仮想空間にNFTを持ち込んだSynamon、企業とファンが繋がるメタバース「SYNMN」公開

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

2010年代に躍進したデバイスのひとつにヘッドマウントディスプレイ(HMD)があります。2012年、Palmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏らによって共同創業されたOculus VRは、簡易な仕組みながら没入感溢れるデバイス「Oculus Rift」を生み出し、消費者向けVR市場のフロンティアとなりました。

それから僅か2年後の2014年3月。Meta(旧社名はFacebook)が巨額とも言うべき20億ドルの買収を発表し、今日まで続くメタバース市場の起点のひとつとなったのは多くの人が認めるところではないでしょうか。その後、FacebookはMetaと社名を変更し、消費者向けに販売されたMeta Quest2の出荷台数は1,000万台とも1,500万台とも言われるまでに成長しています。

世界的なVRビッグバンが巻き起こる中の2016年、ここ日本で創業したのがSynamonです。彼らもまたVRという仮想空間の可能性に魅せられ、スタートアップした一社となりました。あれから6年。ビジネス向けのVRソリューションを手掛けてきた同社が、新たなメタバースプロダクトを発表しました。

XRからメタバースへ

メタバースの企業向けソリューションを提供してきたSynamonは10月、新たなプラットフォーム「SYNMN」(シナモン)」のオープンベータを開始しました。VRヘッドセットからのアクセスのほか、Mac、Windows、iOS、Androidのアプリとしてスマホ、PCからの利用も可能なメタバースプラットフォームで、ユーザーはSYNMNの仮想空間(「ワールド」と「プラネット」)にアバターとして参加することができます。

Z世代などとの接点を持ちたい企業のメタバースにおけるファン・マーケティング活動を想定していて、東映アニメーションなど複数企業の導入が決定しているそうです。例えば今後、外部のECと連携して物販をしたり、仮想空間の体験として投げ銭や企業とファンを繋ぐメッセンジャーなどの機能が追加されるとのことでした。現在はオープンベータで、2023年夏の正式公開が予定されています。

Synamonが事業領域を拡張させようと動いたのは今年4月からです。企業はこういった仮想空間を活用したい場合、既存のプラットフォームを活用するかフルスクラッチで独自開発するかのいずれかが選択肢になります。例えば暗号資産取引所・販売所を運営するコインチェックでは、DecentralandやThe Sandboxといったブロックチェーンを基盤とした仮想空間をつなぐ「ハブ」となるメタバース空間「Oasis TOKYO・KYOTO」プロジェクトを発表しています。

また、SYNMNの特徴にメタバース空間におけるNFTの活用があります。

ユーザーはEthereumやPolygonなどのチェーンに対応したウォレットと接続することができるので、今後、保有するNFTを会員証として使うなど、仮想空間におけるNFTの連携が可能な設計になっています。具体的なユースケースとして同社では次のような想定をしているそうです。

企業がNFTをコミュニティへの会員権やロイヤルティプログラムの一環として使う場合に、NFT連携をすることでメタバース上で限定の部屋にアクセスしたり、限定のプレミアムアバターを使うことが出来るような場面を想定しています。(Synamon執行役員COO 武井勇樹さん)

NFTの活用は資産的な側面が価格の下落等で落ち着く一方、ファンエンゲージメントに活用しようという、本来的な動きに回帰しつつあります。例えばゴルフ会員権的なNFT活用方法で言えば、不動産に流動性を与えようというNOT A HOTELのようなスタートアップも出てきました。

SYNMNはブロックチェーン・ウォレットと連携できるのが特徴

ただ、既存に広がるメタバース上でNFTを活用して何らかのコミュニティを作る場合、企業はこれらのプラットフォームに「乗っかるだけ」という手軽さがある一方、プラットフォーム依存というリスクも同時に抱えることになります。

Synamonが提供しようとしているのは、完成されたプラットフォームとフルスクラッチでの開発の間を取れるようなポジショニングのようです。

実際、Synamonではこれまで培ったXR技術を活用した仮想空間開発だけでなく、NFTを中心としたクリプト関連の技術連携にも意欲を見せています。5月から6月にかけてdouble jump.tokyoが提供するブロックチェーンの秘密鍵共有管理サービス「N Suite」との提携や、同じく日本発のパブリックブロックチェーンASTAR NETWORK、Ethereum(イーサリアム)のL2ソリューションであるPolygonとのパートナーシップを立て続けに発表しています。

メタバースとNFTに魅力を感じる企業たち

ラルフローレンは仮想空間のRobloxでキャンペーンを実施した

これまで取り組んできたXR分野から、より幅広い仮想空間に事業を拡張させようとしている同社ですが、その背景には企業からの相談件数が増加していることがあるようです。

メタバース空間の開発やプラットフォーム提供には国内外合わせて先行するプレーヤーがいるものの、クリプト関連技術、特にNFTなどの活用を合わせた相談となると途端に相談先が減ってしまうんです。(Synamon代表取締役 武樋恒さん)

この背景には既存コミュニティとNFTなどのクリプトコミュニティに断絶があることが指摘されています。以前、VR Chatに早期から出資するGFR Fundの筒井鉄平さんを取材した際にも指摘がありましたが、VR ChatではNFTの導入に慎重な意見が根強くあったそうです。

これは暗号資産を扱うユーザーに紛れる「投機(ギャンブル)」を狙った層と既存ユーザーとのハレーションを懸念しているからです。長年かけて積み上げてきたカルチャーを新参者に壊されてはたまらないというのはごもっともですし、武樋さんもこういった投機的な層への懸念を次のように話をされていました。

お金の匂いってしても構わないですが、金儲けのためにやるというのは違います。ちゃんと機能としてしっかりしたものを提供しないと、メタバース自体も変に見られると思っていて、それもとても嫌だったんです。折角、6年も7年もVRを頑張ってきてメタバース=金だ、みたいに思われるの正直、嫌じゃないですか。そういう使命感は持ってやっていますよ。(Synamon代表取締役 武樋恒さん)

一方、その上で企業に選択肢としての新しい技術を提示することが重要と続けます。

世界的に見るとNIKEやラルフローレン、ケロッグなどもRobloxに店舗を出したりして、世の中的には(ブランド・マーケティング手法として)使うよね、という流れになってきてますよね。NFTはあくまでオプションですが、こういう選択肢があるということを企業に対して提示したいと考えています。(Synamon代表取締役 武樋恒さん)

企業がメタバースを使ってどのようにファンやユーザーとつながるのか。具体的なケースが出てきたらまたお伝えしたいと思います。

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