世界最大級のテックイベントCES 2023参加レポートVol.3ーーヘルスケアテクノロジーとサステナビリティ

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載。レポートはKDDIアメリカのサンフランシスコ拠点にてKDDI Open Innovation Fundの業務に携わる一色望氏が取材・執筆した。

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。今回は、1/5~1/8にアメリカ・ラスベガスにて開催された世界最大級のテックイベントと言われるCESの参加レポートを三部作でお届けいたします。

前回の記事では、注目トレンド4つのうちメタバースと移動手段の展示をご紹介しました。今回は、ヘルスケアテクノロジーとサステナビリティ領域の中で目立っていた展示を中心にご紹介します。

  • ヘルスケアテクノロジー

ヘルスケア領域においても非常にたくさんの展示が見られました。最も注目したのはロッテヘルスケアです。ヘルスケアプラットフォーム「CAZZLE」では、ユーザーの健康状態をアンケートや遺伝子検査によって12タイプに分類し、パーソナライズドされたサプリメントや健康食品の提供などを行うとのことです。

実際にデモを見せてもらったのですが、親しみやすいかわいいキャラクターでのタイプ分類や初めてでも使いやすいアプリUIから、かなり作りこまれている印象を受けました。今年4月にロッテ本来から分社化したばかりとのことですが、来年夏からの韓国での本格展開に向けてかなり大きなブースを設置しており、この事業への本気度をうかがい知ることができました。

(左)自分の健康状態に合わせたキャラクター。(右)カートリッジをセットすると自動でパーソナライズドされたサプリが出てきます。

また現地メディアで注目されていたのは、Withingsが提供する、トイレに設置する尿分析センサー「U-SCAN」でした。毎回の尿を分析することによって、月経周期や栄養、水分補給に関するアウトプットをアプリで受け取ることができるそうです。

記者(一色望)のメモ:少しびっくりするような発想のプロダクトですが、プロダクトのデザイン性は極めておしゃれで、ブースでは多くの来場者が関心を示していました。

フランスのスタートアップWithingsのブース。

サントリーも今回この領域でCESに初出展したことで注目されました。展示ブースでは、腸の音を計測し腸活をサポートするアプリ「GutNote(ガットノート)」や、脳波や心電などを計測することで身体の老化の状態を推定するウェアラブル端末「XHRO(クロ)」など、CESイノベーションアワード受賞製品を含む5つの展示がなされました。

昨年はマッサージチェアやスマートベッドマットなどおうち時間や休息時間にフォーカスを当てたプロダクトが目立っていたように思いますが、今回は日々の健康状態の管理やウェルネスに焦点を当てたようなウェアラブルデバイスやサービスが多くなっていたように感じました。

  • サステナビリティとESG

特にLVCCにブースを構える大手企業はどこでもサステナビリティへの考え方や取り組みについて、しっかりと1つの展示箇所を設けて説明していたことに感心させられました。去年は特にSKグループの展示が目立っていましたが、今年はパナソニックのカーボンニュートラル実現に向けたプロジェクト「Panasonic Green Impact」や、Samsungの「Net Zero Home」など、各社がサステナビリティへの取り組みをアピールしてていました。

(左)LGブースに展示されていたサステナビリティサイクル。(右)パナソニックのグリーンインパクトのブースには木を模した休憩所が。

その他気になった展示など

  • Web3

昨年はWeb3というワードを会場でほとんど見かけませんでしたが、今年はCoindeskにより会場の一角にWeb3 Studioが設置されたり、Web3やクリプト関連のパネルディスカッションテーマが見られたほか、LGからはNFTマーケットプレイスを搭載した新型スマートテレビが発表されました。市況は一気に冷え込んでしまったとされるWeb3ですが、悲観するのはまだ早いかもしれません。

CoinDeskが提供するWeb3スタジオ
  • スタートアップ

日本、韓国、台湾、中国、アメリカ、イタリア、フランス、スイス、オランダ、イスタンブール、アフリカ、ウクライナなど、各国各地域より参集したスタートアップ約1000社ブースが設置され、エウレカパークは熱気に包まれました。昨年同様、やはり韓国のブースは他国に増して非常に多いように思いました。会場では、アクセシビリティアワードやAge Techの文字を見かけ、ダイバーシティ&インクルージョンに配慮した展示も多くなっているように思いました。またTech Southの会場では、Web3や今話題のジェネレーティブAIに関連するコンテンツ生成のスタートアップも複数出展していました。

  • LOOP

昨年から公開されたラスベガスの新移動手段「LOOP」。車一台分がようやく走れる道幅の地下トンネルを、テスラが走行するというものである。昨年は乗れなかったのですが、今年は運よく乗車することができました。地下のターミナルやトンネルはカラフルなライティングが施され、走行開始直後のトンネル内ではかなりスピードが出ていたので少しエンタメ性に寄せた演出がなされていたように思います。行列ができていても、比較的流れが速いので、一度試してみる価値はあるかもしれません。

LOOPのターミナル。
地下トンネルに入る手前。

記者(一色 望)のメモ:地下に進むエスカレーターからこの光景を見るだけでわくわくしました!スピードが出すぎていて思わず声を上げてしまいました。車内にはEDMのノリノリの音楽がかかっていて、運転手さんも一緒に歌っていました。

最後に

今回はCESについてのレポートをお届けしました。昨年よりも見どころも多く、まだまだお伝えし切れていないことがたくさんあるように思います。今年は日本からの出張者もかなり多く、たくさんの方と交流することもできました。会場は3か所に分かれており移動だけでも一苦労なのですが、まだ市場で見かけることのない新しいプロダクトやサービスを一度にたくさん見ることのできるイベントですので、もし機会があれば是非ご来場されることをお勧めします。

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