
ニュースサマリ:通話コミュニティ「Yay!(イェイ)」を運営するナナメウエは6月1日、カヤックが運営するゲームコミュニティ「Lobi」を事業譲受したと発表した。Lobiは今後、7月末日を目処にサービスを終了し、Yay!に統合される見通し。Lobiはゲーム仲間とプレイ交流やトーナメント開催ができる無料のコミュニティで、累計登録者数は700万人。2019年にはボイスチャット機能が追加された。
サービス統合にあたり、Yay!では不足した機能などの追加開発も実施する。事業譲受にあたる費用は非公開。ナナメウエは4月にシリーズBラウンドで16億円の資金調達を発表しており、また、国内で新規トークンを発行するIEOに向けた準備も公表している。本誌では同社代表取締役の同社代表取締役の石濵嵩博氏にその狙いなどを聞いた。
話題のポイント:4月に資金調達と新規トークン公開(IEO:イニシャルエクスチェンジオファリング)を発表したナナメウエが早速の攻勢をかけてきました。国産ゲームコミュニティLobi自体は閉じてしまうのですが、石濱さん曰く、おおよその機能は実装されているので、今後は順次、不足分を補いつつ、ユーザー統合していくのだそうです。
そして気になるのはやはりトークン対応です。Yay!は前回お伝えした通り、IEOを控えて現在、ホワイトペーパーを作成中です。ほぼトークノミクスは固まっているみたいで、おそらく、NFT会員証+(ガバナンス)トークンの設計で、参加したユーザーと一緒にYay!メタバースを運営する、そんなイメージになると思われます。今回のゲームコミュニティ事業の統合はその一環とみてよく、集まったNFT会員がどのような活動を繰り広げるのか楽しみです。やはり足元のコミュニティを持っているスタートアップがWeb3対応すると強いですね。
さて、前回に引き続き石濵さんにポッドキャストで語っていただきました。今回は、つい先日大きなショックをもたらしたLUNA/Terraプロジェクトについて、事業者としてどのような視点を持っているかについてもお聞きしています。

ポッドキャスト全文
BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。今回の取材ではカヤックのゲームコミュニティ「Lobi」を事業譲受したナナメウエ代表取締役の石濵嵩博さんにお話をお伺いしました。
4月に16億円の資金調達とIEO、新規トークン公開の計画を明らかにしたナナメウエですが、次の一手として選んだのはゲームコミュニティの統合でした。累計700万人が集ったLobiを統合し、さらにここにトークン経済を持ち込むことで日本発・独自のメタバースを作り出すのが狙いと思われます。
一方、LUNAプロジェクトの崩壊をきっかけとした新たな課題も明らかになっているクリプト事業ですが、その状況をどのように考えているのか、その点についてもお聞きしました。ぜひ石濵さんの声をお聞きください。
今日はよろしくお願いします。Lobiの件の前にLUNAで発生した出来事、石濵さんはどうみてますか?
石濱:大変なことが起きてしまったな、と思っていて、要はクリプトの世界と日本の世界と対比して話すと、クリプト国は自己責任が一番大きいかなと思っていて、日本社会はどちらかというと弱者救済に寄っていますよね。だからこそ規制があったり弱者を守れるための仕組みっていうのが整っているのが日本社会だなと。そこがやっぱりクリプト国と日本国で大きく違うところです。
LUNAもとんでもなく大きい事件だなという風には思うんですが、一方で自己責任論みたいなものが行き過ぎた結果、こういったことが起きてしまったのかもしれないなっていうのはちょっと思っています。結局のところ、どうバランスをするかっていうお話なんですが、ソースコードもオープンソースで色々な情報が透明化されていて、アルゴリズムも公開されていて一応見れる範囲で見ることができているので、僕たちには’判断する材料って一定あったと思うんです。
20%の金利(※プロジェクトに預けた際に謳われていたリターン)みたいなものがあった時、やはり高いんでこれは何らかのリスクが孕むでしょう、みたいなところはあったと思います。で、この金利が高いからこそ、Anchorにお金を預けていた人たちっていうのが沢山生まれて、その大元となるステーブル(コイン:USD)の部分に欠陥があって、こういう事件になってしまいました、っていうのが全然流れかなと。自己責任でどこまで規制すべきだったんだという部分は堂々巡りで僕の頭の中にも巡ってきていて、どの辺で線を引くべきだったのかな?という感想を持ちながらこの件は見ていますね。
クリプト関連はDYOR(自己責任、自分で調べろ)が王道ですが、実際にこれから手掛けようとしている事業体として規制などの課題にどう対応していますか
石濱:基本的には審査のフローに沿って僕たちのトークン自体に問題ないかとか、あと僕たちの会社に対するデューデリジェンス等々を実施して、僕たちがきちんとしている母体でしっかりとした事業計画のもとで進んでますよというところに審査を受けて、トークンを上場させていくっていうようなプロセスになっています。
思い立ったらすぐトークン上場だ!っていうことはまずできないので、第三者機関の審査を経てトークンを上場させていくっていうようなフローになるので、その分いろんなリスク監査だったりとか行動自体にも監査も当然入りますし、そういったことを行う必要がありますね。
