AIで運送会社の配車最適化を支援、Logpose TechnologiesがジェネシアVから8,000万円をプレシリーズA調達

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「LOG」
Image credit: Logpose Technologies

AI を使った集荷・配送順序や担当車両の割当最適化を行う技術を開発するスタートアップ Logpose Technologies(以下、ログポーズと略す)は12日、プレシリーズ A ラウンドで8,000万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのはジェネシア・ベンチャーズのみ。これは、ログポーズにとって、今年3月に実施したシードラウンドでの4,000万円の調達に続くものだ。今回の調達を受けて、ログポーズの累積調達額は1億2,000万円に達した。

運送業界は深刻な人材不足に悩まされている。ドライバーの年間時間外労働時間上限の設定に伴う「2024年問題」、ドライバー不足で貨物の3分の1がトラックで運べなくなる「2030年問題」など、物流に実害が生じる危機はもう目前にまで迫っているという感じだ。運送業に人を集めるためのドライバーの待遇改善に向けた議論もあるが、長年の多重下請け構造が原因の一つとなって、おいそれと価格転嫁することはできないのが現状だ。

だが、日本のトラック物流は手詰まりか、というと、まだ改善の余地はある。国土交通省が毎年発表する「自動車統計輸送年報」によれば、営業用トラックの積載効率(実際に輸送したトンキロ=重量×輸送距離を、運送能力のトンキロで割ったもの)は2016年以降、40%以下に割り込んでいる。近年、積載効率が落ちているのは、EC 普及による輸送の多頻度・小口化、時間指定のある貨物の増加などが原因だ。この問題の解決には求貨求車の普及が有効だが、現在各社が提供する仕組みでは積載効率の最大化には至っていない。

Image credit: Logpose Technologies

ログポーズは、この積載効率の最大化の実現に向け、3つのステップでプラットフォームを実現する計画だ。現時点で提供しているのは、運送会社が配車計画を自動化できる SaaS「LOG」。配車計画は、クライアントからの集荷依頼に応じ、効率的な順序となるよう、時間そして輸送容量に合った車両を手配する必要があるが、多くの運送会社では熟練のスタッフが毎日数時間かけて作成してきた。ログポーズはこれを AI で解き、最適な配車計画とルートを担当者に提案する。作業は10分ほどで終了するそうだ。

代表取締役 CEO の羽室行光氏
Image credit: Logpose Technologies

配車計画やルート選定は数理最適化が難しい領域で、量子コンピューティングですら、ここまで高速に解けるところまでまだ至っていない。モデル化できる部分が局所的になってしまうからだ。実際の運用では、「この人(車)に、まとめて、このお客さん群を回って荷物を運んでほしい」といった例外も多く発生する。そういう局所的なプリファレンスが多くあり完全自動化は難しい。

そこで、ログポーズでは独自アルゴリズムを使って8割までは自動化し、2割は使いやすい UI で吸収するという考え方に至った。この2割の部分は、提案されたプランを配車マンに操作してもらうことで、AI がヒューリスティックに配車マンのやり方を学習していく。(AI が学習していない)使い始めの状態でも8割程度の提案は出来上がっていて、いきなりでも使える。

こう話すのは、船井総合研究所やサイバーエージェント出身で、2018年に ログポーズを創業した代表取締役 CEO の羽室行光氏だ(創業時は合同会社 luach)。行光氏の父である羽室行信氏は関西学院大学准教授で、データマイニングのビジネス応用や情報システムの研究を行なっており、ログポーズにはアルゴリズム開発のリードとして関わっている。このほか、約10名からなるチームメンバーの多くはデータサイエンスのスペシャリストで占められていて、科学的なアプローチで新たな物流インフラ構築を目指す。

Image credit: Logpose Technologies

現在提供中のプラットフォームは3つのステップの1つ目と書いたが、ログポーズでは今後、運送会社のネットワーク化(電話やメールでやり取りされている、自社で捌ききれない荷物の他運送会社への配送依頼)、最終的には最適な物流のマーケットプレイスを構築する計画だ。アドテクの世界には、広告主とパブリッシャー(広告の掲載枠)の間をつなぎ、価格に応じてリアルタイムで枠の入札を行う RTB があるが、ログポーズが目指す最終形はその物流版と言える。多重下請けが減れば、ドライバーの待遇改善にも繋がるだろう。

ログポーズでは今回調達した資金を使って、SaaS の販売体制の確立と、顧客から寄せられている要望のシステムへの反映などに注力する考えだ。ログポーズはさまざまな運送事業者に利用されているが、ミドルマイルと呼ばれる配送拠点や店舗間輸送でより効果を出しやすい。一方、ラストワンマイルの効率化の分野では、配送関連業務の効率化に特化した 207、産廃の配車計画やルートを最適化する「配車頭」提供のファンファーレ、ラストワンマイル特化配車システム「Loogia」を提供するオプティマインドなどが存在する。

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