#30 ファンドGPから見た、
日本のスタートアップの
可能性 〜Emoote 熊谷GP × ACV唐澤・村上〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前回に引き続き、日本発のエンターテイメント特化web3ファンド「Emoote」のジェネラルパートナー熊谷祐二さんにお話を伺います。Emooteは世界のweb3プロジェクトに投資するファンドですが、同時に、熊谷さんは日本のweb3スタートアップにも期待しています。後半では、国境やローカルの文化をあまり意識せずに事業展開できるweb3の世界で、日本のスタートアップに勝機はあるのかどうかについても聞いてみました。

ポッドキャストで語られたこと

  • Web3で強みとなる日本のIPの力
  • どのようなWeb3スタートアップに投資しているか
  • 今後期待されるホットな領域

前回からの続き)

村上:特にWeb2、Web3でお互い補完し合ってみたいのがあったときに、ブログでも拝見しましたが、特に「日本人だと足元にありすぎて、気づかないような感じが結構Web3で生きてくる」みたいな話をもう少し深堀したいなと思っています。

日本は、言葉の数も多ければ、非常に独自の文化がありますよね。言語化しづらいこととか、英語だと表現が一つなのに、日本語だとたくさんの表現であったり。そういう中で、おっしゃっているようなエモーショナルエコノミーが価値だとしたときに、日本の持つ当たり前だけどすごい多様であることが価値だったり強みだったりするのかとか、日本のコンテンツという軸でお考えをお聞きしたいなと思いました。

熊谷:僕がよく挙げる事例としては、まず、日本のIPの話ですね。例えばいくつかIPのキャラクターの名前を挙げれば世界中誰でも分かるようなものっていっぱいあると思うんですよね。これがやっぱり日本の価値だと思っていて、IP自体ももちろんそうなんですけれども、根底にあるのはクリエイターの方々のクリエイティビティだと思っています。

例えば北米から生まれた日本テイストのAzuki(Azuki NFT)みたいなプロジェクトがあるわけですが、実際日本人が作ってるわけじゃなかったりするわけです。それはそれでもちろん良いことだと思うんですが、日本人の方々がもっとこれを作っていったらどういうものができるのかってことを試行錯誤していくと、単純に一時的な流行ではなくて、長期的に続くようなIPが作れる可能性があると思っています。

要は「このキャラクターが好き」という感情がその感情価値だと思っているので、そこまで持っていけるかどうかですね。これがただ儲かるから、とりあえずキャピタルゲイン狙いで買っておこうじゃなくて、このキャラクターが好きというところまで(持っていけるか)。

例えばそれはキャラクターデザインかもしれないですし、裏のストーリーテリングかもしれないですし、あとWeb3で大事なのはナラティブな物語だと僕は思ってるんですけども、自分にとってこのキャラクターが何なのかとか、自分とそのキャラクターの間に存在する物語が何なのかを作り出す力が、日本ならではのクリエイティビティを使っていくとできるんじゃないかと思ってるのが一つ目ですね。

二つ目が不合理な消費を生めるというところがあると思っていて、この例によく出してるのは投げ銭です。例えばアイドルやVTuberのライブを見ていて、あるときすごく感情が高まって、「すごい良いね!」ってなって、投げ銭しちゃうようなことです。でも、投げ銭は、かなり不合理な経済活動じゃないですか。自分の手元からお金が失われちゃう。その瞬間冷静になれば、1000円を自分の手元にキープできるわけだけども、投げてしまうという行為です。

こういった行為が生まれるから経済って回るんですよね。要はWeb3の世界はより勝てることを意識するからこそ、お金を失うことをどう促せるかみたいなことが大事で、それによって生産と消費のバランスが回るのではないでしょうか。

例えばVTuberのライブみたいなものは日本独特の文化です。これらをどういったメディアに載せるかとか、どういったキャラクターを使うかはさておき、こういった仕組みとかキャラクターを作るのが日本のクリエイターのすごさであり、文化の凄さであるのかなというふうに思っています。

村上:そうですよね。IPは表層としてあるけど、それはなぜかを深掘ってみると、そもそも日本人はそういうクリエイティビティというか、ずっと考えて好きでやり続けるみたいなところが備わっていますよね。さっきもSTEPNで消費をいかに促すかという話ありましたけど、特にWeb3で、そういった元々感情で動くところが結構強い国民性は、結局ファンダメンタルなところで非常に重要だという話なのだとすごい理解できます。

熊谷:おっしゃる通りだと思います。そこは多分まだ僕らも言語化できてない部分もあると思いますが、もう何百年も多分続いてきているような、当たり前のようなものが文化になっていたりします。あと、クリエイターじゃなくても僕ら一消費者として、例えば漫画を読んでたりアニメを見ていたりですとか、消費者としてのリテラシーとして備わっている部分もあると思うんですね。そういったものをうまくクリエイションに繋げられると良いんじゃないかなと思っています。

唐澤:直近いろいろ投資されていて、X to earnとかGamiFiだけじゃなくて、eスポーツだったり、EthSignみたいなB向けのソリューションだったり、アフリカのプロジェクトなんかもあって、(投資先の分野は)かなり多岐に渡るのかなと思っています。投資先を決める基準や、最近どういうところが一番ホットなのかを共有いただけますか?

