コミュニティが「イケてる」温泉を発見、温泉botくんが #CZP 賞を受賞ーーZ世代起業家支援プログラム4社が成果披露

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Z世代に特化した起業家コミュニティCulture Z Parkを運営するduocは7月9日、支援プログラム「Culture Z Innovation」の最終選考会を実施した。Culture Z Innovationは、Z世代の事業アイディアに対して参加する企業がメンタリングなどを実施し、持続可能な事業計画を一緒につくる支援プログラム。参加した企業はアクセンチュア(アクセンチュア・ベンチャーズ)、住商ベンチャー・パートナーズ、ビックカメラ、丸井グループ。本誌もメディア協賛という形で支援した。

最終選考には50社ほどの応募から残った4社が進み、支援各社との1カ月に渡るメンタリングを実施し、その成果を披露した。最も評価が高かったのはたびふぁんの提供する「温泉botくん」で、各賞の受賞は次の通りとなった。

  • たびふぁん(西岡貴史氏):LINEで使える温泉レコメンド「温泉botくん」
  • Qwi(小川涼氏):分散型IDによるデジタル学生証「Qwi」
  • SHeLF(籔下貫太郎氏):体験型ストア​「gallery.com」
  • offer(神笠真樹氏):デジタル書籍二次流通「N BOOK」

Culture Z ParkはZ世代(Generation Z)の起業家を中心とするコミュニティ。Z世代は諸説ある中で、概ね1990年代から2010年代に誕生したデジタルネイティブ世代を指すことが多い。過去300回ほどのコミュニティイベントを開催しており、現在は500名以上のZ世代が参加している規模に成長している。大手企業とZ世代の橋渡しをする役割も担っており、今回のプログラムなどを通じてオープンイノベーションの取り組みも推進している。

たびふぁん(西岡貴史氏):LINEで使える温泉レコメンド「温泉botくん」(大賞:CZP賞、ビックカメラ賞)

今回のイベントで最も高い評価を得たのが「温泉botくん」を提供するたびふぁんだ。ローカルに隠れた知る人ぞ知る温泉をコミュニティの力で発掘・レコメンドしてくれる。従来型のオンライン旅行予約(Online Travel Agency・OTA)ではどうしても定量的な情報、例えば価格や駅近といった検索結果が強くなる。そこでたびふぁんではLINEを使った温泉レコメンドサービスを提供した。

特徴的なのは回答にコミュニティの力を使っている点だ。エリアを選んで5問ほどの簡単な質問に答えると温泉がレコメンドされる。その情報は楽天トラベルに接続されているのでそこから予約ができる。このレコメンド情報は現在、彼らが温泉ソムリエと呼ぶ、温泉に詳しいガイドがおすすめする情報をデータ化し、ある一定のシナリオに沿って結果を出す仕組みにしている。将来的にはこれらの情報を蓄積し、AI化していくことも考えている。

もう一点、彼らの特徴になるのがビジネスモデルだ。従来型のOTAは成果報酬型で予約が入った段階で手数料を旅館側が支払う。一方のたびふぁんはユーザーからの課金を加えたハイブリッド型を狙う。ユーザーに定性的な情報を提供し、お気に入りの温泉をおすすめする代わりにユーザー課金を実施し、宿泊施設や旅行代理店などのアフィリエイトも収益構造に加える。結果、宿泊施設などに係る手数料が大幅に軽減できるとした。

