核融合技術開発の異端児「Helion」の変化球アプローチ(2)

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Image credit:Helion

(前回からのつづき)2社目に紹介するHelionは、核融合技術開発スタートアップの中でもアプローチが特殊なスタートアップだ。ワシントン州エベレットに拠点を置き、2013年創業の同社はY Combinatorを卒業し、これまでにシリーズEラウンドまでで5億7780万ドルを調達している。

同社の特徴は核融合反応で発生するエネルギーから直接電気を抽出する点にある。基本的にはITERやCommonwealth Fusion同様に、磁気を使ってプラズマを閉じ込める磁場閉じ込め方式を採用しているが、磁場によってただ閉じ込めて維持するのではなく、加速器を使ってプラズマ化した重水素とヘリウム-3の燃料を衝突させ、さらに磁場でプラズマを圧縮することで熱を生み出し、核融合反応を発生させることを目指している。このとき核融合によってエネルギーが放出され、プラズマが膨張することで変化した磁場をファラデーの法則で誘導起電力として直接電気を得るシステムを構築している。

同社によると、多くの核融合システムによるエネルギーは発生した熱で水を加熱して蒸気を発生させ、タービンを回すことで確保するが、その過程でエネルギー変換を挟むため、多くのエネルギーを損失するという。それに比べて、電気自動車の回生ブレーキのように、電磁エネルギーを95%という変換効率で回収できる点が同社の特徴になる。原子炉に加えてタービンの構築なく、既存の電力送電網に繋ぎこむ点も魅力といえるだろう。

また、燃料に重水素とヘリウム-3を用いているのも他社とは異なる点だ。よく用いられる重水素とトリチウムで発生するエネルギー17.6MeVよりも、重水素とヘリウム-3で発生するエネルギーは18.3MeVと大きい。しかし、重水素とトリチウムの反応では1億度程度に加熱すれば良いのに対して、重水素とヘリウム-3では10億度程度にしなければならない

さらにヘリウム-3は量子コンピューティングや重要な医療画像処理でも使用される超希少同位体であるため入手が困難で、2000年代後半には月に多くのヘリウム-3が存在することが確認されると、核融合燃料の採取場所としてアメリカ、中国、ロシアが注目していたほどだ。同社はこの課題を磁場による圧縮と、特許取得済みの高効率クローズド燃料サイクルを利用するプラズマ加速器で重水素を融合することによりヘリウム-3を自社で生成することに成功し、これらの問題を解決する。

同社のプロトタイプPolarisは2024年までにプラズマ核融合ゲインの正を達成するための生産と実証実験を行う予定だ。

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