デジタルコピーが必要な理由:ディープフェイクをビジネスに活用する方法(1)

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Image credit:Synthesia

合成メディアサービスを提供するHour Oneの戦略責任者であるNatalie Monbiot氏は「ディープフェイク 」という言葉が嫌いだという。本誌VentureBeatに彼女は次のように述べている。

「ディープフェイクは合成画像とジェネレイティブAI人工知能の『無許可』での使用を意味します。我々は最初から認可されている上で使用しています」。

イスラエルのテルアビブやニューヨークに拠点を置く同社を彼女は「実在の人物の似顔絵をデジタルで生成し、かつ、法的・倫理的な枠組みを構築したAI企業 」と説明する。

公認と無認可ーー。既存の画像や動画に写っている人物を他人の肖像に置き換える合成メディア、すなわちディープフェイクが長年リベンジポルノやフェイクニュースと関係してきたことで大量の悪評を呼んでいる時代において、これは重要な定義だ。

ディープフェイクという言葉は2017年、「deepfakes」という名前のRedditユーザーが、コミュニティの他のユーザーとともに、ポルノビデオの女優の体に有名人の顔を入れ替えた動画を共有したことに由来する。

Microsoftの最高科学責任者であるEric Horvitz氏の最近の研究論文によると、ディープフェイクの脅威は確実に迫ってきているそうだ。本物の人間と話しているような錯覚を与えるインタラクティブ・ディープフェイクや、悪質な業者が多くのディープフェイクを作成し、合成履歴を編集するコンポジショナル・ディープフェイクなど、その種類は多岐にわたる。

最近では有名人のディープフェイクに関するニュースが増殖している。トム・クルーズ、イーロン・マスク、レオナルド・ディカプリオのディープフェイクが無許可で広告に登場したというWall Street Journalの報道や、ブルース・ウィリスがディープフェイクの肖像権を譲渡したという噂(事実ではない)などがある。

ディープフェイク論争のビジネス面

実はディープフェイクの議論にはもう一つの側面がある。合成メディア技術を専門とするいくつかの企業は、ビジネスビデオ制作に使用される「公認の」ディープフェイクはどうなのか?と指摘している。

彼らが主張するには、ディープフェイク動画の使用例のほとんどは許可されているものなのだそうだ。例えば、従業員のトレーニング、教育、eコマースなど、企業のビジネスシーンで使用される場合などだ。さらに有名人や企業のトップなど、合成メディアを活用してバーチャルツイン(コピーされた仮想空間)に「アウトソース」したいユーザーによって作成される場合もある。

特に映像コンテンツへの需要が飽和状態にあると思われる現在、バーチャルヒューマンという合成メディアを利用して、従来の映像制作の高価かつ拡張性のない課題に取り組もうとしている。例えば件のHour Oneは、過去3年半で10万本のビデオを制作した。顧客には、言語学習のリーダーであるBerlitz、NBC UniversalやDreamWorksといったメディア企業が含まれている。

ジェネレーティブAIが主流となった現在、ディープフェイクの企業向け使用事例の未来は明るいと考えられている。Forresterは2023年のAI動向予測を発表したが、そのうちのひとつは、フォーチュン500社の10%がAIツールでコンテンツを生成する、というものだ。

このレポートではHour OneやSynthesiaなど、AIを使って動画コンテンツ生成を加速させているスタートアップについても言及されている。また別のレポートでは、今後5、7年の間に、デジタルメディアの90%が合成的に生成されたものになる可能性があると予測している。Monbiot氏は次のように述べる。

「そのデータは私にはとても強気に聞こえます。しかし技術が成熟し、大規模なプレーヤーがこの分野に参入しているため、破壊が起きているのは事実です」。

ビジネスの側面に関して、ディープフェイクは「非常に過小評価されている」と、ロンドンに拠点を置くSynthesiaのCEO、Victor Riparbelli氏は主張する。2017年に設立された同社は、1万5,000人以上の顧客と135人のチームを持ち、毎月成長を続けているという。顧客にはマクドナルドを含むファストフード大手、調査会社のTeleperformance、世界的な広告持株会社のWPPが名を連ねている。Riparbelli氏は次のように語る。

「この技術でできる悪いことばかりに目を向けてきたのは、非常に興味深いことです。それはすなわち、この技術への関心が高まり、使用事例が増えたということの裏返しだと思います」。

いつでも編集できる生映像

ほとんどの企業は質の高いコンテンツにアクセスすることが難しいだけでなく、ハイグレードなコンテンツ制作を可能にするスキルも持ち合わせていないとMonbiot氏は言う。

「ほとんどの企業にはコンテンツ制作、特に実際のタレントを起用したハイグレードなコンテンツ制作を可能にするスキルを持った人材がおらず、動画を編集する能力も社内にリソースを持っていません」。

Hour Oneはノーコードのプラットフォームなので、コンテンツ制作のスキルを持たないユーザーでも、さまざまなバーチャル・ヒューマンを選んだり、自らバーチャル・ヒューマンになることが可能だ。

Hour Oneの最初の企業クライアントの1つであるBerlitzは、150年間教室での学習を提供してきたが、デジタル変換する必要に迫られたという。講師をコンテンツに登場させるために、ライブのビデオ会議を使っているがこれでは拡張性がないとMonbiot氏は言う。

「たとえ世界中の制作リソースがあったとしても、そのコストや投資、すべてのファイルの管理は正気の沙汰ではありません。AIを使えばコンテンツを継続的に更新し、リフレッシュすることができます」。

現在Berlitzでは、Hour Oneで作成された2万本以上の様々な言語のビデオを保有している。

一方、Synthesia社は自社のAIを実際の俳優で訓練しているという。この俳優の画像と声を、クライアントがトレーニング、学習、コンプライアンス、マーケティングなどのビデオを作成するために選択できるバーチャルキャラクターとして提供する。役者は、その役者を使って作成されたビデオごとに報酬を受け取る。

企業のお客様にとってはいつでも戻って編集できる「生きた動画」になると、Riparbelli氏は説明する。

「多くの人が世界最大のファーストフードチェーンで仕事を経験したことがあるのではないでしょうか。つまり彼らは毎年、何十万人もの従業員に職場の安全や顧客からの苦情への対応、揚げ鍋の操作方法など、あらゆることを教育する必要があるのです」。

「以前は、数本のビデオを録画することはあっても、それは非常にハイレベルで「腐ることがない」ものでした。それ以外のトレーニングはパワーポイントのスライドやPDFで行われることが多いです。ただこれは特に若い世代にとってはあまり良いトレーニング方法とは言えません」。

そこで現在ではビデオコンテンツを制作しているのだが、これは従来のビデオ撮影ではなく、テキストを置き換えるためのになるのだという。

次につづく:複製されたインフルエンサーが働く世界:ディープフェイクをビジネスに活用する方法(2)

via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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