コーポレートITのクラウド化&アウトソース「ジョーシス」、44億円をシリーズA調達——来年にも英語圏進出へ

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IT デバイスや SaaS 管理などコーポレート IT 業務の自動化を支援するプラットフォーム「ジョーシス」を提供するジョーシスは7日、直近のラウンドで44.2億円を資金調達したと発表した。ラウンドステージは不明。このラウンドに参加したのは、グローバル・ブレイン、ANRI、Yamauchi-No.10(任天堂創業家のファミリーオフィス)、デジタルホールディングス、WiL(World Innovation Lab)。

ジョーシスは昨年9月にラクスル(東証:4384)の4番目の事業としてスタート。今年初めに、会社分割(簡易新設分割)により、ラクスル子会社としてジョーシス株式会社が設立された。その後3月、ジョーシスは、非開示の割当先に対して第三者割当増資を実施しており、ラスクルの連結子会社から持分法適用関連会社となった(増資後の議決権所有割合は35.6%)。今回の資金調達によりラクスルのジョーシスに対する議決権所有割合は希釈化される可能性があるが、具体的な割合については不明。

ジョーシスは SaaS(IT デバイスや SaaS の管理)、EC(IT デバイスの購買)、BPO(キッティングの移管)をまとめてクラウド化、アウトソース化できるサービスだ。企業の〝情報システム部門(情シス)〟の作業軽減と業務効率化を狙う。企業のコーポレート IT 部門が全業務の4分の1程度をクラウド化またはアウトソーシングにより圧縮できる可能性があるため、中小企業にありがちな担当者1名しかいない〝ひとり情シス〟状態の解消、情シス担当者の離職率の改善などが期待できる。

昨年のプロダクトローンチから約1年、ジョーシス CPO の横手絢一氏は、1日に100社以上から問い合わせが寄せられることもあり、深いニーズがあることを確信したという。ジョーシスではこの状況をより精緻に把握するため、ユーザにヒアリングを重ね、PMF (プロダクトマーケットフィット)達成度を計測できる Sean Ellis Test を実施した。これは、Dropbox や Eventbrite などのアーリーステージでのグロースを支え、グロースハッカーという言葉を発明した Sean Ellis 氏が作ったテストだ。

「もしこのプロダクトが使えなくなったとしたら、どう感じますか?」という質問に、以下の4つの中からユーザに選んでもらう。

  1. とても残念である
  2. まあまあ残念である
  3. 残念ではない (あまり便利ではなかった)
  4. もうこのプロダクトを使っていない

4割以上の人が、「1. とても残念である」を選めば PMF に達したと評価できるが、ジョーシスでは、実際、この4割以上に達することができたという。ジョーシスの開発や運営には、日本のチームと親会社のラクスルが開発拠点を置くインド・ベンガルールのチームが取り組んでいるが、メンバーの言葉や文化が違ったり、目標をより具体的なものにしたりするため、状況をより数値やデータで語ることに注力してきたそうだ。Sean Ellis Test もその一つの例と見ることができるだろう。

この数字に基づいた透明性と、ナラティブなアプローチ(ユーザを主人公にした考え方)に基づいて事業を進めてきた結果、投資家に対して事業を説明する中でも、社内と同じ透明性と粒度で情報を共有できたことで大きな説得力が得られたという。分社後最初の外部資金調達として(今年3月に第三者割当増資は実施しているが、VC からのシンジケートファイナンスとしては初となる)、大きな金額調達に成功したのには、そのような背景があるようだ。

ジョーシスでは今回調達した資金を使って、2023年初頭にシンガポール、2023年中にアメリカなどでサービス開始を目指す。インド、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、ドイツ、オランダ、カナダといった英語圏も射程範囲だ(オランダの公用語はオランダ語だが、英語も日常的に通用する)。前出の SaaS、EC、BPO というジョーシスの3つの機能のうち、特に EC や BPO は現地パートナーとの連携が必須になるため、今後、そうした立ち上げ準備に注力するものとみられる。

<参考文献>

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