昨年夏にテストを開始し、現在、全国版としてリリース。ユーザーは毎日数十人の規模で拡大しており、全体の登録数は7,000人に達した。ヒアリングの結果、300円から500円ほどの課金に応じてくれるという声も届いているという。今回イベントにメンタリングとして参加した丸井グループとはキャンペーンなどの協業が進んでいる。旅のロングテール情報を掘り起こし、今後、こういった定性的な情報(セレンディピティ)による発見ソリューションとして飲食店など他の分野にも広げたいと抱負を語っていた。

offer(神笠真樹氏):デジタル書籍二次流通「N BOOK」(アクセンチュアベンチャーズ賞)

offerが提供を考えているのがNFTによる書籍の二次流通サービス「N BOOK」だ。1990年台後半から市場の縮小が始まっている出版業界において、中古書籍店での二次流通額が700億円程度、フリマアプリで二次流通する市場は2,000億円程度あり、これらは作者に還元されていない。今回のテーマであるサステナビリティ(持続可能性)を考えると大きな課題になる。そこでofferでは紙の書籍ではなく電子書籍をNFT化し、それらが二次流通した際にロイヤリティなどの形で作者に還元する方法を考えた。

1次販売での手数料は20%で二次流通した際の手数料は10%を想定している。作家側の収益は1次流通で80%、二次流通した際は手数料の40%と広告収益が還元される。初期は同人誌など小さく熱量の高いクリエイティブから話を広げる計画。CZPの期間中に元々の飲食店に対するサービスアイデアからピボットし、こちらのアイデアを披露した。実際の開発やアイデアのブラッシュアップはこれからになる。

SHeLF(籔下貫太郎氏):体験型ストア​「Nankore?」

オンライン中心のD2Cブランドにオフラインの催事会場を提供するのがSHeLFだ。小さなブランドが急増した結果、D2Cブランドの多くはその認知訴求、ブランディングに苦戦している。広告では手触り感など実際に「モノ」があるD2Cブランドとして伝えきれない課題が残る。結果、消費者に「見つけてもらえる」有効な機会としてリアルディスプレイを商業施設などに展開している。

彼らは商業施設でのディスプレイをある程度フォーマット化することで、それ自体をメディア化しようと考えている。また、消費者に対しては訪問するごとに商品を入れ替えるなどして新鮮な情報(ブランド)に出会えるよう工夫している。

消費者の感情に訴えかけられるようディスプレイにもこだわりを見せる。大阪の商業施設で実証実験したケースでは、ターゲットとなる20代女子に向けて設営された店舗を15区画に分割し、2週間でブランドを入れ替えた。福岡で実施した出店テストでは3割の利用ブランドが再度利用したいと回答した。彼らの調査によると、国内のオンラインブランドは420万店舗あり、中でも彼らがターゲットとするマイクロブランドはその半数以上を占める。また、BASEなどのストアフロント型コマースの隆盛でその数は拡大傾向にある。ビジネスモデルは固定料金制。

Qwi(小川涼氏):分散型IDによるデジタル学生証「Qwi」(住商ベンチャー・パートナーズ賞、丸井グループ賞)

公共交通機関の窓口に定期的に発生する長い行列、そう、定期券の購入が原因だ。この学生の個人認証をデジタル化しようというアイデアがQwi(キューイ)になる。デジタル認証できれば、学生割などをマーケティング、プロモーション施策として使いたい飲食店や商業施設などにも役に立つ。

Qwiによると9割以上の学生が公共交通機関での個人認証をオフラインで済ませている。ここをデジタル化すれば紙の学生証を見せてハンコを押すようなアナログな方法から脱却できる、というわけだ。効率化は当然ながら資源の削減、公共交通機関まで出向く移動が削減できる。

彼らが提供するのは学生向けの学生証アプリと企業向けのAPI、プロモーションなどを提供するためのビジネスサービスになる。個人認証については公共交通機関をメインターゲットにしており、APIで個人IDを確認できるようになっているので追加の認証システム開発が不要になる。また、個人情報についてもブロックチェーンを活用した分散型ID、DID(Decentralized Identifier)を使っている。個人情報は各個人のアプリに格納されるので、運営側における情報漏洩のリスクが軽減される。

ビジネスモデルは公共交通機関における認証手数料と商業施設のプロモーション費用。コミュニティによる分散的な運営を目指しており、現在、参加している商業施設は50店舗にのぼる。またJR東日本が開催しているアクセラレーションプログラムにも採択された。

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