#16 web3の本質的な魅力と発展プロセス 〜Miss Bitcoin藤本 × ACV唐澤・村上〜

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前回に引き続き、〝Miss Bitcoin〟こと藤本真衣さんにお話を伺います。web3 は新しいムーブメントであるため、そこではいろんなことが起こります。起きていることがいいことか悪いことか、それらに対する評価も人々が持つ判断軸によって千差万別です。

web3 が身近なものになるには社会実装が重要ですが、そこでは既存ビジネスを持つプレーヤーがうまく web3 を取り込めること、今までのペインを解決できて皆にとって役立つサービスを作れることがカギになります。後半では、そのためのヒントを藤本さんに伺いました。

今回も話のお相手は、アクセンチュアの ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクターの唐澤鵬翔さん、Accenture Song シニア・マネジャー 村上仁(ひとし)さんです。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。)

ポッドキャストで語られたこと

  • web3 に、投機的なニュアンスがからむのは悪いことばかりではない
  • 次に来る web3 のサービスは?
  • 大企業が web3 を取り入れるための方法

前回からの続き)

唐澤:ちょっと投機的な流れもやっぱりあるじゃないですか。法規制面でもそうだと思いますし、レバレッジかけすぎてみたいな話もあると思うんです。藤本さんから見られて、どのように思われますか。ブロックチェーンや web3 が健全に成長していくために、投機的な動きとどう向き合ったらいいのかをお伺いしたいです。

藤本:投機って別に悪いことだと私はあんまり思っていなくて、必要なことでもあるし、投機家がいるから流動性が生まれるという部分もある。一般的には投機的な部分を問題視される発言が多いんですけど、実はそこまであまり気にしていないんですよね。

「投機だけしか価値が無い」という〝外側の〟人は中身を見てないだけなので、そういう意見はあまり聞かなくてもいいかなと思います。投機は私は大事だと思っているものの、投機だけって言われる人の意見は違う、そこに耳は貸さなくていいと思うようなスタンスです。

村上:日本企業の方と話すと、投機ダメ話ばかり上がって来るんですよね、十中八九。それは日本的なのか、海外の人も皆投機について結構言ってるのか、何かその辺で違いとかありますか?

藤本:私が話している海外のチームで、投機がダメとかは1回も出たことないですね、正直。

村上:そのツールがあることで、 Axie もそうですが、それによって生活できたとか、先ほどの海外送金の手数料が安くなるとか、そうしたベネフィットのところを話すことが多いんですかね?

藤本:多いですね。だからやっぱり投機的な要素があっても、先ほど言ってくださったみたいに Axie のようにコロナ禍で生活ができない人の生活を支えたりだとか、そういうイノベーティブなことが起きているわけなんですよね。

私、仮想通貨の寄付について啓蒙してきましたが、一点不都合な真実があって、仮想通貨で寄付できると言っても、最初に仮想通貨取引所の口座を作ろうと思ったら、銀行口座が必要なことが多い。それってどうなのという。

Axie だったらスマホで Wallet 作るだけでできるじゃないですか。そういった部分でも進歩した部分があるわけで、投機だけじゃなくて、実際にそういった社会実装のところで動きがあるというのを見れば分かると思いますね。

唐澤:日本だと NFT とか、Play to Earn とか、STEPN とか、分かりやすいこの大きなトレンドがやっぱりニュースになりやすいですし、だいぶ認知が出てきてると思うんですけども、藤本さんから見て、次に何が来ると思いますか?

藤本:先ほども話したプライバシーの部分は注目しています。あとはせっかく web3 と言ってるんだったら、すぐに使えるサービスというのも、この場で紹介するのは面白いなと思っています。

例えば EthSign。今すぐ DocuSign とかの電子署名サービスの代わりに使えるんです。そういうのはユーザーベースは拡大していくんじゃないかなと思っています。EthSignで特に面白いのが電子署名サービス。これは、DocuSign プラス裁判所みたいなイメージなんですよ。

なぜかというとスマートコントラクトで、全部管理できるというか、それが DocuSign とは違ったプラスの要素なんですよね。執行できるところまで取り込んでるので、ものすごくweb3的で、私も、Metamaskと繋いで今いろんな顧問契約も EthSign でやっています。

トークンなどの契約書も今まで DocuSign とか別のサービスでやっていましたが、トークンのプロジェクトなのにこの(従来ながらの)契約書使うのって、よく考えたら何か違和感があって、その辺りは EthSign みたいなもの方が合うし、広がっていくんじゃないかなと思います。

あとは GamiFi 周りのエコシステムを支えるツールはもちろん流行ってきますよね。例えば BlocckChain Space ってプロジェクトは、GamiFi のギルドを作る SaaS みたいなもので、いわば GamiF iのセールスフォースみたいなプロジェクトなんですね。

皆ギルド作るときにすごく大変なんですよ。いろんな機能が必要じゃないですか、それがワンパッケージになっていて、結構ギルド作るときに Blockchain Space を使ってるところが多いんですけど、そういった GamiFi 周りのプロジェクトは分かりやすく広がっていくと思います。

唐澤:世の中、いろんな技術が出てきて、その後定着してるものは多層的なんですよね。さっきの例で言うと、ブロックチェーンみたいなものがあり、ここにゲームを乗せて、Play to Earn をやり、さらに YGG みたいなギルドでお金を貸したりとか、スカラーシップをやる人たちが出てきて、今度はその人たち向けのツールが出てきて、エコシステムが繋がっていく。

レイヤーが深ければ深いほど、歴史的に見てもエコノミーとして発展していくのは、歴史的に見てもあるので、面白いですね。もう第4層、第5層くらいまできてるので。

村上:Web2 のトラディショナルな会社を含めた大企業では、いろんな会社が web3 をどのように活用していくかを考えていると思うのですが、どういうふうに向き合ったら良いと思いますか?

