#15 透明性ではなく検証可能性 〜Miss Bitcoin藤本 × ACV唐澤・村上〜

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

web3 のコンセプトは世界共通で、地理的市場の違いをあまり意識せず、全世界を相手にした事業展開が可能であることから、Day1(事業立ち上げの初日)から世界を舞台に活躍する起業家、投資家、エバンジェリストがいます。今回お話を伺う藤本真衣さんもそんな一人です。

藤本さんは自らを〝Miss Bitcoin〟と名乗り、世界的なブロックチェーンハブであるスイスやエルサルバドルを訪れたり、有名な web3 のカンファレンスで登壇したり書籍を出版されたりして、 コミュニティの醸成や知見の共有に注力されています。そんな藤本さんに、web3 の向かう先を聞きました。

今回も話のお相手は、アクセンチュアの ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクターの唐澤鵬翔さん、Accenture Song シニア・マネジャー 村上仁(ひとし)さんです。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。)

ポッドキャストで語られたこと

  • 藤本真衣さんが〝Miss Bitcoin〟になった経緯と、これまでの活動
  • 新プロジェクト「intmax」を共同創業した理由
  • 日本にも web3 でチャンスがある理由
  • これから web3 プロジェクトを始める人へのメッセージ

​​藤本:藤本真衣と言います。ビットコインに最初の興味を持ったのは2011年頃です。私が海外の子供たちへの寄付プラットフォームを前職の会社で構築してる最中で、送金手数料が高いことに悩みを持ってた時に、ビットコインという海外送金の手数料がほぼかからずに、しかも直接本人に送れるようなお金があるというのを聞いたのがきっかけです。

ただ、その寄付のプラットフォームにビットコインを実装しようとしても、ビットコイン持ってる人がほとんど皆無だったので、まずはビットコインの普及をしないと、ということで、ビットコインのミートアップやったりとか、ブログ書いたりとか、YouTube したりとか普及活動をしてきました。

2017年ぐらいに、ブロックチェーンゲームとか、NFT とかが出てきた時に、「これ、わかりやすい」と思ったんです。「ビットコインとかブロックチェーンはこう世界変える!」っていうことを言っていた人が多かった中で、これはゲーム元々好きな人エンタメ好きな人を中心に、もっと身近に感じる事ができ、マスに理解できるツールにもなるから、これ面白いと思って NFT にちょっと張ったんです。

2017年後半からは、Non Fungible Tokyo という、NFT の国内最大のイベントを毎年やっています。そういうふうに自分のフォーカスは変わってきてるんですけれども、常に何か自分の興味のあることをみんなに知ってもらいたいっていうような活動軸でやっています。

最初にお伝えした通り、寄付に興味があったので、2017年頃からビットコインを持つ人が増えてきたので、今がタイミングだと思って、Kizuna という仮想通貨の寄付サイトを作ったり、世界最大級の仮想通貨取引所が運営する Binance Charity Foundation のアンバサダーになって、コロナ禍で困窮している人たちのために仮想通貨で寄付を募り、医療費としていろんな国に送ったり、そういう活動を一緒にやったりもしています。

また、個人的に最近エンジェル投資として力を入れていて、例えば Axie Infinity とか YGG(Yield Guild Game)とか STEPN とか、Breeder DAO、EthSign などにエンジェル投資させていただいてます。最近、アカツキが Emoote という web3 特化ファンド作りましたけど、そこではアドバイザーとしてお手伝いしています。

最近、スイスに拠点に「intmax」という、Ethereum の ZK ロールアップ(ゼロ知識証明)を使ったレイヤー2のプロジェクトを始めました。このプロジェクトは Ethereum Foundation から無事に Grant(助成金)ももらい、現在も資金調達しています。私もこの業界に10年いて、自分が  Co-Founder として関わって、何か大きいことを成し遂げたいと思っているんです。

