日本からYC選出は10年ぶり、世界のDX推進「テイラー」を創業したのはあの連続起業家

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ニュースサマリ:業務ソフト開発基盤を開発中のテイラーは6月2日、スタートアップ・アクセラレーター「Y Combinator(以下、YC)」に採択されたことを公表している。YCはこれまでにバケーションレンタルのAirbnb(W/2009)やクラウドストレージのDropbox(S/2007)、暗号資産大手のCoinbase(S/2012)、デリバリーのDoorDash(S/2013)など、2005年の開設から17年間で約3,000社のスタートアップを輩出し、これらの合計評価額は約4,000億ドルになる世界トップクラスのスタートアップ支援機関。

同サイトに掲載されている卒業生データベースによると、日本拠点での採択企業は10年ぶり(前回は2012年参加のFond/旧AnyPerk)。テイラーが参加したのは2022年のサマーバッチで9月のDemo Dayに向けて現在開発中のサービスのブラッシュアップを進める。

テイラーの創業は2021年7月。連続起業家の柴田陽氏とメルカリの研究開発組織「mercari R4D」の責任者を務めていた高橋三徳氏が共同創業した。二人2011年にスポットライトを共同創業した経験があり、開発した来店ポイントサービス「スマポ(現在の楽天チェック)」は2013年に楽天に買収されている。柴田氏はその後もサービス開発やエンジェル投資などの活動を続け、2016年11月には貸付ファンドのファンズ(旧クラウドポート)を共同創業した。

話題のポイント:「しばよう」の名前で愛されているヒットメーカーが再登板です。今回はスポットライト時代にタッグを組んだCTOの高橋さんと共同創業で、初っ端からYCバッチ入りするなどこれまでとは違う切り口でやってきました。何をやるのか、詳しくはしばようさんのインタビューをお聞きいただきたいのですが、かいつまんで説明しておくと、業務システム開発における「ローコード」バックエンドのようなイメージです。

現在、いろいろなビジネスプロセスはデジタル化、いわゆる「DX」が進んでいますが、このベースとなるサービスは完全スクラッチ開発の専用システムか、スプレッドシートなどの汎用、もしくはある程度標準化されたクラウドサービスのいずれかになると思います。専用は開発費がかさみ、汎用や標準化されたクラウドサービスは「痒い所に手が届かない」もどかしさがあります。

その間を埋める考え方で生まれたのがローコード・ノーコードツールです。テンプレートが用意されており、自社の業務に合わせてレゴブロックしていくと、おおよその業務を補完することができるようになります。一方、この考え方はフロントサイド、つまりWordPressでウェブサイトを作るなど「見た目」があるケースが多かったと思います。

テイラーが手がけるのはこのバックエンドサイドの話です。まだ開発・テスト導入中なので説明が難しいですが、例えば会社業務の中でも稟議申請などある程度、標準化されているワークフローがあります。こういうもののフロントではなくデータベースなどバックエンド側をレゴブロックしよう、という考え方がテイラーなのです。

しばようさんの手応えとしては、フルスクラッチで業務システムを開発するよりも10分の1程度の工数に効率化できるとのことだったので、主に中小企業で汎用ツールでのデジタル化に踏み切れない企業にとっては「穴を埋める」ポジショニングになるかもしれません。

ポッドキャスト全文

BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。今回の取材では日本を代表する連続起業家、テイラー代表取締役の柴田さんにお話を伺いました。

現在、楽天チェックとして知られる来店ポイントサービス「スマポ」や貸付ファンドの「ファンズ」など、数多くのヒットを生んだ起業家が次に選んだテーマは経済のデジタル化。そして何よりの注目は世界的なスタートアップ輩出機関であるY Combinatorの2022年バッチに採択されたことです。

現在、9月のDemoDayに向けてサービスのブラッシュアップを続けるテイラー。その名前の通り、業務システム開発を効率化するバックエンドサービスはどのようなものになるのでしょうか。ぜひ柴田さんの声をお聞きください。

柴田さんのこれまでを振り返ってもらってもいいですか

柴田:一番最初に学生起業をした後、マッキンゼーに入社して3年働いて、バーコード価格比較アプリ「ショッピッ」を作ってIMJ、今のアクセンチュアに売却をしました。その後、店舗集客サービス「スマポ」という来店ポイントアプリを作って楽天に売却をし、これで2013年ですね。その後ファンズという会社を共同創業したり、「わたし漢方」という漢方の相談のサブスクリプションサービスを一緒にやったりなど、今いくつか会社をやりながら、まあその間ですね。実は楽天に売却してロックアップが終わった後、次に自分がフルスイングでやるテーマをあれこれ6年間ぐらい探し続けていてようやくみつかった、という感じです。