熊谷:まず投資方針ですけれども、先ほど申し上げたように領域を絞って、こういった領域がこれまでどういう歴史を歩んできてどういうふうに将来向かっていくのかみたいなところっていうのを、時間軸を作りながら僕の中で仮説を持っています。その中で、例えば「こういう変化があるんじゃないか」に対して、「こういうサービスあり得るよね」というものに対して普段からアンテナを張っておいて、そこにうまくはまるようなところに投資をさせていただくことが多いかなと思っています。

あとは領域でもそうですし、エリアでもそうですね。例えば最初にアメリカで流行ったものがアジアに流れてきて、それがちょっと遅れてインドに入ってきて、中東に入って、アフリカに入ってくるみたいなことがあります。時間軸はサービスによってバラバラだと思いますけれども、いろんな経済の影響もあったりだとか、文化の発展の影響があって、そういったタイムマシン的なことが一定働いたりするので、これからアフリカでどういうチャンスがあるんだろうみたいなことは、アフリカのスペシャリストではないですけれども考えたりしています。

アカツキ本体で言うと、「AET Fund」という海外向けファンドを2016年頃からやっていて、インドの企業に一定数投資をしているんです。やはりインドって、この10年くらいすごく人口爆発して経済も伸びてきている中で、どうやって海外の先行事例をインド国内の事例として取り入れていくかみたいなところを、僕らも投資をして見てきています。そういったタイムマシンの考え方はすごく面白いと思っていて、アフリカとかに投資をしているのはそういった考え方を当てはめています。

投資基準に関して少し触れたいんですけれども、STEPNに投資をした理由でもあるんですが、大きく大事なことが二つあるかなと思っています。

一つはやはり創業チームの強さですね。これはWeb2までとも変わらないですね。テーマとしておもしろいなとか思って投資をしたいなと思うこともあるんですけども、やっぱり最後は人です。環境が変わったときにそれをどう立て直せるとか、うまくいかなかったときにどう仮説を組み立て直せるのかとか、仮説の強さや深く考えられるかという思考力のところが一つと、あともう一つはやっぱり実行力です。

STEPNはこの二つの力がものすごく強いです。最初に会ったときから思いましたけれども、その後もずっと、ホワイトペーパーとかの更新を見ていてもアプリの更新を見ていても、ものすごく強くて、僕の記憶の中でも圧倒的に優秀だなと思っているチームですね。

二つ目がこっちはWeb3独特な部分なんですけども、コミュニティの強さです。よくWeb2まででいうとMVP(Minimal Viable Product、最小単位のプロダクト)を作って、ユーザーにはまったかどうか(PMF、プロダクトマーケットフィット)ということを検証するんですね。

それとは別にWeb3はコミュニティマーケットフィットみたいなものだと思ってて、プロダクトはなくてもコミュニティは作れると思ってるんですよ。要は僕らとか、そのプロジェクトの人たちが掲げたビジョンにどれだけの人が共感して日々応援してくれるのか、または作り手に回ってくれるのかみたいなところは、プロダクトがなくても、ミニマムに検証できると思っていて、そこのコミュニティの強さみたいなものは一つ判断軸としてよく見ています。

その上で最近見てるものを具体的な投資事例として2つ紹介させていただくと、一つ目がreNFTです。彼らはNFTのレンタルプラットフォームみたいなものをやっています。なぜここに投資をしたかというと、これまではPFP(SNS のアイコンに使われる NFT アート)やNFTがとりあえず一つのソーシャルなコモディティとしてあったりだとか、持っていて気持ちいいとか、値上がりを期待しているとかでNFTが流行ってきたわけですけども、やっぱりもっと多くのNFTのユースケースが広がっていくと思っているんです。

もっとNFTが流動化してくると思っていて、皆がNFTを買って使うってだけじゃなくてレンタルして使ってみるとか、買ったけれども使わないとか、僕はライブ行かないから貸してあげるとか、ユースケースが絶対もっともっと増えてくるはずで、それが一番最初に顕著に出たのが、GameFiの世界ですね。

誰かがAxie InfinityのAxieを買って、自分はプレイしないで誰かに貸して儲けを70対30で折半するとかいうのが出てきたので、ゲーム以外でもこのレンタルの概念はNFTが普及するにあたって、これからもっとユースケースが増えてくると思っているので、レンタルプラットフォームに投資をしたわけです。

二つ目は、実は僕らの注力領域ではないんですが、EthSignというDAOのフォームやバックグラウンドツールを作っているところです。分かりやすい言葉で言うと、DocuSignのWeb3版と捉えていただくとわかりやすいです。

これが何でパワフルかと言うと、契約を全部スマートコントラクトで管理できるところです。今まで例えば銀行に行って融資を受けるためには、例えば「こういう会社でこういう歴史があって、こういうところと取引していて、今こういうPL/BSで…」みたいなものを全部紙の書面で提出する必要があります。

これが従来の融資のプロセスだったとすると、そういったものが全部スマートコントラクト上にまとまっていれば、それを全部OnChainでデータが見えるわけですね。「会社の経歴はこうで、今資本金このくらいあって、どういうトランザクションの履歴があって」というのは全部OnChainで追えるので、そこに対してもっとパワフルな契約形態みたいなものができるんじゃないかと考えて投資をさせて頂きました。

領域でいえば株式会社にある意味代わる存在としてDAOが今注目されていて、DAOに対してのいろんなバックオフィスでのツールは絶対これからもっと増えますね。ここはかなりホットな領域で、世界的に大きく注目すべき領域じゃないかと思っています。

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