テスラも参戦する「仮想発電所」Swell Energyの強み(1)

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発表は各地域ごとに行われる。こちらの画像はアメリカ、カナダでのトップ200に選ばれたClimate Techスタートアップ。  Image credit:HolonIQ

気候変動など「インパクト経済」インテリジェンスを提供するHolon IQによれば、過去10年間でClimate Tech(気候変動関連テクノロジー)で10億ドル以上の評価をつけた未公開企業、いわゆる「ユニコーン」は47社誕生している。中でも2021年はややバブル的な環境も手伝ってか、28社がその仲間入りを果たした。さらに同社は毎年、9月頃から年末にかけて世界中のトップ1,000のClimate Techスタートアップを発表しており、2022年の発表も始まっている。こちらで取り上げられている革新的なスタートアップは年始から2022年の総まとめとして取り上げる予定だ。

今回は、世界トップ1,000を紹介する前の前菜として、Climate Techの中でもメイン分野(Storage、Food、Mobilityなど)には分類できないが、我々の生活を変えるには欠かせないであろう領域で活躍するスタートアップにスポットライトを当てたいと思う。すぐに関わることができるものもあるので、興味のある方は是非記事を呼んだ後に試してもらいたい。

仮想発電所「Swell Energy」の仕組み

Image credit:Swell Energy

カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠を置くSwell Energyは、エネルギー管理およびスマートグリッドソリューションのプロバイダーだ。2014年創業の同社は、これまでにSoftBank Vision Fund 2などからシリーズBラウンドの資金調達を完了しており、累計調達額は5億8,200万ドルに上る。

同社が取り組むのは「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれる分野だ。分散している家庭レベルの小規模エネルギーリソースを集中させ、一つの発電所のように運営する仕組みのことで、日本でも徐々に普及してきた太陽光パネルや蓄電池のような出力が不安定な再生可能エネルギーを調整する役割を持つ。日本でもテスラが宮古島に設置したことで話題になった。

Image Credit : テスラジャパン

既存の配電網の中に、様々な関係者と共にハードとソフトを緻密に組み上げていく必要がある仮想発電所において、同社は分散型エネルギー資源管理システム(DERMS)ソフトウェア プラットフォーム「GridAmp」を運営する。それぞれのハードを繋ぎ、最適化アルゴリズムと機械学習モデルを使用して、集約されたシステムの操作を自動化する。街の電力を司るOSのようなものと言って良いだろう。まさに仮想発電所のコアだ。

もちろんソフトウェアとして大きな役割を持つことは間違いないが、同社が評価される推進力は他にも関係者とのコネクションが際立っている。

既存で設備を所持している家庭以外にもテスラのPowerwallやsonnenのソーラーストレージなどOEM機器と連携して導入を進めるだけでなく、電気自動車のインフラを開発するNuvveとの連携、さらにはハワイ、ニューヨーク州、カリフォルニア州の電力会社とVPP契約を結び、100MW規模の太陽光発電と200MW規模の分散型エネルギー貯蔵を提供する4つの仮想発電所の開発を実行している。

日本では余剰電力は経済産業大臣が定める固定価格(2022年度は10kW未満で17円/kWh)で売電できる。しかし、各国で対応は異なり、アメリカでは売電は事業者のみに与えられ、消費者は電気料金の相殺に留まっていた。同社が独自容量入札プログラムを電力会社に提供し、家庭でも売電ができる仕組みを実装したことで消費者の支持を得ているという。

現在、日本でも仮想電力はエネルギーの地産地消が期待できるシステムとして注目を集めている。アメリカと比較すると遅れを取っている印象はあるが、前述の宮古島でのテスラの取り組みはハードの開発においてDENSOなどのメーカーなども参戦するなど広がりを見せている。

次につづく:トークン投資で温室効果ガスも削減、a16zが支援する「Flowcarbon」の方法(2)

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