
前回に引き続き、気候変動リスクにソリューションを提供するスタートアップの紹介をする。最初のテーマは「Data and Finance」から3社。全体のリストは下記に掲載する。
アメリカのコロラド州に拠点を置く「Project Canary」はClimate Techと環境パフォーマンスに焦点を当てたデータ分析スタートアップだ。2022年2月にInsight PartnersがリードしたシリーズBラウンドで1億1,100万ドルを調達し、累計調達額が1億2,100万ドルとなった。
同社が提供する価値はメタンの漏出やその他の排出物をリアルタイムで監視することだ。これまでは石油や天然ガス会社は、高価な赤外線カメラ、ドローンやヘリコプターによる上空飛行、排出ガス検出トレーラーを組み合わせて一時的に漏れを見ることはあっても、機器が高価なため継続的に監視することは難しかったという。
同社は石油や天然ガスの掘削現場などでメタンと揮発性有機化合物(VOC)の排出量をほぼリアルタイムで検出し、手頃な価格で施設レベルの環境評価と継続的な監視ソリューション「Canary SENSE Platform」を提供する。

検出の中心になるのがNASA、米国国防総省などに環境監視システムを提供するLunar Outpost社と協力して開発した、メタンやVOCの排出を10億分の1解像度で検出できるハードウェアだ。ラインナップはCanary X、Canary S、Sensirion Nuboで、ソーラーパネルからのエネルギーで動く定点観測機器であるため取り扱いは容易になるという。それぞれの現場に合わせてセンシングデバイスを組み合わせることで、最適なデータとレポートをカスタマイズすることが可能となる。彼らはここで得られたデータをもとに企業が運用と排出プロファイルを測定および改善できるようにサポートする。
ユーザーはメタン、水などのエネルギーサプライチェーンのリスク要因を評価できるためResponsively Sourced Gas(RSG)検証(指定された環境下で分子が生成されたという独立した第三者検証を受けた天然ガス)が可能で、商品の購入者は関わった企業の環境パフォーマンスをトラッキングできるようになる。ユーザーは主に石油および天然ガスの生産者、パイプラインオペレーター、LNGプロバイダーだ。
2022年3月にはレーザーベースのガス分析器と漏れ検出システムの大手プロバイダーであるAeris Technologiesの買収を発表し、センシングデバイスのラインナップを拡大した。これにより石油や天然ガスの掘削現場だけではなく、公益事業、埋め立て地、農業、工業団地などの温室効果ガス(GHG)を正確に検出および監視したい場所でも同社のソリューションが扱えるようになるという。
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