
Image credit: BionicM
※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから
ロボット義足「Bio Leg」を開発する BionicM は31日、シリーズ A ラウンドのエクステンションで3.7億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、NVenture Capital (NEC キャピタルソリューションの完全子会社)、新生企業投資、東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)、きらぼしキャピタル、ちばぎんキャピタル、井戸義経氏(元 ANKER JAPAN 代表取締役 CEO)、AIS PARTNERS、厳浩氏(EPS ホールディングス 代表取締役会長)。
今回の調達を受けて、BionicM にとって、シリーズ A ラウンド全体での調達額は9.2億円に達した。東大 IPC は2020年9月のシリーズ A ラウンドの 1st クローズに続くフォローオンでの参加。同社では調達した資金を使って、Bio Leg の販売拡大、ロボット義足の次期モデルや要素技術である動作センシング技術や動作アシスト技術などの研究開発、組織体制強化などを行う。すでにローンチしている日本や中国に加え、アメリカへの進出も視野に入れる。
BionicM は、自身も骨肉腫のために9歳のときに右足の切断を余儀なくされた Xiaojun Sun(孫小軍)氏らが設立したスタートアップ。2015年に、東京大学大学院情報理工学系研究科情報システム工学研究室で研究開発がスタートした。世界に1,000万人いる義足の潜在ユーザのうち、高価であったり機能が限定的であったりすることが理由で、実際に義足を利用できているのは40%程度の人々。義足を必要とするすべての人々に高性能な義足を低価格で届けるべく、製品化に向け2018年に会社法人を設立した。

Image credit: BionicM
BionicM の説明によると、世界の義足市場の99%以上は受動式義足であり、ロボットテクノロジーが普及する昨今において、その技術進化の恩恵が及んでいない市場だという。受動式義足は義足利用者への身体的負担が大きいだけでなく、自然な歩行動作を取れない、階段を両足交互に昇降することができないなどの制約から周囲の目が気になるという精神的負担も生んでいる。この課題を解決できる可能性があるのがロボット義足だ。
BionicM は Bio Leg を昨年製品化し、以降、日本と中国で販売を行ってきた。Bio Leg のビジネスモデルは B2B2C で、膝・足首などのパワード義足の標準モジュールを義肢製作所に供給、義肢製作所がモジュールをソケットに組み込み、下肢切断者などに販売する形を取っている。受動式義足が100万円程度であるのに対し、一般的な電動のパワード義足は1,000万円以上。これに対し、Bio Leg はロボットテクノロジーを実装しながら、パワード義足の3分の1以下の価格を実現している。

Image credit: BionicM
価格から言って、Bio Leg の普及には、政府などの補助金制度の適用を受けること不可欠だろう。日本の場合、厚生労働省の障害者支援機器に認定されることで、国や地方自治体の支援対象となることが期待される。BionicM では制度への来年の申請を目指して製品をテスト中だ。中国にも義足ユーザは多くいるが、公的支援の不足からハイエンド義足の市場は小さいらしい。そこで同社では、FDA 承認を念頭に置いたアメリカ市場への進出も視野に入れている。アメリカでは、医療保険の適用を受けられる可能性がある。
BionicM では、Bio Leg のロボット義足としての機能のみならず、歩行データが取得できる強みを生かして、新たな可能性も模索する考えだ。義肢の装着や使用時のリハビリを支援する義肢装具士や理学療法士は、専門のトレーニングを受けたプロフェッショナルではあるものの、属人的なノウハウや知識に依存する部分も少なくない。データを使ってリハビリプロセスを可視化することができれば、ユーザとのコミュニケーションもやりやすくなり、リハビリが効率化されることも期待できるだろう。
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