唐澤:僕らとしたらこれからですけどね。集大成なんですね。

藤本:そうですね、集大成というか、今まではエコシステム全体を盛り上げるような活動に力を入れてきたのですが今は、チームとして、最初から資金調達も苦労しながらでもやって、世界中の人が使うプロダクトを作りたいと思い方向性を変えました。ということで、intmax プロジェクトをやっています。

唐澤:ビットコイン自体もそうですし、Ethreum が出てきて、今いろんなものが出てきて、それこそユースケースもすごい増えたじゃないですか。こないだ Austin で開催された Consensus に行かせていただいたんですけど、それこそクラウドが流行った後にクラウド周りでいろんなソリューションができたのにすごい似てるなと思って。

ハイブリッドクラウドとかマルチクラウドとか、全部同じような動きになってますので、結構業界変わってきてるじゃないですか。まさしく、ずっと最初から見られてる藤本さんから見たときに、この界隈の魅力って変わってきているんですか? それともずっと同じようなところを目指していますか。

藤本:最初に ビットコインが出てきた頃から中央集権のものができるだけ不要になる分散化されたシステムを創る という文脈があったと思うんですけど、大きなコンセプトは一緒なんですよね。時代の変わり目になるっていったところに関わりたいという思いでずっと最初から言っていますけど、私の想いも一緒だし、そういった部分ではじゃコンセプトもずれてないですよね。

唐澤:今までいろいろ見られてるじゃないすか。投資もそうだと思うんですけど、自分として Founder としてもフルベットしていくプロジェクトは、すごいもう見すぎてて逆に選べないんじゃないかと思うんですけど。今やられようとしてるそのプロジェクト(intmax)には、なぜフルベットされたんですか?

藤本:レイヤー2に集中するのは、業界の未来を先読みした当然の結果かなと思っています。レイヤー1は今後もいっぱいでてくると思いますが、スマホのOS が iOS と Androoid の2種類に集約されたように、本当に重要なレイヤー1はかなり少数に集約されます。その中でも最も重要なレイヤー1であるイーサリアムのレイヤー2がこれからの主戦場になるので、そこに注力したわけです。

逆に他のチェーンがこれから勝つとかマルチチェーンみたいなインターオペラビリティで全部のチェーンが均等に残っていくとかいろんな考えがあるんですけれども、ここは自分でもうどれに力を入れていくかっていうのを選ぶしかないっていったところと、たまたま Co-Founder で代表でもある日置玲於奈が Ethereum  のレイヤー2のリサーチャーとしてやってきたエンジニアですごく研究してる人なんですよね。

その彼が、すごく面白い人なんですけど、コミットしたので、もうその人に一緒にやるならついていこうっていったところで判断をしました。やっぱり私は技術者じゃないので、いつも出資先決めるときもそうなんですけれども、私金融の知識もなければ技術の知識もないんですけど、いつも誰か補助となる人というか、いろんな人の意見を聞いて最後決めるんですよ。

ビットコイン のときもそうだったんですけれども、英語の論文とかしかない時に自分で判断なんかできるわけもなくて、100人ぐらいの頭のいいっていう尊敬してる人たちにのフィードバックを自分なりに全部分析して、入るかどうかって決めてたんです。だから NFT の時もそうです。

Axie とか STEPN とかもそうですけど、デューデリを私自分1人でできないので、いろんな人に情報をシェアしつつ、フィードバックをもらって決めるんです。そういった感じで今回のレイヤー2に関しても、いろんな人にフィードバックをもらいながら.でもやっぱり Ethereum のレイヤー2はすごく可能性があるなっていうことでコミットしようと決めたんですね。

今だと StarkWare や zkSync や polygon zkEVM といったプロジェクトがレイヤー2で強いんですけれども、何かそこに勝てるかもしれないという私達の技術の強さがあったんです。ブロックチェーンのレイヤー2は、プライバシーとスケーラビリティでトレードオフなことが多く、他の競合になり得るようなレイヤー2は、スケーラビリティはすごいけどプライバシーがなかったんですよね。