6年間も

柴田:長考しましたよ。はい、結構その「ショッピッ」から 「スマポ」 の間が全然空いてなくて結構ノリ始めたので、後悔じゃないんですけど、まあどうせやるなら、うまくいかなくても3年ぐらいかかるので、吟味するのがすごく大事だなっていう風に思ったのもあって。この間に実は7つぐらいプロジェクトこっそりやって閉じてみたいなことを実際やってました。(その中で)このテイラーというサービスに行き着きました。

創業したテイラーについて教えてください

柴田:エンタープライズで3,000人以上ぐらいの大企業が社内で使う業務システムをテーラーメイドで自社製のシステムを作りたいと思った場合、作る工数を10分の1ぐらいにする開発基盤というのを作っております。

Tailor Platformというプラットフォームで、平野さんの言葉を借りると「スケルトンハウス」的な考え方でバックエンド側の重要な業務システムにおいて重要なコンポーネント自体を提供して、どれでも好きなものを組み合わせて使っていいですよと。フロントエンドはネイティブアプリだったりウェブアプリだったり、はたまたAIがあったりするかもしれないんですけれども、バックエンドをどのように叩くかということに関しては、まあクライアントさん自身が工夫して作ることができるという形になってます。

いわゆるSaaSでハイこれですよ、これが製品ですよっていう風に提示されるもので、画面が想起されることが多いと思うんです。けれども、そのやっぱ画面に対するリクワイヤメントってかなり千差万別で、特にエンタープライズになるとこういうところが使いにくい、こういうボタンがない、こういう権限ではこういうところは表示したくないっていうことがすごく多くてですね。で、これに対応していこうとするとそもそもSaaSの優位性である1つのプロダクトであまねく多くの人々に使ってもらうという、ビジネスモデルの優位性を崩しかねない。

対して我々はですね、APIを提供してそれを自由に組み合わせてプロダクトに組み込んで使ってもらうということを想定しているので、SaaSとかとは重複せずにどちらかというと、SIerさんがスクラッチで開発していたものをモダンなテックスタックで早く作れて、なおかつDX時代に適合するAPIファーストなアプローチでプロダクトを作っていけるところを目指したいと思っています。

フルスクラッチで開発するには工数がかかる、既製品だと痒いところに手が届かない。この課題を解決したローコードのバックエンド版を作っている、そんなイメージでしょうか

そうですね。はい、僕も実はこのプロダクトに行き着くまで、ローコードを使って業務システムを作って、みたいなことを何社かやって、結構な数の会社に実験というか、ワークするかなと思ってやってみてたんですけど、結局フロントエンドはそんなにイシューじゃないですよね。大変なのってやっぱりビジネスロジックをいかに反映していくかっていうバックエンド側の話が重たくて、それをやろうとすると結局作んなきゃっていう話になっていくんです。逆にローコード化する中でのミッシングピースはバックエンド側だという仮説を持つに至ったというところですね。

会社のビジョンは

柴田:全員がプロダクト作れるようになるっていう世界を目指したいと思っていて、僕がエンジニアじゃないんですけど、どちらかというとプロダクトマネージャー的な役割を起業家としてするということが多く、それはすごく優秀なエンジニアに恵まれたせいもあって、それをやって、なんかコンサルタント時代と比べて、僕が社会に与えられる影響力っていうのが飛躍的に高まったなあという実感があったんです。

コンサルティングプロジェクトで影響を与えられる期間ってプロジェクトが終わって2年持続すれば御の字みたいな感じで、だんだん慣性の法則でどんどん効果というか薄まっていっちゃって忘れられていくんですけど、プロダクトに落とし込むとすごく長続きする。

楽天に買収されたスマポは楽天チェックっていう名前のサービスになってるんですが、作られてもう10年以上経っていて、僕がいなくなってから7年以上経ってるんですけど、いまだに何十万人も使ってもらっています。もちろん支えてくれるチームが残り続けて、楽天側のチームあるからなんですけれども。

これってやっぱりコンサルティングプロジェクトでは到底実現し得ない特性だなという風に思っていて、システム化するというか、プロダクトに落とし込むっていうことの威力はすごいなと思っていて、これだけ「Software is eating the world」で世界がソフトウェア化していくと、逆にこれができないと世の中にインパクト残すのって難しくなってくるんだろうなっていう風に思っているので、できるだけ多くの人にこれができるようになってほしい っていうのがビジョンとしてあります。

ノーコードとかローコードとかの方がコンセプトはすごく好きなんですよね。それはなんかエンジニアを節約できるからっていうことだけでなくて、それをすることによって、非エンジニア側のソフトウェアに対する解像度が上がるからなんです。

