飲食店向けスマホ注文システムのフリーミアム展開で急成長、京都のファンフォがジェネシアや栖峰投資らから資金調達

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Image credit: Funfo

中華圏で飲食店に行った読者なら、店員からメニューと QR コードが渡された経験があるかもしれない。筆者が初めて体験したのは、幹線道路が閉鎖され、道の真ん中で雨傘を広げているデモを目撃した記憶があるので(雨傘革命)、8年前に出張で香港を訪れた時のことだ。街の中心部にあるカジュアルな寿司屋に入った時、店員からおもむろに QR コードを渡されたのを覚えている。この QR コードを読み取り、自分のスマホで注文してくれ、というわけだ。

中国本土に行くと、この仕組みは8割以上の飲食店に導入されているらしい。しかも、大規模なチェーン店だけでなく、個人経営の零細店舗に至るまで。中国でここまで急速に普及したのには、少子高齢化と人材難、それに、モバイル決済が浸透済といった背景がある。その状況たるや「スマホが使えない者は食うべからず」といった感じで、デジタルデバイドなんてことを口にする余裕さえ無い。注文をお客に自ら入力してもらうことで、飲食店のホール係は給仕に専念できることになり、少人数でも店舗を回しやすくなる。

飲食店における人材難は日本、それに海外でも切実だ。特に、ここ数年の新型コロナウイルスの感染拡大は、飲食産業に関わる人々の退職や転職を促し、人手不足に拍車をかけた。アメリカでは外食産業の給与が高騰して店の経営を圧迫しているし、日本の場合は、もはや給与の額で解決できる領域を超えて、物理的に人の数を確保できないために、閉店や営業時間を短縮する店が続出している。飲食産業の縮退は人々の早い帰宅を促し、さらにこれが、エンタメや交通など付随産業を含むナイトエコノミー全体を縮小に導いている。

「funfo」を導入している飲食店の一つ、芙蓉苑 渋谷 PARCO 店を訪ねてみた。箸入れの上に QR コードが掲げてあった(不正防止のため、画像を一部加工しています)。
Image credit: Masaru Ikeda

そんな中で、小さな飲食店にも簡単にスマホオーダーの仕組みを導入できるようにとサービスを始めたのが、京都を拠点に活動する「funfo」だ。創業者で代表取締役の Hengyue Qiao(喬恒越)氏は2013年に中国から来日、立命館大学経営学部を卒業後、大阪大学経済学研究科在学中の2020年10月、5人の立命館大学院生や中国人の仲間と共にファンフォを設立した。ファンフォは JETRO 京都が展開する外国人のための起業支援プログラムの第一号で、同社が京都を活動拠点に選んだのもそんな理由からだ。

具体的な数値は明らかにできないとのことだが、funfo の導入店舗数・サービスを経由した注文の取扱額は順調に伸びている。その理由は圧倒的な導入へのハードルの低さだ。店舗はネイティブアプリ(iOS)をダウンロードし、メニューを作成して QR コードをプリンアウトし、テーブルなどに掲示するのみ。来店客にアプリは必要なく、QR コードにスマホをかざすだけで、Web アプリか LINE 経由で注文ができる。しかも、店舗にとってはフリーミアムだ。

フリーミアムなのでファンフォがどうやって儲けるのかが気になるところだが、一つには、年内にローンチ予定の、チェーン店舗の売上データをまとめて管理できる機能のついた有料の「Pro 版」がある。また、スマホによるオーダーはモバイル決済との相性がいいことから、注文から決済までを一括処理できれば、決済手数料からの収入も得られるだろう。メインの機能を無料で提供しても、付加価値で収入を得る手段はかなりあって、これらは中国で先行する Tencent(騰訊)や Meituan(美団)の事例が参考になる。

ファンフォは17日、シードラウンドでジェネシア・ベンチャーズ、栖峰投資ワークス、個人投資家から資金調達したことを明らかにした。調達金額は明らかにされていない。同社では、今回調達した資金を使って、funfo のサポート体制と機能開発のために人材採用を強化していく計画だ。日本国内におけるこの分野では、Showcase Gig の「O:der Table(オーダーテーブル、旧 SelfU)」なども同様の機能を提供している。

<参考文献>

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