本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします
アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。
前編に引き続き、ハッカソンプロトコル「AKINDO」、web3の求人メディア「Yours DAO」、web3プロジェクトデータベース「Web3 Database」、ポッドキャスト「web3 FM」など、web3について多岐にわたりプロジェクトを展開されている、trevary CEOの金城辰一郎さんにお話を伺います。
後編では金城さんと一緒に、web3が持つ課題とその打開策について考えます。そして、web3や、web3がもたらした組織の形である「DAO(分散型自律組織)」も社会実装されてこそ価値を持ちますが、どのような未来が考えられるのかについての展望も語っていただきました。
ポッドキャストで語られたこと
- 「x to earn」のweb3サービスはまだまだ出てくる。それをフックに、より多くの人々がweb3に参加する可能性は大きい。
- GAFAと対照的に、投稿されたコンテンツのもたらす収入が投稿者に還元されれば、そのプラットフォームはDAO的な仕組みになる。
(前回からの続き)
松村:今見えている難しさと、そこが解消されるきっかけについて、どの辺に可能性があるでしょうか。突破口みたいなものは見出せつつあるんでしょうか。
金城:いくつかあるんですけれども、最近アジアというか、日本でよく言われてるのは、x to earn——move to earnだったりplay to earnだったりがあるんですけれども……STEPNとかもだいぶ一般的になっていて、web3どころかインターネットのこともよく分からないような人がSTEPNをやっているくらいです。
やはり、あれは最初、「earnできる」「稼げる」というところをフックに、その領域に入ってるんですよね。非常にパワーワードじゃないですか。なかなかユーザを集めることが難しいところをearnできることで解決しているわけです。しかし、ずっと稼げるわけではないので、もちろん永遠に稼げる仕組みがあれば良いんですが、earnから入るけれども、それが生活に染みついて歩くことが習慣化していくことで、例えばジムに行くお金を節約できたり、保険料安くできたりして、日常のリアルライフがベターになっていくような仕組みはまだまだ何か出てきていいんじゃないかと思います。
最初はトークンでの金銭的なインセンティブですけれども、使えば使うほど情緒的なインセンティブとして浸透していくようなアプローチは、全然可能性はあるんじゃないかと思います。まだまだ実験段階で、ちょっとトークンの価値が下がっただけで「やっぱり、あれはダメだった」と言われるのは時期尚早だと思うので、まだまだx to earnは全然出てくるでしょう。
さらに、モバイル最適化とかは全然不十分なので、そこの問題は大きな壁としてあるんじゃないかな。それこそ、STEPNも、NFTのマーケットプレイスも、アプリのAppleの審査が通らなくなってしまったために、、外に(Webに)飛ばしてちょっとUXが下がったりしています。
今ディストリビューションできる最大のチャンネルがApp StoreかGoogle Playになっている状況で、そうした門番がこうした技術をどう見るのかというところが分岐点になるのかなと思います。SolanaとかPolygonとかは、そこをすっ飛ばして、自分たちのスマホを作り始めていると言ってるので、そこはクリティカルなボトルネックになってしまっていると思いますね。モバイルに浸透しないと、マスにはいけないと思いますし。
唐澤:x to earnって、ポンジ(投資詐欺)だとかなんだとかって、すごく批判されるじゃないですか。日本では、儲けることをネガティブに捉える感覚があるじゃないですか。僕は昔中国にいたので、この感覚が真逆なんですよ。
日本は逆にそれは隠さなきゃいけないことではありますけれど、確かに強いインセンティブですね。それ自体は悪いことではなくて、その後リアルワールドでの習慣化に繋がったり、クリプトとかweb3に興味を持つきっかけになったりするかもしれない。STEPNがきっかけで、初めてウォレットを作った人はたくさんいると思います。
村上:最初ウォレット作って買うまでは大変だけど、使い始めたら多分普通のアプリだと思って使っているわけじゃないですか。その状態に持っていくのが結構重要なんですよね。多分DAOとかも同じ話で、今はDAOがすごい際立ってしまっているけど、普通の働き方の中に溶け込んでいけば、きっと当たり前になる感じですよね。
金城:ちょうど僕もまさにそういったお話もしたいなと思ったんですけど、僕らって、今インスタグラム、TikTok、YouTubeとかに動画やツイートをアップしてるじゃないですか。今は、そういうプラットフォーマーを儲けさせるためにやっている部分も少なからずあるのかなと思います。
