CES 2023: 主催責任者Steve Koenig氏が語った、今年の注目テックトレンド

SHARE:
CES 2023のトレンドについて語る、CTA のリサーチ担当バイスプレジデント Steve Koenig 氏。
Image credit: Dean Takahashi / GamesBeat

ラスベガスで開催中の大規模トレードショー CES を主催する Consumer Technology Association(全米民生技術協会)で、リサーチ担当副社長を務める Steve Koenig 氏は、注目すべき主要なトレンドを指摘し、その整理に一役買っている。

Koenig 氏は、次のように予見している。

エンタープライズ・テクノロジーは、イノベーションを推進し、不況から脱却するのに役立つだろう。パンデミック後の世界で不足する熟練労働者などに対処するために、ロボティクス、AI、メタバースに目を向けることになるだろう。

Koenig 氏は、「サービスとしてのメタバース(metaverse as a service)」と「モノのメタバース(metaverse of things)」を予見している。バズワードを一緒に組み合わせた究極の方法だ。

Koenig 氏は、エンタープライズ・テクノロジーのイノベーションは大企業と中小企業の両方から生まれると述べている。しかし、世界的な景気後退がテクノロジーのサプライチェーンにどのような影響を与えるか分からないため、回復には脆弱性があると同氏は指摘する。

依然として脆弱だ。中国(と新型コロナウイルスの新しい波との闘い)を見れば、それがいかに脆弱であるかを知ることができる。

2023年のアメリカのリテールテックの売上高予測

CTA は3日(アメリカ太平洋標準時)、アメリカのリテールテックの売上高が2022年の4,970億ドルから2023年には2.4%減少して4,850億ドルになると発表した。コンシューマテクノロジー支出は3年連続で急増し2021年には記録的な5,120億ドルでピークに達したが、今回発表された新しいデータは、パンデミック前の水準よりわずかに上回るものだ。CTA は、迫り来る景気後退とインフレが来年の消費者支出の重しになると予想しているが、コンシューマテクノロジー産業の収益は、パンデミック前のレベルをおよそ500億ドル上回って推移することになる。

Koenig 氏は、輸送コストが下がってきており、パンデミックによるサプライチェーンの不足が和らいでいる可能性があると指摘する。また、半導体需要が軟化し、チップの在庫が増加しているという。

悪いニュースは、チップが不足から供給過剰になる可能性があることだ。供給過剰の下振れリスクによって、この在庫を処理する際に、チップアーキテクチャの延期が見られるかもしれない。(Koenig 氏)

アメリカのハイテク経済ではサービスが伸びている。
Image credit: Dean Takahashi / GamesBeat

Koenig 氏は、アメリカでは1,000万人の熟練労働者が不足しており、企業も十分な労働者を雇うことができないと指摘した。

世界経済全体で、企業は労働者の確保に苦労している。レイオフもあるが、人はいた方がいい。そしてまだ頑固なインフレと金利上昇がある。連邦準備制度理事会は2022年に6回、金利を引き上げた。調査したエコノミストの60%が、2023年にアメリカがリセッションに陥ると考えている。(Koenig 氏)

しかし、Koenig 氏は楽観的な見方も指摘した。2008年と2009年の大不況の中で、4G 技術、スマートフォン、タブレット端末、ネットブック、モバイルブロードバンドなど、消費者のイノベーションが実現したというのだ。そして Koenig 氏は、今年も 5G 産業や IoT への応用、コネクテッドインテリジェンス、自律システム、量子コンピューティングなど、同様のイノベーションの波を見ることができると考えている。

この10年間で、コンシューマサイドではクラウド、AI、サイバーセキュリティ、SaaS、サプライチェーン、小売などのデジタルイノベーション、エンタープライズサイドでは 5G エンタープライズやインダストリアル、Web3、スマートファクトリー、自律システム、メタバースなどのイノベーションが期待できると考えているそうだ。その意味はともかく、彼は「モノのメタバース(metaverse of things)」を見ることになるだろうと指摘した。

企業がこれらの技術を展開することで、グローバル経済全体を下支えすることになると述べた。メタバースは、あなたが思っているよりも近いところにある。(Koenig 氏)

彼は、メタバースが投機的な言葉であることを認めたが、それが懐疑的に迎えられたとしても、それは現実のトレンドであると述べた。また、エンタープライズサイドの牽引役はデジタルツインであり、BMW やメルセデスなどの企業で現実の工場建設に先行する仮想工場の設計のようなものだと指摘した。

IoT は農場へ
Image credit: Dean Takahashi / GamesBeat

Koenig 氏は、電気自動車とそれに付随する充電システムも経済活動を活性化させるだろうと述べた。自動運転車が現実のものになれば、他のトレンドを相殺するのに役立つ。例えば、自動運転トラックは、アメリカにおけるトラック運転手の不足を相殺することができる。また、Koenig 氏は、車内で人々を楽しませ、車内のスクリーンやサブスクリプションサービスの隆盛が成長の起爆剤となると指摘した。

Koenig 氏は、デジタルヘルスのメンタルウェルネス、バーチャルリアリティの治療用途の成長も予測している。AI 技術は急速に広まっている。 John Deere が24時間365日稼働できる自動運転トラクターに AI を採用し、増え続ける世界の人口を養う必要性に対処していることを指摘した。

アメリカ経済の成長
Image credit: Dean Takahashi / GamesBeat

また、アメリカには現在、13歳から64歳までのゲーマーが1億6,400万人いることから、ゲームが成長を後押しすると指摘した。人口の4分の3がゲームをし、1週間の平均プレイ時間は2019年の週16時間から、現在は週24時間まで上がっているという。モバイルゲームがその鍵を握っており、つながりと社交の手段としてのゲームをめぐる傾向もある。

最後に、食料品の配達サービスなどが流行し、サービス経済が成長を続けていると述べた。テクノロジー経済で発生する1ドルのうち、約31セントがサービスに関するものとなっている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する