#36 web3エンジニアをどう育てるか 〜PortFolder CTO長塩 × ACV唐澤・村上〜

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本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

前回に引き続き、PortFolderのCTO長塩征幸さんに話を伺います。2000年代から2010年代にかけて、それまでクラサバ(クライアント〜サーバ型)と言われたアプリの多くが、webアプリに移行していったのを覚えています。なかには必ずしもTCP/IPで通信する必要のないサービスもあったでしょうが、開発のシンプルさ、インターフェイスにwebブラウザが使えること、ネットワークが整備しやすいことなど、メリットの方が大きかったからです。

従来型のwebアプリをweb2アプリ、ブロックチェーンを使ったDApp(分散型アプリ)をweb3アプリと呼ぶなら、web2アプリ→web3アプリの波も少なからずやってくるのではないでしょうか。一見、ブロックチェーンを使う必要が無いサービスだったとしても、その方が開発しやすいとか、他の既存web3サービスと連携しやすいとか、いくつかの理由が考えられます。必然的に求められるのがweb3エンジニアということになりますが、まだまだ不足しています。

自身もエンジニアである長塩さんは、web3エンジニアの育成にも力を入れておられます。web3エンジニアを増やすにはどうすればいいか、長塩さんのアイデアを伺ってみることにしましょう。また、web2からweb3に転換を図るサービスや事業を持つスタートアップは今後、少なからず出てくるでしょう。ユーザにそれをどう受け入れてもらうか。また、サービス提供者側はユーザにどのように接していけばいいか。自らの体験も交えて、お話しいただきます。

ポッドキャストで語られたこと

  • サービスがweb3転換したときのユーザの反応と対応
  • web2エンジニアがweb3エンジニアになる方法
  • web3エンジニアのキャリアパス

前回からの続き)

唐澤:もう1つお伺いしたいのは、既にある程度ユーザがついてるサービスに後からweb3転換するってちょっとハードル高い感じがするんですよね。クリエイターによっては良く思わない人もいるかもしれません。どうやってそこを乗り越えたのかについてすごく興味があります。

長塩:まだ今乗り越え中かもしれないです。実際ユーザさんからの「PortFolderがそっちに行くとは思わなかった。見損なった。」といったTwitterの書き込みもありましたが、そこは業界全体が変わっていくことを期待しています。

僕らが「NFTって、そういうもんじゃないんだよ」と言うこともできるんですけど、もっと長い目で見て、社会が投機以外の価値に慣れてきたら、きっとそういうことも減っていくと思っています。みんなで社会をちゃんとした方に持ってこうぜという、そういう作戦でいます。

唐澤:それが割と早く来るという見立てがあるからということですよね。例えば、10年後にしか来ませんだったら、その前に会社潰れちゃいますみたいな話だと思いますし。確かに今この瞬間も、投機的なプロジェクトに対してお金が集まらなくなってきたりとかもありますよね。

長塩:僕らは母数が世にあるサービスよりも全然少ないですから。もしかしたら確かにたくさんのユーザーを抱えてる100万人、200万人がDAOで使っています、そのうち30%が嫌がりますと言ったら厳しいと思うんですよね。サービスとして大打撃だと思う。自分は結構ブロックチェーンの未来を信じている側の人間なんで、「やっちゃえば」とか思ってしまいます。

最近自分が個人で取り組んでいることとしては、web3界隈にそうじゃない人たちを引き入れるということ、特にエンジニアでやっていますね。今とにかくweb3エンジニアが足りない。僕が過労で倒れてしまうかもしれないという切実な気持ちもあるので、とにかく人を引き入れたいと思っています。

今のはエンジニアの話ですけど、そうじゃない領域とかでも、ブロックチェーンに対する正しい理解を世に広めることを、この界隈にいる人はやっていくべきだと思うし、それがきっとさっきの「NFTなんか」みたいな声を減らすことにつながると思います。

唐澤:web2エンジニアという表現が正しいかはさておき、そういう人たちをweb3に引き込む際に、何が大事なんでしょうか。どういうふうにそのハードルを越えるのがいいですかね?

長塩:そこは今本当に自分も悩んでる最中で。まだちゃんとした成果を出せてない中で、僕の研究という前置きの中でなんですが、いろんな人にヒアリングしたんですね。実際に今ブロックチェーン詳しくないエンジニアとかに、なんでそういう勉強に興味持てないんですかと聞いたら、「自分の利益になると思えないから」という声が多いです。それはやっぱりトリガーとなるものが、こっち(web3)に来てない人には無いというのが皆さんの意見です。

村上:ブロックチェーンエンジニアは足りなくて単価が高くなる傾向にある中で、フリーランスでグローバルで働いてる人であれば、結構引く手あまたというか、いろいろやりようがあるはずなんですよね。ただ日本国内で見るとプロジェクトが少なかったので、それは原因として大きいかなと思いますね。

