SNSの新常識「BeReal」は広まるのか?/GB Tech Trend

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

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過去数週間の間に、大手SNS「Snap」や「Instagram」が立て続けに新たな投稿フォーマットの実験的導入を検討しているというニュースを見かけるようになりました。それが「本物の友情を築こう」をキャッチコピー にする新興SNS「BeReal」のフォーマットを真似たものです。

BeRealは2020年にフランスで創業されたシリーズ B ラウンドのスタートアップ。現在、デイリーアクティブユーザー数が1,000万を超えているとも報じられている注目の SNSです。

同SNSは、デュアルカメラ撮影が特徴の1つです。背面カメラだけなく、フロントカメラでの自撮り撮影も投稿しなければなりません。1日1回、アプリから通知が送られてきて、2分以内の写真投稿が求められます。時間制限が課されていることで、ありのままの生活シーンを写真で切り取り、加工に時間を費やすことも自然となくなる仕様になっています。過去の写真は毎日リセットされ、閲覧できなくなります。

加工、脚色された写真が溢れるようになってしまった昨今の SNS に対してのアンチテーゼとも言えるアプローチです。BeReal は、この手法をベースに UX を構築し、誰もが友達同士のように生活感あふれる写真交換を可能としました。

この BeReal の投稿フォーマットが、他社 SNS に実装される流れが出てきています。振り返れば、Snap が発明したストーリーズ機能も、徹底的に  Instagram や Facebook に模倣され、今では基幹機能の1つになりました。同じような流れが発生しつつあるとみてよいでしょう。

ただし、BeReal の世界観をそのまま踏襲できる SNS と、そうでない SNS  に分かれることが想像できます。もともとBeRealは、生活シーンの切り取りをベースにした UX を作り上げています。この点、「Best Forever Friends(大親友)」同士のコミュニケーションに特化している Snapchat にはベストマッチしそうな予感を感じています。

一方、自分のあられもない顔写真を投稿しなければいけないフォーマットが、「映える文化」が行き届いたInstagram等で広まるのは、少し考えにくいかもしれません。必ずそこには、「どんなコミュニケーションを想定しているのか?」というコンテキストに回答する必要があるためです。そのためストーリーズのように、どのSNSにも基本実装される未来がやってくることは、少し信憑性が低いかもしれません。

さて、BeReal にも似たアプローチは、過去にも見られました。世界的 YouTuber、Casey Neistat が発表した「Beme」は、スマートフォンのカメラ越しの世界ではなく、ユーザーが見ている世界そのままを撮影して共有する写真 SNS をコンセプトにしていました。Beme では、ユーザーは胸にスマートフォンの画面(フロントカメラ)を押しつけ、その状態で見ている景色を撮影します。こうすることで、ありのままの世界をシェアする文化を作ろうとしたのです。最終的には CNN に買収されました。

また、友人のタイムラインを、自分が撮影する写真で埋めていくSNS「Poparazzi」もその範疇に入るでしょう。ユーザーの評価が、他の人に映っている姿や印象によって決まる体験を、そのままSNSで再現したユニークなコンセプトです。Poparazziも、脚色された写真ではなく、ありのままに映っている友人の写真を投稿し、自分だけ盛り上がる世界は作れない意図が盛り込まれています。ちなみに同社は6月に1,500万ドルの調達を発表しています。

BeReal の投稿フォーマットが世界的に受け入れられるかは未知数な部分もありますが、こうしたアンチ大手 SNS にまた新たなチャンスが眠っているのかもしれません。

8月23日〜9月5日の主要ニュース

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