#32 東京都の島まるごとDAO化で地方創生 〜JPYC岡部CEO × ACV唐澤・村上〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前回に引き続き、ステーブルコインJPYCの岡部典孝さんにお話を伺います。前編のステーブルコインの話とは打って変わって、後編は、コミュニティとWeb3の話です。東京都には意外と多くの島があるのですが、その中の一つ、青ヶ島にDAO(分散型自律組織)を導入してみてはどうか、という提案です。地元の人たちからも一定の支持があるようですから、実現すれば国内初、ひょっとすると、世界初の試みになるかもしれません。

Web3は新しい分野であるため、社会実装しようとした時に、既存のルールとの間で摩擦を生じることがあります。これはスタートアップが作り出すサービス全般に言えることですが、法律に抵触するから諦めるのではなく、積極的に政府などに働きかけてルールを変えていく努力が、特にWeb3のスタートアップや起業家には求められる局面がよくあります。青ヶ島をとっかかりに、日本の世の中の変化を牽引する夢を持つ岡部さんの話をお聞かせいただきました。

ポッドキャストで語られたこと

  • なぜ、青ヶ島でDAOをやるのか
  • 実験的な取り組みが許される特区の実現に向けて
  • 地方創生 × web3 の可能性

前回からの続き)

唐澤:JPYCの話もいろいろ伺ったので、せっかくなので二つ目の「DAOヶ島」ですね。最近結構「DAOヶ島で勝つ」って発信されて、若干ミーム化もしていると思うんですが。おそらく初めて聞かれた方って「なんだそれ」だと思いますし、そもそもなぜ青ヶ島でDAO化をやろうとされたのか、なぜ青ヶ島を選ばれたのかについて教えていただけますか?

岡部:はい。今回Web3とか、NFTが国家戦略になったわけですけれども、国としてはWeb3を使って、地方創生とかに生かせないかという視点で見ているようです。スタートアップ支援でもWeb3を使おうとしていますが、もう一つの柱は地方創生Web3だと思っていて、そういうことに関係して、私も国家戦略で地方創生推進本部とかでWeb3の話をさせていただく機会もあったんですよね。そういう中でやっぱりWeb3と地方の実際のビジネスを結びつけることができると、いきなり世界から売り上げを立てることができたり、世界に関係人口を広げられたりする可能性があるということに非常に魅力を感じました。

そういった中で、どこか自治体さんと組んでやりたいなと思ったときに、私が動き始めたときはまだこの国家戦略の話とか無かった時代ですので、小さなところで根回しが早いところじゃないと進まないだろうと思っていたんですね。外国ではクリプト好きの首長さんとかが出てきて、エルサルバドルにいたっては大統領がビットコインをしている、というような国も出てきたんですが、日本はまだそういう動きがなかったので、小さい自治体でやれるところがないかなと思って探し始めたわけです。

そうすると今青ヶ島村というのが独立した村、一つの基礎自治体でありながら、人口が167人程度で圧倒的に少なくて、非常に議員さんとか村長さんとかと村民の距離が近いわけですね。私も青ヶ島に来たわけですけど、本当に村長さんと一緒に草刈りしたりとか、議員さんと一緒に飲んだりとか、居酒屋に行けば議員さんがいるみたいなそういう狭い世界観なので、これはスピードが早そうだと思いました。もう一つは、若い人が多いんですよね。

普通は過疎の村って高齢化してしまうわけですけれが、青ヶ島は人口も少ないし平均年齢も40歳ぐらいで非常に若いということで、これだったらデジタルを生かした地方創生も受け入れられるんじゃないかと思って行ってみました。そうしたら、光ファイバーも引かれていて、実は都心と同じかそれ以上に速かったり、回線もあるので、これは十分やれるなということで、移住しようとなりまして、今は東京都と青ヶ島を行ったり来たりしています。青ヶ島で今目指してることとしては、例えばふるさと納税を集めてその返礼品でNFTを出したりとか、そういうところから始めて、まず独自予算を集めたいと考えています。

あとは広大な海の資源があって、排他的経済水域は非常に広い島なので、それを生かして漁業をやってもいいですし、発電をやってもいいし、場合によってはマイニングをやってもいいかなと思いました。いろいろ今、仲間内でどういう事業をやって島を盛り上げられるかを日々ディスカッションしています。地元の方もいれて、ネットでいろいろ意見をくれる人もいて、日々ディスカッションして実現に向けて動き出しているという状態です。

青ヶ島を選んだもう一つの理由ですが、DAOをやりたいなと思っていて、DAOのビークルをいろいろ研究してたんですね。法人がいいのかとか、法人じゃない方がいいのかとか、いろいろ研究していて、もしかしたら、村は最高のDAOになるんじゃないかということに気づきました。地方自治で住民がみんな投票して、こういうことをやろうとか、漁業にもっとお金を入れようとか、そういうことをDAO的に決められる村が日本の法律上でできるかもしれないと思ってですね。

私も大学でイノベーションとかを教えてるので、イノベーションをひたすら生み出す拠点になるんじゃないかななんて思うようになったんですよ。人口167人のところで、何かイノベーションを起こしたい人が何十人って移って私も今シェアハウスに住んでるんですけど、そういうところでWeb3の非常に濃い空間ができたらすごく面白いんじゃないかなんて思って提唱したところ、同じような思いの人がどんどん集まってきて、今移住する人も増え始めているという状態です。なので、多分あと1、2年したらいろいろ結果が出てくるんじゃないかなと思って楽しみですね。