長塩:でもそれを乗り越える方法は、デマンドを増やすのが難しい以上、興味を持ってもらうとかしか無いんですよね。それは僕もどうしたら良いか悩んでいます。今は直接考え方を届ける方法はいろんなやり方があると思うんですね。

自分でnoteを書いたりYouTubeに出たり、あるいはこういうポッドキャストもそうですよね。最近こういうのに出始めてる理由は、割と今言った理由が大きいです。実際に会って話すと、やっぱり「ちょっと勉強してみようと思いました」という声も聞きます。

だからZoomで繋がったり、直接会ったりしています。直接会うときのパスはTwitterですね。Twitterで「エンジニアの方は一緒にご飯食べましょう」とか、「ハッカー飯」というエンジニアの方と繋がって、ご飯を食べに行ったりするサービスで、この間もそこで会って話したりとか、続けています。

唐澤:web3エンジニアとしてのキャリアパスのパターンみたいなものってあるんでしょうか。こういうキャリアパスだと成功しやすいとか。

長塩:これも界隈でいろいろ話はあるんですけど、そもそもweb3エンジニアでも割とジャンルが今分かれつつあります。

イメージしやすいsolidity(でスマートコントラクト)を書く方の話で進めると、キャリアパスでいうとまずは自習から入ることになります。web3エンジニアの募集、solidityのエンジニア募集って、実は日本でも取引所とかで結構多いですね。

あとGamiFiの会社では、double jump tokyo さんとかですね。でもいきなりそこに入るのはまず厳しいですね。かなりハードルが高いので自習から入ることになりますが、ほぼやることが決まっていて、「CryptoZombies」というオンラインレッスンから入ることになります。

でも、web3エンジニアってそもそも、solidityを書けると言っても、ERC721(NFTの標準)もあるし、ERC20(トークンやコインの標準)もあるし、それ以外の領域もいろいろあるし、web3アーキテクトみたいなのも需要あるので、自分がどこに行くかによってキャリアパスは変わってくるんですが、特にアーキテクトのパスは今のところ無いので、経験しかないですね。

村上:結構web2的なことをわかっていないと、DAppsのアーキテクトとか無理ですよね。

長塩:web2領域の話も全然出てくるんで、分かっていないと厳しいですね。でもそれをやるために、DeFiのコードとかはGitHubに絶対上がってるんで、それを見るのはめちゃめちゃ勉強になりますね。あとはやっぱり実務。実務に入ると、周りにまずそういうエンジニアがすごく多いので、勉強の速度は一気に上がるのと、書かないと分からないというのは今までと同じです。

唐澤:長塩さんて僕の知る限りPortFolderをメインにやりながら他にもweb3エンジニアとして色々やられているんですよね。

長塩:そうですね、自分のクライアントはGamiFiプラットフォームを国内で作ってる会社さんなので、そこで今エンジニアとして入っています。

唐澤:なるほど。そういうオポチュニティはどういうふうに見つけてきたんですか?

長塩:エンジニアのフリーランスの仲介の方が一番情報を持ってますね。これ世に出てこないんですよねあんまり。今はそうなっちゃってます。

唐澤:本当はそこに結構ニーズがあるんでしょうね。ただ、 CryptoZombiesくらいだったら皆とりあえず見てみましょうで済むんですけれども、おっしゃったようにやっぱり生きたもの(実務)に接するためには、オポチュニティが無いといけない、これをどれだけ安定してサーブできるかっていうのが結構、国内の一つの課題かもしれない。

長塩:そうですね。でも今、卵が先か鶏が先かみたいな状況にもなっていますね。

唐澤:割とweb3の領域って、結構みんなでやっていこうみたいな精神がすごく強くて、だからもちろん会社に所属しながらも、そういうのをやってみたりとか、まさしくマルチキャリアみたいなものがすごい増えてると思うんですよね。だから実はex-アクセンチュアとか含めて、かなりweb3関連の人材もいるので、何かぜひ一緒に盛り上げていけたらいいなと思います。

長塩:まさにそうですね。アクセンチュアは大企業のクライアントがとても多いので、そういうクライアントさんに向けて、例えばこういうweb3の発信をしたりですとか、アクセンチュアの中にもめちゃめちゃいい人材が多いので、そういった方をweb3に、とかいう話を僕の方からもむしろご協力したいと思います。

あとはアクセンチュアのweb3イベントとか、meetupとかあったら、皆行きたいと思うでしょうしね。お互いに相乗効果絶対あるでしょうし、いろんな関わり方がきっとできると思っているので、ぜひ。

唐澤:こういうポッドキャストもその一環ですし、おっしゃるように我々もエンジニアが世の中に圧倒的に足りてない中で、アクセンチュア自身が結構人材をたくさん持ってるようなファームなので、そういう面でマーケット全体の成長にうまく貢献していけるといいですね。ぜひ今後ともいろいろ協力できたらと思います。

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