#12 誰もが使いやすい、少し気の利くデジタル体験 〜ギフティ太田CEO × Droga5清水〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト。グローバル・テックシーンを見つめてきたITジャーナリストの松村太郎をナビゲーターに迎え、旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前編に引き続き、ギフティの創業者で CEO の太田睦さんにお話を伺っています。スタートアップをやっていると、同じ目的を達成するにも、どのようなステップでユーザをそこに到達させるかが一つの大きなテーマになります。万人に受け入れられるものを作るのは難しいので、ある程度、範囲を狭めて、想定するユーザ像(ペルソナ)を設定することになります。

ペルソナ次第で、そのスタートアップのビジネスは、世界的規模に成長することもあれば、小さいままで終わってしまうこともあるでしょう。大きなターゲットを見れば、今度は差別化が難しくなります。スタートアップが成長する上でブレてしまいやすいサービスの設計思想ですが、初心を貫く秘訣と重要性について、太田さんから話を聞くことができました。

ポッドキャストで語られたこと

  • 世代を問わないDXを許容するデザイン思考
  • 性善説と性悪説のプロダクト設計
  • 人を選ばないサービス設計思想

松村:DXが、上の世代には難しくて下の世代には使いやすい理由に興味があります。

清水:奥の深いテーマですよね。私は子供が 2人います。 8 歳の長男と8 ヶ月の長女なのですが、彼らの行動を観察すると、 8 歳の長男はもうデフォルトが音声検索なんですよね。

漢字を書けない時から例えば YouTube で「新幹線」と声で検索をしていて、その姿にターニングポイントのようなものを感じました。

一方、8 ヶ月の長女に携帯を与えると、動くもの、インタラクションをするインターフェースにすごく敏感なんですよね。画面の中に触感を求めてるみたいな。

僕なりの仮説ではあるんですけど、この子達は触感が拡張してくんじゃないかと。触覚と視覚が新しいものに変換されているのではないか?と思います。子供は先入観がないからそういうことを無意識にできちゃうだろうなと。私の母親などを見ているとデジタルに対する先入観がある。これまでの小さな成功体験が何万個、何億個と積み重なってるから、デジタルを新しいものとして身構えてしまう。成功体験を崩さないといけないのが、ハードルになってるのかなという気がします。

太田:僕の親はまだ若くて 60代中盤です。デザイン思考などが実際にプロダクトに組み込まれているものにギリギリ触れられている世代の人たちで、新しいものに対する受容度もそれなりにあるように思います。一方、i モード世代とかガラケー世代でデザイン思考に触れる機会のなかった方々はそこに留まりがちになるのかもしれません。

僕も 8 歳と 5 歳の子供がいるのですが、去年の、8 歳の長女へのクリスマスプレゼントは iPod Touch にしました。Spotify を無料でサブスクに入れて使わせてるんですけど、どうやってアーティストの曲にたどり着くか、教えなくても直感的に分かってるんですよ。クリッカブルであることがアフォーダンス的に分かってるんですよ。そこの概念がある世代と無い世代でギャップがあるなと思ってました。

清水:Apple とか世の中に使いやすいと言われてるものとそうじゃないものの違いは、特に多くの日本企業が出してるものとの違いになりますけど、性善説か性悪説か、結構そこが大きいじゃないかなと思っています。日本企業で出されているものは性悪説をベースにされていると凄く感じます。Google や Apple は性善説で人と対話しているなと感じていて。

太田:だから UI が複雑になっちゃうんですね。

清水:あれは性悪説の最たる例ですよね。

太田:うちの会社はさっき経緯を話した通りで、僕の個人的なペインからスタートしていて、ずっと今も変わらないのは気持ちのロスをなくしたいということなのですよね。

性善説的なところもあります。互いに気持ちを送りたいというのは全人類共有のもので、「ギフト」習慣は人類の歴史的にも長く、これからいかにテクノロジーが進化しても気持ちを送り合うことはなくならないと思うんですね。

自然に沸き起こった気持ちをできるだけ摩擦なく、相手に届けられるような世界を作れるか、それが会社として目指すことです。プロダクトとして、ある特定のすごいギフトを贈れる人や、センスの良いギフトを贈れる人種だけをターゲットにしていたら世の中全ての人の気持ちを摩擦を0 にできないなと思っています。

僕らの中では、よくビールにたとえて、「ビールでいうとどの銘柄を目指そうかね」などと話しています。

ギフトなので気の利いたものを送りたいという気持ちはあると思います。ただ人を選ばない、誰でも手に取れるサービスでありたいなと思います。サービス設計の思想としてはそういうマインドは持っていますね。だから誰でも手に取れる、誰でも使いやすいUI/UXにしよう、ただ万人受けでペタッとしたものを作るよりは少しとがっているというか、ちょっとおしゃれだね、気が効いてるねとセンスを感じるようなものを目指したいなと考えてはいますね。

1 つ大事にしてるのはできるだけ多様な人を取り入れることです。より多くの人に使ってほしいので、会社としてもより様々なバックグラウンドを持った人がいてほしいなと思います。とはいえギフトに関わるビジネスなので、ちょっと遊び心がある何でも生真面目に積み上げるだけではなくて、時にはショートカットを目指すような遊び心がある人の方がいいなと思います。そのあたりのキャラ設定は模索しながらやっています。

魅力的なギフト商材を持っていないとギフト贈ろうという人は集まらないですし、逆にブランド側を開拓しに行く時は、コンセプトは素晴らしいけどビジネスインパクトがどれくらいあるのですかと聞かれる。そこは最初苦しんだ部分ですが、結果的にはその答えがある意味イネーブラーになるように徹しました。

「御社がすでに持つ集客力をギフトと掛け算で」と、黒子としてホワイトレーベルで必要なシステムを提供して入っていきました。初号案件がスターバックスでした。それ以降色々なブランドに声がけしやすくなりました。スターバックスだから個人で利用したい人が集まってきてトラフィックも出て、そのトラフィックにレバレッジをかけて新しいブランドに行くというネットワーク効果が生まれていくという構図でした。

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