エージェント型不動産売買仲介のTERASS、GCPやSBIらから10億円をシリーズB調達——エージェント数で国内最大規模目指す

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TERASS の経営陣。左から:井上利勉氏(CAO)、江口亮介氏(代表取締役社⻑)、高坂昌行氏(CTO)
Image credit: Terass

エージェント型不動産仲介サービスを展開する TERASS は27日、シリーズ B ラウンドで10億円を調達したことを明らかにした。このラウンドはグロービス・キャピタルパートナーズ(GCP)と SBI インベストメントがリードし、インキュベイトファンド、三菱 UFJ キャピタル、PARTY などが運営するスタートアップスタジオ combo が参加した。インキュベイトファンドと三菱 UFJ キャピタルは、TERASS が2021年3月に実施したシリーズ A ラウンドに続くフォローオンでの参加。

TERASS は、リクルート「SUUMO」やマッキンゼー出身の江口亮介氏(CEO)、KLab 出身の高坂昌行氏(CTO)らにより創業。現在、不動産の売買を検討する潜在顧客とエージェントをマッチングするプラットフォーム「TERASS Offer(旧称 Agently)」と、エージェントの業務を顧客管理・業績管理などの点から支援する業務支援システム「TERASS Cloud」を運営している。エージェントは TERASS との業務委託契約に基づき、不動産売買を希望する顧客に対し、取引の仲介業務を行う。

売買不動産の仲介は、賃貸不動産の仲介よりも当然ながら値も張るし、その分、仲介手数料も大きなものとなる。法律や商習慣の違いはあるが、アメリカでは、独立経営のエージェントが売買不動産の取引を仲介している場面はテレビなどでもよく見られるし、実際、彼らの社会的地位も高い。エージェントというよリも、顧客の相談に乗るコンサルタント的な要素が強いからとも言えるだろう。日本でも法律の改正などでより柔軟な勤務体系が組めるようになり、その分、エージェントに多くのコミッションを払う事業モデルが増えてきた。

TERASS の江口氏によれば、日本では最大規模の不動産売買仲介業者でも、所属するエージェントの数は1,500人程度とのこと。法律の制約から、日本では一人のエージェントは一つの不動産仲介会社としか業務委託契約を結べないことから(宅建業に従事する者の名簿登録の制限)、量・質共に良い物件と顧客が集まり、良いコミッションが提示できる事業者にエージェントが集中することになる。TERASS では2025年3月末までに、エージェント2,000人を目指すとしている(現在のエージェント数は約220人)。

Image credit: Terass

TERASS の直近の四半期取扱高は約90億円。単純にこれを4倍すれば年取扱高は360億円と想定でき、かつ、2025年3月末においてエージェントが現在の約10倍になっていることを考慮に入れれば、取扱高は数千億円に達することになる。不動産流通推進センターが発表しているデータによれば、この金額は概ね、不動産売買仲介業者としては、日本のトップ5にランクインできる規模になる(もっとも2025年には、他の不動産売買仲介業者も成長していると思われるので、ランクは上下する可能性はある)。

TERASS では調達した資金を使って、不動産エージェント数拡大とサポート体制の強化、住宅売買検討者に高い付加価値を提供するプロダクト開発、売却や住宅ローン周辺領域への取り組み拡大を行うとしている。今回出資参加した SBI インベストメントとは、SBI ホールディングス傘下の企業(SBI グループ企業)との協業を通じて、TERASS を通じた不動産購入者に対する付加価値として、ローンをシームレスに提供できるサービスの可能性を模索する。

TERASS がモデルとするのは、実在するオフィスを持たず、「eXp World」と呼ばれるバーチャルオフィスにアバターが出社することで事業を成立させている不動産売買仲介会社 eXp Reality だ。2009年に設立された同社は2018年5月に NASDAQ に上場し、従業員(登録しているエージェントを含む)は2万人を超えた。現在の時価総額は、20億米ドル以上に達している。

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