唐澤:まさにそのDAOヶ島って最初その響きからしてもですね、村の意思決定、その組織形態がDAO化するみたいなところを私もお話を伺ってずっとイメージしてたんですが、多分それだけではなくて、村としてビジネスを作り出していく、その中で結構うまくWeb3的なテクノロジーですとか、その要素を活用していく、そういうところも含めてやられようとしているということですよね。

岡部:そうですね。今までだったら補助金をもらいに行って、その補助金でどうにかするみたいなのが地方のビジネスだったと思うんですが、青ヶ島にはいろんな資源がありますので、場合によってはそれをNFTとかにして、返礼品の形でも、直接NFTを売る形でもいいんですけれども、いきなり日本中あるいは世界中の人のご支援をいただきながら、独自の財源で開発するなんてことができると面白いと思います。

今は地方自治体も独自財源がなくて苦しいところが多いので、そういうところにとってはすごく成功例になると思うし、国家戦略にもなったということで、内閣府側とか国家戦略やってる人たちもその辺に予算つけたりして応援したいという動きはあるようなので、その辺はうまく取り込んでいけるモデルケースになるといいなと思っています。

あともう一つは特区を狙っていまして、特区を申請するためには自治体の協力が必要なんですが、(青ヶ島は)さっきも言ったように住人同士の距離が近い自治体ですので、移住してきた人が「こういう特区をやって盛り上げましょう」というところで村がOKとなればですね、スピーディーに内閣府側も認めてくれると思っていまして、可能性を感じてますね。

唐澤:面白いですね。結構、地方はローカリティというか、その独自性が元々があるじゃないですか。それとNFTのような希少性の概念とは実は親和性が高くて、Web3の力を借りればデフォルトでグローバルに訴求できていくので、話を伺って、そういうモデルが組みやすいなというのはすごく感じました。

今伺った話の中で、特区を作るとか、法整備上そもそもDAO的な意思決定結果みたいなところについて、ぜひもう少しシェアいただけないでしょうか。例えば、特区とはどんなものを想定されているのか、実際今の日本において、そういう自治体の意思決定をDAO形式でそもそもできるのか、できるとしても何がチャレンジなのかについて教えていただきたいです。

岡部:まず自治体の意思決定をDAOでやるというのは、法律上、地方自治法でもう認められています。町村総会という制度があり、議員さんが出て、話し合うというのが今までの標準なんですが、人口が少ないところでは、村民みんなで会議をして承認するということも認められているんですね。

人口167人なので全員参加の会議を開こうと思ったら開けますので、体育館に集まってやりますでも別にできるんですよね。なので法律上は既にできます。事例としても、八丈島という隣の島の村で戦後行われた事例もありますが、、当時はDAOとかと結びついてなかったっていうことですね。なので法律上はできるので、あとは地元の方々が、「いや議会の方が楽だよ。全員で会議やるのは面倒くさいんだよ」っていうのか、「いや自分も参加したい。みんなでやっていこう」となるのかそこはもう村民の意思だと思っています。

もう一つの質問は特区の話ですね。青ヶ島は実はもう既に特区として採択された事例があります。焼酎が名産品なんですが、普通より高い度数の焼酎を作って、村の中だけで飲めるという特区にもう認定されています。

このように村が小さいので、日本全土でやったら影響があるみたいな新しいビジネスでも、村の中だけだったらそんなに影響はないだろうということで、すんなりOKが出るということが想定されます。一例を挙げると、村の中のOTC取引はもう村民皆が顔をわかってますから、村民同士だったら暗号資産交換業はなく簡易なKYCでOTCやっていいとかの可能性があります。

マネーロンダリング対策などより、むしろ安全なんじゃないかと思っています。島の出入りも全部監視されているので、警察が見張っていますから悪い人が上陸してくる恐れも少ないし、犯罪を犯したら逃げ帰れずにすぐ捕まってしまうので、青ヶ島で「OTCやっていいです特区」みたいなのをやれたら面白いなと思ってます。

唐澤:面白いですね。そうするといろんな実証実験というか、この仕組みがワークするのかどうかっていうのはある意味青ヶ島で実証して、その後もう少し規模を広げた自治体でやって、最終的には例えば全国に広げていくような、そんな感じのことができそうですね。

岡部:あと、やっぱり非常に広大な海がありますので、もちろん地元の協力は必要ですが、例えば洋上風力とか、発電の拠点にして、そこでマイニングしてみたらどうだろうとか、普通だと採算が合わなさそうなビジネスをスタートアップの力を寄せ集め、採算合う形にして、ある程度うまくいったらそれを広大な海で広げていくみたいなことができると面白いですね。

日本の排他的経済水域のほぼ真ん中に位置するような立地なので、例えばエネルギー運搬船のスタートアップもあります。めちゃくちゃ発電して電力を本土に運ぶための拠点とか、そういうのになったりする可能性もあるなと思っています。

自由度が高いのが本当に何よりの魅力ですね。漁業権とかも設定されていないようなので、比較的地元との調整が少なくても実証実験を開始できると思っているので、多分これから多くのスタートアップが実際に海を使った実証実験やりたいとかだったら候補に出てくる場所になると思います。

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