先月、電通グループへの売却でイグジットを果たした⻘柳和洋氏も出資したことが明らかになっている。

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