その情報の非対称性が埋まっていく感じがすごくいいなって思っていて。なのでテイラーを入れたからといって、例えばいわゆる昭和の会社の中にいる人々がみんなプロダクトマネージャーになれるかって言うとそんなことはないんですけれども、ただその情報の非対称性が埋まっていくことでエンジニアとかSIベンダーの人と働きやすくなったり、今やっぱり繰り広げられてる会話って、ものすごいプリミティブというか解像度の粗い感じで「これやるの何カ月かかりますか?6カ月です。何とか3カ月で!」なんだそりゃ!みたいな感じの粒度で会話をしてしまっていて、お互い無駄がすごく多いので、ここなんとかしなきゃなっていう思いがあるんです。

APIが見えていれば「これとこれを組み合わせてこういう風にしたらいいんじゃないですか?あ、それはあの確かにそういう部分はあるし。ただ、これだけだとこれが足りないので、ここを作る部分は結構大変になりますよ、なるほど!」みたいなこれ会話になっていくことが、やっぱり前進、進歩だと思っていて。究極的にはそれでみんなプロダクトを作れるようになるっていうのが30年後とかに起こってほしいなと思っています。

ウェブサイト制作は既にこうなったと思っていて、僕が一番最初にインターネット始めた2003年ぐらいの学生起業してた頃で、みんなHTMLを直書きしてたと思うし、しないとしてもDreamweaverで構築してたみたいな感じの時代から今はもうペライチみたいな世界観になってますよね。

その間にCMS、WordPressみたいな時代が挟まって抽象化・民主化されていってるんです。そうするともう多分ホームページ制作で見積り500万です!みたいな感じの世界ってすごく減ってきてると思っていて、ホームページは工程が一巡したと思ってるので、今度はいわゆる業務システムというか、よりロジックを含んだシステムの世界もやがてそうなってくだろうなって思っています。その1つのシグナルがノーコード、ローコードのプラットフォームみたいなところなんだろうなとは思っているので、30年後、あの今のウェブ制作みたいになってる可能性は全然あると思います。

隙間を狙った

柴田:例えば販売管理のERPって、販売系の基幹システムで自社内製化というかスクラッチ開発している会社が6割で、パッケージが残りの4割。SaaSが2〜3%ぐらいみたいな感じの浸透率なんですよね。想像している以上にスクラッチで作ってる人たちっていうのは社会のマジョリティであって、特にエンタープライズ中心にまずはそこを改善することが日本のデジタル化とか生産性に一番インパクトあるんじゃないかなと考えています。

話を変えて、なぜYCに入ったのか教えてください

柴田:YCって最近、アクセプトされる社数は多いんですけどで、これまでに3,000社とか4,000社と言われる会社がアクセプトされてるんですけど、その中に日本拠点の会社、日本ベースのチームって今まで1社しかないんですね。日本のGDP って世界の5%あるはずなんで3,000社あったら150社ないとおかしいんですよ。

だから「YC大衆化したよね」っていうのは簡単ですけどで、日本企業、大衆化したのに1社もないじゃんていう反論はありますよね。それとYCのクオリティは別に僕は下がってないと思って、最近の流行りのところで言うと、例えばCoinbaseとかOpenSeaとかもYCの会社ですよね。なので、そういったところの人たちが一番初期に何をしてたかっていうのをつぶさにYCのパートナーたちは観察をしていて、それを基に色んな助言をしてくれるので非常に価値が高いなと思います。

既に今入ってる人たちの話とか、それこそ日本人YCファウンダーの先輩の福山太郎さんとかと話しても、まだまだ YC ブランドって採用だったり資金調達ですごく効きます。今まで起業してきてグローバル水準のファウンダーとしては、まだまだ勉強しなきゃいけないところあるんだろうと思っているので、それを目指すっていう意味では、入場チケットとしては通るべきルートなのかなと。

今回って応募ってどれぐらいだったんですか?

柴田:1万社と言われています。

グローバルでスタートアップの数が激増していますね

柴田:それは絶対そうだと思います。YCが何かハードルが下がったというよりは単純にサンプル数が増えたっていうことなんです。今回はだから日本の内需を狙うというよりは、もうグローバルで最初から狙っていきます。開発プラットフォームなのでグローバルの製品との連携性だったり、グローバルで通用するスタックだったりがすごく大事なので。顧客自体は日本のお客さんを大事にしていきたくはあるんです。一方、プロダクトだったりチームという意味では、国際化を最初から狙っていくというところを目標にしてます。

ありがとうございました

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