だけど、今後そういった中央のアグリゲーターがもうプロトコル化して手数料を全く取らなくなり、広告の売上を全部動画を投稿してくれた人に還元するようになっていったら、それは一つのDAOになっているって言えると思うんですよね。一つのプロトコルが真ん中にあって、それが、ただ広告主と仲介するだけの仕組みになっていけば…。
唐澤:僕らが(コンテンツを)アップするっていう行為自体が一つのDAOへの貢献ということですよね。
金城:おっしゃる通りです。僕も前にやっていたマーケティングで、インスタグラム(のフォロワーを)30万ほどぐらいまで頑張って増やしてたんですけど、Metaからは1円ももらってないわけですよ。自分で頑張って広告主を探さなきゃいけなかったりするのに。しかし、僕のコンテンツでユーザの滞在時間には貢献をしていて(Metaは)広告費を持ってもらっているわけで、そこが(投稿者には)バックされないという状況。しかも、いつバンされるか分かりません。
昔Facebookページとかもありましたが、今は「何それ?」という感じですし、昔はクライアンアントアプリがたくさんあったTwitterもサードパーティへのAPIはバンして、広告費で儲けるために自分のアプリしか出さないみたいになってしまいました。
そういうリスクが往々にしてあるなというのは、僕自身ずっとSNSを見ていたから感じます。もちろんメリットの方が大きいとは思ってはいるんですが、より最適な形になるのがDAO化していく仕組み。中央だけが管理せずに、そのUGC(ユーザ生成コンテンツ)をアップしている人たちで持つような仕組みというのが、DAOの一つの理想の仕組みになるのかな思いますね。
僕が後半でお話したかったのは、DAOをどう浸透させていくか、世の中にweb3がどう浸透していくかということです。僕、最近よく言ってるんですが、「ハイパーストラクチャー」という概念がありまして、これは言ってしまえば、世の中にの公共財を作っていくことです。
今のweb3のプレイヤーの方々はどこを見ているかっていうと、短期的なお金儲けではなくて、ちゃんと本質的なことをやって、世の中に対しての公共財になり得るようなものを作ろうと、切磋琢磨してるなってのはすごい感じています。
言ってしまえば、ビットコインが一番最初のDAOであり、理想的な一つのプロトコルでもあり、一つのデジタルゴールドを生成していくプロトコルとなっていて、中央がいなくて、マイニングをした人にちゃんと報酬が支払えるような仕組みになっていると思います。
そういう公共財になり得るようなものが、どんどんこれから増えていくだろうと思います。今だったら金融系で、DeFiの仕組みがまさにプロトコルとして、レンディングのサービスや交換所のサービスがあるので、その仕組みがいろんな領域に応用されていくと感じますね。
唐澤:権力を分散化するということは、その対象物がある程度、公共性が高いものの方が相性がいいというのはすごく分かる話です。一方で、利益を出して利益分配の仕組みがセットでないと、皆がDAOとして動いていくとのは難しいとなったときに、公共財は逆に利益を生み出しづらいという考え方もありますが、そこはどう考えられているんですか?
金城:正直運営側はもうGAFA以上に儲けるのはもう今後無理だと思っていて、GAFAが今一番儲かっている事業体で、web3のプレーヤーは正直ロマンや情緒的にやってるんじゃないかなというのは正直ありますね。分散的に皆で勝とうぜみたいな感じです。
よく言われるのが、パイをいかに独占的に取っていくかが、GAFA的なやり方でした。当たり前ですが、データベースやソースコードは、企業にとっては絶対に社外秘じゃないですか。しかし、web3の公共財になり得るようなプレーヤーは、全部オープンにして好きにソースコードを使っていいですよという仕組みにしているので、持分株式比率みたいなトークン比率みたいなものは、すごく少ないわけですよね。
ヴィタリック・ブテリンさん(イーサリアム創設者)も、(プロジェクトの持分は)全体の2〜3%以下と言われています。正直0→1を作ったコアメンバーの持分はめちゃくちゃWeb2のスタートアップと比べて少ないかもしれませんが、公共財となることで大きなパイになっていく、スケールしていくというアップサイドはより大きくなってるんじゃないでしょうか。
唐沢:理論上、たくさん人が使えば使うほどそれは便利になって、利益も分配すればするほど、そこの魅力度が高まってくるので、本当は一つに寄っていきますよね。
金城:そうですね、そこに蓄積されているユーザーデータやユーザーボリュームを全部まるっと持っていけるので。東京という街に人がいるので、その上にモノを作った方が、地方に作るよりもたくさんお客さん来るじゃないですか。
やっぱりそういうハイパーストラクチャーの概念、都市とか経済に例えられるんですけど、人が集まれば集まるほど価値がどんどん高まっていく仕組みを、今は個人で作れるような唯一の時代です。ブロックチェーンだからこそ、本当に管理コストがほぼゼロで勝手にどんどん大きくなっていくという、すごいワクワクするタイミングなのかなと思います。
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