日本人が挑戦するアフリカの課題解決、新興国向け営業管理SaaS「SENRI」(1)

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Image credit:SENRI

アフリカなど新興国におけるテック・スタートアップシーンでは「リープ・フロッグ」と呼ばれる現象がしばしば発生する。これは開発途上だった決済や流通などの経済インフラが、インターネットなどの急速な発展により先進国が辿ったそれとは異なる進化を遂げる現象のことだ。銀行や口座開設の状況が悪いケニアにおいて圧倒的なシェアを獲得したモバイル決済の「M-PESA」などはその好例と言える。

そこで本稿では、決済同様に重要な経済インフラであるロジスティクスに焦点を当てたテック・サービスを5社、ご紹介したい。近年、急速なECの拡大により、大きな変貌を遂げているアフリカ中心にそのロジスティクスの課題やアイデアをまとめてみた。

日本人が挑戦するアフリカの課題解決、新興国向け営業管理SaaS「SENRI」

SENRI」はアフリカのケニア、ウガンダ、ナイジェリア、アジアのインドネシアを拠点に製造・卸売業向けに営業・受発注管理プラットフォームSENRIと小売店向け受発注モバイルプラットフォームSENRI Direct Orderを提供する永井健太郎氏が取締役社長を務める日本のスタートアップだ。JICA でアフリカのプロジェクトの立ち上げや運営を経験した後、外資系戦略コンサルティングファームでマネージャーをしていた永井健太郎氏が2015年に設立。DIAMOND SIGNALの取材の中で永井氏は、前職でアフリカの教育に携わってきた経験から課題感を感じ、教育で得たスキルを活かせる仕事の開拓として起業したと語っている。

BRIDGEの以前の取材でアフリカの流通事情について伺った際に、永井氏はアフリカでは伝統的な小売店を通しての流通であるため、企業が流通網を拡大しようとしても効果的に進めるのは困難だとも語ってくれた。流通プロセスをSaaS化するSENRIを用いるとトラッキング、レポートなど現場スタッフの管理や在庫の把握、受発注の処理をするだけでなく、さまざまな分析ツールを提供して取得されたデータを集計、分析してフィードバックを受けられる。さらに、外部のBIツール、ERPなどの関連サービスと接続するための機能も搭載されている。これにより20%を上回る生産性向上を実現した。

<参考記事>

アフリカで製造・流通業向け営業管理SaaS「SENRI」運営、8,000万円を資金調達——マネックスベンチャーズ、Leapfrog Ventures、ANRIから

アフリカインキュベーター 創業者兼 CEO 永井健太郎氏 Image credit: Masaru Ikeda

SENRIによれば、2020年10月時点でケニア・ナイジェリア・ウガンダ・タンザニア・インドネシアの5カ国で展開され、累計150社以上が導入している。月間総取引額は約12億円、月間アクティブユーザー数は対前年比2.7倍ペースで増えているとのことだ。

また、2020年10月にはSENRI Direct Orderがリリースされた。これはヨーロッパ、南米で圧倒的な使用率を誇るモバイルメッセージングアプリ「Whatsapp」を活用し、現地の小売店がメーカーなどへ商品を直接発注することが可能になるプラットフォームだ。新型コロナウイルスの影響を受けて、メーカーや卸売業が小売店に対して対面営業することが難しくなった事情を踏まえてのリリースだ。既に事業展開しているケニア、ナイジェリア、インドネシアに加え、エジプト、ベトナム、フィリピンなどにも拡大し、2023年までにアジア・アフリカの10ヶ国でSENRIとSENRI Direct Orderを提供する計画だ。

SENRIは2015年にシードラウンドで実施した4,000万円、2018年9月にプレシリーズ A ラウンドで8,000万円、昨年10月にシリーズ A ラウンドでSBIインベストメントから2億円を調達している。

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