人によっては「もう全然、発想が別で不向きなものだから、そこは触ってくれるな」という考え方もあったりするじゃないですか。

一方、大企業はある意味、元々スタートアップアクションされているサービスを人々に提供しているという視点からいくと、本来であれば Decentralize しているところと融合してうまく繋いだところができるといいのかなと思うんですが。

藤本:まずはコラボレーションでいいんじゃないかなと思っています。例えば、BYAC(Bored Ape Yacht Club)とアディダス、The Sandbox と SHIBUYA109、STEPN とアシックス。大手企業が自社で1からというよりも、グローバルに名前を取ってるようなプロジェクトとのコラボから入るのがいいんじゃないかと、大手企業の方から相談されたときは回答しています。

村上:一緒にやってみて、学びながら既にあるものとコラボした方が時間の効率も良いですし、まずは関係性を作ってみたいところですよね。そうしていかないと、さっきの〝日本発の罠〟にもハマりがちですよね。最初からグローバルでやっていくのが良いということなんですかね。

藤本:それが私はいいなと思うんですけど、大手の方に相談されたときはどういうふうに答えてるんですか?

村上:まさに同じですけど、最初からグローバルでやらんないんだったら、あまり意味ないんじゃないですか、みたいな。それこそ最初は学んでいくんだけど、元々技術の会社さんだったら、それこそグラント(助成金)取りに行くような気概で学んでいくっていう…。

それで何か自分たちが貢献できるか、さっきの多層的になるところのどの隙間を埋めるのかみたいな視点でやっていくと、ちゃんと web3 の世界で認められるんじゃないかと。ある意味、水と油みたいに見られがちですけど、そこを突破するにはそういう視点も必要なんじゃないかというようなことを言っています。

唐澤:大企業の新事業だと難しいですよ。大企業の方は、自分達は大企業だと意識しすぎない方がいいと思うんですよ。「僕らは大企業だから、こういうふうに付き合うべきだ」というステレオタイプはいらない。ユーザーから見たときには関係ないんですよね。

もちろんこのサービスはずっと続くという信頼性はあるんですけど。でもそんなことあまり考えないじゃないですか。このサービスで自分の課題を本当にどこまで解決できるか、どこまで自分はエンゲージできるのかというところでまず判断されるので。

変に大企業の色を出そうとしすぎると失敗しやすくなる。だったら結局スタートアップと対等に一緒に組んでやるのか、あるいは資金調達も社会から取るぐらいのやり方をしないとうまくいかないんですよ。担当者つけて2〜3年で変えて、というのは多い。

オースティンの時もそうですし、那覇もそうだと思いますが、やはり人を見ている。この人は過去どこまでこの業界にいたか、乗っかりたい人かなど。そこら辺、結構大事なのかなとか思います。なのでぜひ乗っからせてください。(笑

藤本:あとはこれは大手の方とか関係無い話なんですが、この前相談を受けたときの話です。今までは、プロジェクトが Exit とか上場とか売却とかなった時に、創業者と VC が主に儲かってきました。でも、web3 の概念として、インセンティブ革命みたいなところがあります。

本来は、例えば YouTube にしても、YouTubeを育てたのは YouTube が有名じゃないときからコンテンツ提供し続けた人とか、応援してくれたユーザの人とか、そういったところにも頑張ったよねっていったところを認めていくのが、この思考かなと思っています。

そういう人々、特に若い世代のマインドが変わってきてるのをキャッチアップしないと、サービスの受けが良くなくなってしまうと思うんですね。そこら辺のマインド変化はこれからもどんどん広がっていくと思うので、そういった思考は大事なんじゃないかという話はします。

唐澤:そうですよね。藤本さんから見られて、既存サービスで、どうしてもそうなりきれてないものが多いじゃないですか。分散型と言いながらも、実はすごく中央集権的だったりだとか、リワードの戻し方も一部の人に集中しているなど。

そこはどういうふうに変わってくるのでしょう。マインド変化に合わないものがどんどん失敗して、周りの目が変わっていくのか、何かしらきっかけのようなものは出てくるんのでしょうか?

藤本:きっかけとしては、周りの参加ユーザー層の方々、本当はベネフィットを受けるべき方々の知識がどんどん増えることで、そういう中途半端なことをしていると人が集まらなくなって結局うまくいかないというサイクルを繰り返して改善されていくと私は思います。

村上:最後にお聞きしたかったんですが。我々アクセンチュアのような会社はこれまでお付き合いもなかったと思うのですが、我々みたいなところとこういったことがやれるといいんなど、今後に向け何かあったりしますか?

藤本:分析やコンサルティングの経験とか、桁違いに知識があられると思っています。特に大手の方が新しい領域に入ってきた時に、噛み砕いて全部順序良く説明しないといけない中、そこができるのはアクセンチュアさんだと思います。興味あるけれど留まっているような人たちをグイグイ引っ張るのは、ぜひやっていただきたいなと思ってます。

私にもいろんな相談ってくるんですけれども、私は現場経験はあるので、そこではいろいろアドバイスできても、アクセンチュアさんレベルの分析や実績とかといったところはできないので、引き込み隊長として連れてきてくれる役割を期待しています。

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