充電の待ち時間をバッテリ交換で3分に短縮、欧米進出に前のめりのEVメーカーNIO(蔚来)

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Image credit: NIO

NIO(蔚来)は、高級スマート EV の設計・製造に特化するメーカー。2018年5月から市場に SUV(多機能スポーツカー)やセダン EV を投入し、年々出荷台数を増やし続け、累積で20万台を超える車両を生産してきた。NIO が面白いのは、バッテリを製品ではなくサービスとして提供している点だ。同社はこのサービスを BaaS(Battery as a  Service)と呼んでいる。

バッテリは自動車本体の価格には含まれずリースの形をとる。そして、車のバッテリ残量が少なくなったら、充電ステーションで EVを充電するのではなく、車体を持ち上げ、標準化されたバッテリを交換する形をとるのだ。こうすることで、ドライバーはバッテリを充電するまでに数十分から数時間待たされることなく、フル充電のバッテリと交換する3分間待つだけで目的地に向けて運転を続けることができる。

NIO にはこれまでシリーズ  B ラウンドからテック大手の Tencent(騰訊)が参加、また、シリーズ C ラウンドには Baidu(百度)が参加した。2018年9月にニューヨーク証券取引所に上場、2022年3月には香港で上場、2022年5月にシンガポールでの上場と、中国の EV メーカーの中では稀に見るトリプル上場を果たした。Tencent は上場後も NIO の株式を買い増していて、傘下に置くことで自分達の戦略の一部としたい意図が読み取れる。

ただ、最近、NIO の周辺で少しきな臭いニュースが国際市場をにぎわせている。アメリカのショートセラー(疑わしい銘柄のレポートを出すと同時に空売りをかけて利益を上げる投資会社)の Grizzly Research が、NIO に粉飾決算の疑いがあるとのレポートを公表したのだ。事実だとしたら、コーヒーチェーン「Luckin Coffee(瑞幸咖啡)」や動画配信「iQiyi(愛奇芸)」のようにアメリカ市場から退場させられる可能性もある。

そんな逆風を浴びているのも、国際的なプレゼンスの高さの裏返しとも言えるかもしれない。報道によれば、NIO は2025年にアメリカ市場に参入を目指していて、2022年11月にはアメリカで初めてとなるバッテリ交換ステーションをシリコンバレーのサンノゼに設置する計画だ。このほか、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマークで製品とサービスを立ち上げる予定を明らかにしている。

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