Web3ゲーム企業の参入続々、NFT供給が業界課題に/GB Tech Trend

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660万ドルを調達した「Cauldron」(Image Credit:Cauldron)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

話題の尽きないWeb3業界に、「Web3版ピクサー」を目指すスタートアップが登場しました。

ロンドンを拠点とするWeb3スタートアップ「Cauldron」は、3つのゲームタイトルを開発する企業であり、ピクサーが創り出すようなストーリーテリングに重きを置くクリエイティブカンパニーです。今回660万ドルの調達を発表し、最初のゲームプロジェクト「Project Nightshade」のリリースを今秋に控えているそうです。

トークノミクス・NFTをベースにしたゲームがいくつも立ち上がっていますが、いずれも力強いメッセージやストーリー性を持ったものはそこまで多くありません。

こうした課題に切り込むのがCauldronです。

従来のゲームや映像作品では(Web3ゲーム以外も含む)、ユーザーは開発企業が創り出した世界を一方的に受け取り、そしてキャラクターを通じてその世界を遊んだり、視聴したりします。しかしながら、Cauldronが注目するのは、ユーザー自身がゲーム世界にキャラクターを配置し、物語を紡ぎ出していく「World-building」の手法です。

ユーザーは自身が創り出す世界の「一部を所有できる」とのことですが、具体的にどのようなアイテム等を所有できるのかはわかりません。ただ、何かしらのアイテムをNFTとして所有し、自分が紡いだ物語なのか、ゲームタイトルなのかが人気なればなるほどユーザーとゲームとの関係性が密接になっていく、Web3ならではの参加型の要素を仕組みとして採用しているのは間違いなさそうです。明言はされていませんが、ゲーム世界を遊びながら稼げる「Play-To-Earn」モデルの採用も予想されます。

さて、Cauldronのようなクリエイティブスタジオは、非常に競合優位性の高いスキルセットや経験がなければ成立しないと言えます。実際、同社の創業者はクリエイティブ業界のベテラン、かつゲーム会社からスピンオフされた企業であり、この点からも市場を知り尽くしたチームにより牽引されていることがわかります。

さて今回、もうひとつ注目したい点が「NFTの生産量」です。

Cauldronのようなゲーム会社がWeb3、さらにはメタバース市場に乱立する来る市場では、大量のNFT需要が新たに発生することが予想されます。あらゆるゲーム企業が、自社のエコシステムを活性化させるために、キャラクター同士の交配・繁殖をさせ、新たなキャラクターを生み出したりし、それを使って世界を旅をユーザーにさせようと躍起になるからです。

例えばフィリピンを拠点とするPlay-To-Earnモデルのゲーム「Axie Infinity」はまさにこうしたNFT需要を爆発させました。さらに誰かのNFTキャラクターを貸し出して収益を分配する「スカラーシップ制度」が登場したことで、低収入の人でもゲームをするだけで稼げるようになり、フィリピンで爆発的に流行しました。

しかし、このスカラーシップを運営する「ギルド」も課題に直面するようになります。NFTの流動性が上がらず、ギルド参加者の数が増えないことです。

ここで登場したのが「BreederDAO」でした。同社はNFTアセット生産プログラムを運用しています。Axie Infinityのようなゲーム企業と戦略的提携をした上でアセットを生産、ギルドに提供、多くのユーザーが新規参入できる機会を創り出しています。ギルドが活性化されることで、本体のゲームエコシステムも活気付き、Win-Winの関係を構築できます。

なお、BreederDAOは著名VC「Andreessen Horowitz」から出資を受けています。業界プレイヤーが集い、その先に到来する業界課題をどう解決するのかを見据えた動きに商機がありそうです。

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