【Web3起業家シリーズ】microverse渋谷氏「NFTはファンとアーティストを繋ぐ技術になる」

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

MUGENLABO Magazine では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとする、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えていろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。

6回目は、今年5月に新サービス「Stella」の α ローンチを発表された microverse の渋谷啓太氏です。弱冠25歳の渋谷氏は、日本の NFT ビジネス周辺では Z世代の起業家を代表する象徴的な人物の一人です。創業前は、日本のブロックチェーンゲーム開発の雄 doublejump.tokyo で NFT コンテンツやマーケットプレイスのディレクターをされていました。ブロックチェーン領域における技術の一つである NFT もまだ、残念ながら、すべての人に浸透しているとは言えません。今まで他のテクノロジーもそうでしたが、すべての人に受け入れてもらうためには、さまざまな工夫が必要になってきます。そうして実現される社会はどのようなものか、渋谷氏に伺ってみることにしましょう。

自己紹介をお願いします。

渋谷:渋谷啓太と申します。microverse という会社の代表をやらせていただいてます。だいたい 3 年前ぐらいからブロックチェーンの世界にいます。以前、 個人が仮想通貨を発行できるような「valu」というサービスが流行った時期がありましたが、僕はあれを見て、世界中どこで生まれようとも平等に自分がやりたいことに対してお金を集めながら will を実現できるような世界、その根本となっているのがブロックチェーンだと知り、この世界に共感して入ってきました。

microverse では、主にVtuber、アイドルとかアーティストのようなファンコミュニティがある IP とコンテンツホルダーが、ファン向けに NFT販売するのを支援する事業をしています。先日 Stella をローンチしまして、ファンの方々でも簡単にデジタルコンテンツやNFTを購入できるプロダクトのご提供なども現在しています。

Stella を発表されました。IP やコンテンツホルダーがファンに NFT でできたアイテムを受け渡しする上でハードルを下げる仕組みだと伺っています。Stella では、法定通貨で NFT を購入するんですか?

渋谷:購入時は、クレジットカードでお客様に決済していただくという形になります。厳密にいうと、購入した時点では購入者の元には NFT はない状態で、後から自分のウォレットと紐づけると NFTをトランスファーする形となります。トランスファー時のガス代は僕らが負担するので、暗号資産は不要です。

NFT販売サービス「Stella」

世の中にはさまざまな NFT を利用したアイテムがありますが、microverse ではどのようなNFT をお手伝いするケースが多いですか?

渋谷:今多いのがグッズ系ですね。会員証、アイコン、バッジ、動画のチェキだったり。デジタルグッズを NFT にして販売するパターンが多いです。

少し補足させていただくと、今 NFT の市場は僕たちが見る中で大きく 2 つがあると思います。1 つ目が仮想通貨ホルダー層向けの市場。いわゆる投機的な NFTです。高額で取引されて転売が頻繁に行われて話題になるNFTなどが該当します。

もう 1 つ徐々に広がってきてると感じているのが、IP のファン向けのデジタルグッズ的な NFT市場。僕たちは基本的なターゲットを後者にしています。

投機よりも、アイテムを持っていることで自尊心がくすぐられる方でやっていると?

渋谷:既存IP/コンテンツのNFT化の文脈においては、そうです。アイテムを NFT にすることの意味についてですが、デジタル上でのアイデンティティ証明がしやすくなることだと考えています。例えば、アイドルなどのライブ会場に、デビュー当時のライブで販売されていた昔のTシャツを着てくるファンの方などがいたりします。これは、自分が昔から応援しているいわゆる古参ファンであることのアピールが目的であると考えています。

今後、ライブ配信やメタバース空間がより浸透していくにつれ、コミュニケーションの主戦場が徐々にデジタル上へ移っていきます。その際に、「いくつ発行されたもので、誰が、いつから持っているか」を可視化できるNFTに裏付けられたデジタルグッズを保有していることで、デジタル上で古参証明をすることなどが可能になり、アイデンティティ証明ができるようになっていくと考えています。

さらに今までグッズを買うのはタダの消費でした。でも、NFT にすると、その IP のファンがどんどん増えていったら資産価値を持つ可能性もある。これまでタダの消費だった行為が、自身の応援などにより、一種の投資的な行為にもなりうるようになるわけです。

ここまでお話しさせていただいた内容が、 NFT にする意味だと考えており、プロデュースや販売をしていくときに注意を払っています。

ターゲット層はどのような人たちですか?