それによって一定担保はされるかなとは思いつつ、やはり日本で問題になってるのは、その審査プロセスがちょっとIPO(新規株式公開)に近いがために、重いんじゃないかと。海外諸国に比べると厳しいんじゃないかとか、すぐ上場できないんじゃないかとか、そういう懸念があって上場が遅れてしまう。IEOはあくまでスタートなので、この部分のバランスもLUNAの件があったりするとすごく難しいなって考えてますね。
グレーゾーンをどう乗り切るか、ここが次の起業家の判断基準になりそうですね
石濱:本当にそうだと思っていて、そっち(規制)ばっかり気にしちゃうとこの自由なファイナンシャルインフラストラクチャーに載っている恩恵を受けられなくなってしまうので、どこをいい塩梅とするかですね。
僕たちは長い間、ノーチャンスだったかなと思っています。この日本国においてバブルの次に生まれ、規制に丸め込まれる側の人間だったんで、そういう人たちがより自由な市場、ブロックチェーンに載る新しいエコシステムみたいなところを作っていくっていうのは、すごいやりがいがあることなので、そこのバランスをどうやるのかっていうところ次第かなという風には思いますね。
話を戻してLobiについて
石濱:「Lobi」は今、日本で一番大きいゲームコミュニティのサービスで、ミクシィのコミュニティのような感じです。パブリックにゲームの話題でちょっと友達同士でお話ができて、そこでコミュニティを形成できるようなサービスになっています。累計登録者が700万人ぐらいで、今回Lobiを2カ月後、7月31日のスケジュールで終了し、ユーザーさんにはYay!の方に移動していただいて、Lobiと同じようにこれからはYay!を使ってくださいっていうような形で、Yay!がLobiを吸収合併する形になります。
Yay!で受け皿は用意している?
石濱:Yay!自体にもサークル機能っていうコミュニティの機能があるんですけど、そこの実装にあたりLobiをベンチマークしながら作っていたっていうところもあるので、基本的にはLobiに存在している機能をほぼ網羅的にYay!で実装しています。なので、ベースのエクスペリエンスとしては、何ら変わらずYay!を使えるかなと考えていて、一部まだ実装が足りてない部分もあるんですけども、それは優先的に実装していくというところをLobiのユーザーさんに約束させていただいて、数カ月以内にほぼ全ての機能がLobiにあるものよりもより使いやすい形でYay!に登場してくるかなと考えてます。
気になるのがトークン対応。どのようなアイデアを考えていますか
石濱:メタバースというか、デジタル空間の居場所にお金が集まってくる、いわゆる全体のユーティリティという表現をするんですけど、今、暗号資産の全体の市場は 170兆円あって、大体それが日本の株式時価総額の四分の一ぐらいを占めています。(少し前までは)250兆円とか300兆円ぐらいあったんですけど、最近の暴落で 170兆円くらいになっています。
170兆円って言ってもめちゃくちゃでかいお金じゃないですか。経済が流動していて、みんなDeFiとかでお金を増やすんですけど、じゃあお金を増やした先に何に使うの?っていう問題がまだこの暗号資産業界、何に使えばいいんだっていう状態かなと。
たとえば今、ステーブルコインを買って資産を安定的に運用したりとか、あるいはNFTを買ってソーシャルで自慢する、みたいな使われ方かなと思っています。つまり、メタバースになっていくと思っていて、デジタル空間のアイデンティティがある場所で資産を扱うようになるし、資産をとどめておくようになると思っていて、暗号資産全体のマーケットの一番コアなユーティリティがメタバースだったりとか、バーチャルワールドと言われるデジタル空間の居場所になると考えています。
だからこそThe SandboxとかDecentralandなど、BAYCのバリュエーションが高いのかなと考えていたり、メタバース自体がバズワードになってきてるなっていうのは感じています。
ではその時、僕たちは何をやるかっていうと、真の意味で毎日デジタル、僕たちのプラットフォームを使ってもらうで、それが本当の意味で居場所になって、ここが自分のアイデンティティの居る場所だとユーザーに思ってもらってのがめちゃくちゃ重要だと思っているんです。暗号資産のマーケットにあるプラットフォームでそこまでしっかりできているのってあんまりないなと思っていて。
他のメタバースも投資家が土地を買うんですけど、毎日使ってくれる人どれだけいるの?とか、毎日ここが居場所ででここが自分の人生が宿る場所という思いで使ってくれているデジタルプラットフォームってないなと思っていて。
そこの部分をしっかり作り込むことによって毎日使ってくれる、ユーザーの熱量だったりとか、コミュニティの凄さっていうのが僕としては一番大きな資産性を持つだろうなと考えていて、シンプルにDAUを増やしていって、熱量を増やしていくことが今後、当然細かいところでトークノミクスとか、いろいろあるんですけど、一旦そのIEOをして経済圏を作っていく中で一番重要なんじゃないかなって考えてますね。
NFTコレクティブル市場を眺めるとクラスター化している印象があります。yay!もその一つになる?
石濱:そうですね、僕たちもNFTコレクションを出していくのでそこの部分も相まって、今のコレクティブルと同じような熱狂を生み出せるといいなと思ってますね。
ありがとうございました
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