香りのない生豆の「仕上がり」をAIが予測、ProfilePrintがシリーズA調達

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Image credit:ProfilePrint

ピックアップ:ProfilePrint closes series A1 with Cargill, bringing five of the world’s largest food ingredient corporations together as investors

ニュースサマリー:AI技術で食品成分を等級分けするProfilePrint は8月11日、シリーズA資金調達ラウンド完了を伝えている。米国拠点で70カ国に展開する食品サプライヤー、Cargillが株主に加わったほか、そのほかにも戦略的な株主としてLouis Dreyfus Company、Olam International、Sucafina、Sinar Mas、ベンチャーキャピタルファンドなどがこの投資ラウンドに参加した。

話題のポイント:ProfilePrintは食品への異物混入、品質の不一致、味の不正確さといった断片化された食品成分業界の課題に対処するために設立された食品成分分析プラットフォームです。AIベースのフィンガーフットプリント技術を使い、5gで食品のサンプルの品質とプロファイルを数秒で予測できるとしています。

現在対応している品目はコーヒー、茶、穀類、菜種、ココア、ハーブ、スパイス、液体、食品添加物、乳製品の10種類。それぞれクライアント企業の要望ベースで実証が進められているそうです。

中でも今回は特にProfilePrintがもたらすインパクトが大きいと思われるコーヒーについて解説してみます。こちらのリサーチによれば、世界のコーヒーの市場規模は「2025年には1,446億8,000万米ドルに達し、2021年から2025年までの期間に7.60%のCAGRで成長する」(コーヒーの世界市場:考察と予測、COVID-19の潜在的影響・2021年~2025年、グローバルインフォメーション調べ)とあります。

コーヒーはコモディティ化して既に世界に行き渡っていると思いきや、まだまだ成長余地はあるようです。

ProfilePrintがAIで計測できる食品例:Image credit:ProfilePrint

さて、コーヒーの品質を決定する最も重要な要素はフレーバーです。コーヒーの風味は収穫から最終加工までの時間で変化するのに加えて、焙煎プロセスを経て最終的に決まります。そのため、コーヒーの品質評価は、生豆の焙煎、焙煎豆の粉砕、コーヒー液の調製などの訓練を積んだ専門家によるカッピングによって行われるのが一般的です。

しかし現在の品質評価方法は専門家のスコアが評定者間でばらつきが大きく、信頼性が低いという研究結果があることからも分かる通り、時間がかかる上に主観的なものになっています。

その主な原因は、品質評価のためにコーヒー生豆を加工してしまうことです。焙煎、冷却、粉砕などそれぞれの加工には、温度や時間など管理が必要なパラメータがあり、それがコーヒーの最終的な品質に影響を与えています。厳密な管理で条件を揃えることができないことが評価プロセスを陳腐なものにしているのです。

ProfilePrintではこのコーヒー業界が抱える普遍的な基準がないという課題を解決しようとしています。

彼らの持つAIテクノロジーは、専門家と協力して、加工前の初期段階でコーヒーのフレーバーを評価することを目指しています。生豆は最終製品のような特徴的な香りをほとんど持たないものの、フレーバー生成に必要な前駆体をすべて含んでいるため理屈上予測不可能ではありません。実際、これまでの実験から得られたコーヒー生豆のフィンガープリントは、カッピングスコアと相関があることが分かっているようです。

今後、この実証実験が成功すれば、生豆の段階でカッピングスコアと関連付けて複雑なフレーバープロファイルを分析し、生産者とバイヤーが豆の最高の品質を保証できるようになっていくでしょう。

取引基準を再定義し、情報の非対称性を是正するこのAIソリューションをコーヒーだけでなく、ココア、ナッツ、スパイス、乳製品などの他の差別化された食品成分に展開していくことで透明性のある食品流通が徐々に実現していくのかもしれません。

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