渋谷:模索しながらなんですけど、基本的にはIPやコンテンツのコアファン層になります。年代による識別はあまりしていませんが、年齢層的に肌感として相性がいいなと思ってるのが 10 代後半から 20 代前後だと思っています。基本的にコミュニケーションの主戦場がデジタル空間、SNSやYouTube にある層だと考えています。

K – POP が積極的にNFTを導入するのを見ると、日本は後ろを走っている気がするのですが、その辺りはどのようにお考えですか?

渋谷:日本ではまだ事例が少ないということもありますし、投機的な匂いに対するアレルギーと言いますか、国民性があるのかなと。

今、北米向けの Vtuberプロダクションのお手伝いをしていますが、北米はそもそもお金に対するマネーリテラシーが全然違うので、NFT自体の理解は高いのかなと思います。ただ、IPやコンテンツが投機対象のように扱われることに対しては、日本と同じく北米のファン層も抵抗があるようです。

昔だったらスポンサー集めてからしか出来なかったことが、NFTの概念が出てきたことでニッチな分野でも注目を集めて、資金を集める選択肢が出てきています。新しい芸能界の動きなどは出てきていますか?

渋谷:クラウドファンディング 2.0 のような動きがあると思っています。

数千万円とか数億円集めようと思ったら、知名度のない方は難しい。数十万円から百万円ぐらいなら集まりやすい環境ができていると思います。そんな市場の中で NFT のスキームを使う理由は明確な答えを持っています。NFTを使うとコンテンツ提供側はファンと長期的な関係を構築しやすくなります。

例えば現状のクラウドファンディングで最終値 百万円集めたとすると、リターンとしてお手紙やグッズを返却しています。この構造は、応援に対して、その場限りのリターンを返している構造となっています。NFTを使うとどうなるかということについてここからお話しします。

まず、初期の応援者に対してNFTを返します。そこから、プロジェクトが成長していき、IPやコンテンツ、ブランドのファンが増えていくと、初期のNFTを欲しいという人の数が増えていきます。そうすると、NFTの価値も上がっていきます。自身が初期に応援していて、さらにそのプロジェクトの成長に貢献することによって、長期的にメリットを得られるような構造を、NFTによって実現できます。

さらに、NFT は誰がいつから持っているかを可視化できるので、初期ファンの識別が容易になり、初期ファンに対して、エアドロップのような追加のプレゼントだったり、優先的に予告が見れたりするような特別な体験の提供等も可能です。これらが NFT が起こした大きなブレイクスルーだと思っています。

このようにNFTは、ファンとクリエイターさんの長期的な新しい関係づくりに使えます。

MUGENLABO のテーマがスタートアップと大企業なので、microverse が一緒に何かやると考えた時にどういった企業と今後共創していきたいと考えていますか?

渋谷:チャレンジだと思っているのが IP を作る側です。これはまさに大企業と共創できる場だと思っています。IPを作るときに 3 つのサイドが必要だと思っています。

1 つ目がクリエイターサイド。スタジオとか製作会社やゲーム会社です。 2 つ目が、僕らのような Web3 ならではのテクノロジーとマーケティングノウハウを持つ会社。3 つ目がディストリビューションサイド。作ったアニメを Netflix に流すとか作った漫画を LINE 漫画で流すなど、どこで配信するかで伸び方は異なります。この 3 つのサイドを一社で持ち切るのは厳しい時代だと思っています。一緒に DAO 的に作っていく取り組みをできれば嬉しいです。

最後に、今後の抱負を聞かせてください。

渋谷:Web 3 の領域においては、久しぶりに日本発で世界に対して産業を作れる領域だと思います。

今から 2〜3 年覚悟を決めてやり抜いたらそれができる。60 年後にオリンピックがまたできるような国になるためには、産業を作らなきゃいけないと思います。大企業と共に作っていけたら嬉しいです。

ありがとうございました。

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