食べやすさを追求、野菜摂取量向上を促すPairwise Plants/食品のゲノム編集技術(1)

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Image credit:Pairwise Plants

2012年にバイオテクノロジー領域で、今世紀最大と言われる発見があったことをご存じだろうか。それは遺伝子改変ツール「CRISPR-Cas9」による標的DNAの切断だ。それまでGMO(genetically modified organism)と言われるDNA組織の置き換えが主流だったゲノム編集手法と異なり、CRISPR-Cas9によるゲノム編集は標的を切断し、細胞が修復されるときに正確に修復されないエラーを利用してゲノムを変更する方法を取る。

CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文の繰り返し)技術の開発を行ったEmmanuelle Charpentier氏とJennifer Doudna氏という二人の女性は、精度の高さと使いやすさ、将来性が評価されて2020年にノーベル化学賞を受賞している

10年の時を経て、宇宙放射線による損傷を引き起こすゲノムの編集の実験がISSで行われたり、幹細胞をCRISPR技術で編集してHIVウイルスの侵入経路を遮断する結果を得るなど、多くの明るいニュースをもたらしているがそのほとんどが医療に関するものだ。そこで今回は、非GMO技術を用いて食品業界に社会的インパクトを生み出そうとしている(一部ですでに生まれている)企業を紹介しようと思う。

ゲノム編集で種なし実現、食べやすさを追求「Pairwise Plants」

Image Credit : Pairwise Plants

ゲノム編集を食品に応用するスタートアップ特集1社目は、ノースカロライナ州ダーラムに本拠を置くFoodTechスタートアップの「Pairwise Plants」だ。2017年に創業された同社は、これまでにシリーズBラウンドを完了しており、累計1億1,500万ドルの資金調達を実施している。同社は種を取り除いたり、一部の野菜の苦味や辛味を取り除いて、よりおいしく栄養が高密度な作物生成に取り組んでいる。

除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え種子などを手掛けるMonsanto(Bayer AGの子会社)の系譜を引き継ぐMonsanto Growth Venturesとゲノム編集技術に精通する研究者のDavid Liu氏、Feng Zhang氏、J. Keith Joung氏によって設立された。同社によると、ハーバード大学からプログラム可能な塩基編集技術のライセンス、マサチューセッツ総合病院、MIT(マサチューセッツ工科大学)のブロード研究所からCRISPR技術ライセンスを受けて、新しい作物の品種を作成しているという。創業者3名が元々所属し、研究していた組織だ。

同社はCRISPR技術を使用して、フレーバー、賞味期限、季節ごとの入手可能性などの既存の課題を克服する新しい農産物を開発している。農家がより安定した収穫ができ、進化する脅威から作物を保護するのに役立つソリューションだ。現在、葉物野菜、ベリー、チェリーなどの分野に注力しており、Bayer AGとゲノム編集技術を通じて農業の研究開発を進める戦略的提携を結び、トウモロコシ、大豆、小麦、綿、キャノーラの作物の開発を進めている。

さらに、PSI(Plant Sciences Inc. )とパートナーシップを結び、ブラックベリー、ラズベリー、その他のサトウキビ果実にも開発の幅を広げている。AgFunderにCEOのTom Adams氏が答えたところによると、同社によって作成されるブラックベリーは、優れた味と長い賞味期限と品質を持ち、年間を通じて収穫できるだけでなく、棘を取り除き取り扱いが簡単になるという。

このように、パートナーシップを積極的に行い、研究と開発の速度を上げている点が同社の特徴と言えるだろう。同社は2019年に米国農務省、複数の大学、PSIとパートナーシップを結んでから2年間で300を超える固有種で研究を行い、ブラックベリーの追及に駒を進めている。

同社が持つ生鮮食品ブランド「Conscious Foods」では、葉物野菜、種なしベリー、種なしチェリーの新品種を栽培している。最初の製品「Conscious Greens」と呼ばれる風味豊かで栄養豊富な野菜は、2023年に一部の食料品店やレストランで販売される予定だ。

次につづく:種子をハック、世界で主食穀物の収穫量を増やすInari

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