米国が注目するリチウムイオン電池リサイクル「Li Industries」のインパクト

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Photo by Hilary Halliwell

ピックアップ:Li Industries Announces the Closing of Series A Fundraising

ニュースサマリー:次世代リチウムイオン電池リサイクル技術を開発するLi Industriesは8月1日、700万ドルのシリーズA資金調達ラウンドを公表した。Khosla Venturesがリードし、Shell VenturesとXerox Venturesが参加した。Li Industriesの創業は2017年。同社が特許を取得しているリサイクルプロセスを活用することで、新しいリチウムイオン電池に直接再利用できる高純度のリサイクル電池材料を生成する。同社は2023年に米国に商用バッテリーとリサイクル施設を建設する予定としている。

重要なポイント:電気自動車や携帯電話などの消費者向け製品の需要が高まるにつれ、生活に欠かせない存在となっているのがリチウムイオン電池です。日本でも今年2月にトヨタが初の量産型EVを公開しましたが、2040年のバッテリー需要は2020年比でリチウムが約13倍、ニッケルやコバルトが約6倍と今後ますます高まることが予想されています。

そしてこれらの原材料を埋蔵・生産できる国がチリ、オーストラリア、中国、コンゴ、インドネシアに依存するため、欧州・米国・日本は如何にリサイクルやリユースによる循環型システムを構築できるかが経済面と環境保護の面から重要になっています。しかし、小型の民生用リチウムイオン電池を除いては、発煙と発火のリスクがあることやメーカーごとに構成物質が違うこと、形状が様々であること、純度高く抽出することが難しいことからリサイクルの方法が確立できていません。

米国エネルギー省の発表によると現在の米国のリサイクル率は5%程度で、この比率を引き上げる取り組みとしてBattery Recycling Prizeを2019年から設定しています。これは使用済みおよび廃棄されたリチウムイオン電池を収集、分類、保管、輸送するための革新的なソリューション開発を促進し、90%のリサイクル率とそれによる利益創出を目指したものです。今回取り上げた「Li Industries」は、このBattery Recycling Prizeを受賞したバージニア州に拠点を置く、スマートバッテリー仕分けシステムを開発するスタートアップです。

Li Industries の選別技術は機械学習を使用して、バッテリーの化学的性質を識別する主要なタスクのほとんどを自動化し、リチウムイオン電池を含むさまざまな種類の電池の物理的および化学的ニュアンスを識別し、電池処理業者がリサイクルの取り組みを最適化する分離サポートするものです。つまり、リサイクルをスピードアップしてコストを節約する効果が見込めるものになります。

例えば日本の小型リチウムイオン電池の場合、電池メーカーでは資源の有効活用のため、正極材料に含まれる金属の情報を電池に表示する取り組みを実施しています。処理施設ではその識別表示に基づいて使用済みの電池を正極材料の種類ごとに手作業で分別して適切なリサイクル処理を実施するのです。

リサイクルのコスト低減に重要となるのは大量処理の方法です。処理工程には適した方法が存在するので、如何に高速に数多くある製品を分別できるかが鍵となるのです。また、バッテリー技術は日々進化をしているため既存の材料が使われ続けるとは限りません。材料の変化に対応できる柔軟性が求められます。

Li Industriesは各バッテリーの重要な材料を特定できるのが強みです。

再利用可能な材料をできるだけ多く回収できるだけでなく、バッテリー構成物質の特定ができるため、分別する材料に制限がありません。この点を評価されてBattery Recycling Prizeの受賞に至りました。「正確に選別できるだけ」と聞くとインパクトは弱いかもしれませんが、リサイクルにおける重要なブレークスルーになるのです。同社の選別施設は2022年末までの完全稼働を目指しています。その選別処理性能が明らかになった時、業界にどれほどの衝撃をもたらすのか興味深く見守っています。

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