私達のレイヤー2は簡単に言うとプライバシーも確保できるので、そこが評価されて Ethereum Foundation から grant(助成金)をもらえたりとか、それこそ Vitalik(Vitalik Buterin 氏、Ethereum の生みの親)とか、そういうレイヤー2の知識のある優秀な人たちから良いフィードバックも結構きたんですよね。そこで勝てるかもしれないと自身が湧きました。補足するとプライバシーというのは、ユーザーが欲しがる必要最低限のプライバシーの事を指しています。

ユーザーが欲しがる必要最低限のプライバシーについては今後ビジネス展開していくときに多く議論されていくと思います。私も自分で NFT 持っていて、自慢した時に、「真衣さん、USDC いくら持ってるんですね」とか「Ethereum、何eth 持ってるんですね」って言われたときには、ブロックチェーンの透明性が大事なのはもちろん分かった上で、「ちょっと気持ち悪いな」って思ったんです。

村上:コミュニティに貢献してる人ほどそうなりますよね。

藤本:そうですね。だからそうなった時にプライバシーも担保されるブロックチェーンがあったらいいな、例えば、NFT 自慢しても自分の残高隠せたりとか、それって結構応用になってくると思っていて、例えばブロックチェーンの広告とか、不動産とか、そういった周りでブロックチェーン使うとなっても最低限のプライバシーの問題ってあると思うんですね。

最近 Twitter で見たんですけど、NFT を鍵にしてドアを開けるような面白いことをやってる人もいて、ただそれを楽しむだけというよりも本当にビジネスそれをやっていこうと思ったら、そこの履歴が全部、何時に鍵を Open したとか全部それが Open になってるのとかも結構センシティブな問題になってくると思うんですよね。

そういったところとかも考えると、今後広告でもそうじゃないですか、そのブロックチェーン見たら何を買ったかとか全部分かるとか丸見えとか。

村上:僕は2017年頃から、ホワイトペーパーを見ても分からなかったので、技術理解しようということで、よりアカデミアに強い人がいるところでやっていたんですよね。皆「今が最後のチャンスだよ。日本が1〜2周遅れを取り戻すのは、今本当に仕込まないともう次ないよ」みたいな事も結構言われたりするじゃないですか。日本という観点で、どう思われますか?

藤本:昨日のパネルディスカッション(編注:このインタビューは IVS の直後に収録)で国光さんと一緒に話した時に、今回 LUNA ショックとかで、特に中国のプロジェクトとかレバレッジかけるのが好きだからめちゃくちゃ今困ってる状態で、ある意味、日本の振り出しに戻った感じで、「スタートラインは一緒や」って国光さんが言ってたんですね。

なるほどと思って、私もその考え方いいなって思って。私も中華圏とかの友達とか韓国系の友達もめちゃくちゃ大変な思いをしてて、すごい静かになってるんですけれども、ウサギとカメというか、競争ってわけでもないんですけれども、日本がちょっと出だし遅れたんですけど、日本はある意味遅れてたから何の痛みも受けなかったかなっていう。

「傷が無いから今走るんや!」っていうことで。私も一緒にパネル出ながら「そうや」と思って一緒になって喋っていたんですけど。そういう意味で本当に今、始めるんだったら早い方がいいし、今回 IVS はグローバルのトップティアのプロジェクトとかも呼んでて、そういったところを肌で感じられたと思うんですね。

web3 のプロジェクトやるんだったら最初から「日本発」でアピールするんじゃなくて、元々グローバルに人類全部に貢献できるようなものを作ろうみたいなマインドに変えた方がいいと思っています。「中国発」とか「インド発」とかあまり聞かないんですよ。皆最初からグローバルで考えているプロジェクトが成功してるように私は思うので、これからプロジェクトを始める方には、そこのマインドを変えた方が良いんじゃないかなって思います。

次回へ続く)

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