CES 2023: MeetKai、会話型AIとメタバースの作成支援ツールを公開

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MeetKaiは、ブランドがリアルな仮想空間を構築するのを支援している。
Image credit: MeetKai

MeetKai は、メタバースと会話型 AI 技術のポートフォリオを作成するという目標の一環として、新しいクリエイターツールを展開した。

ロサンゼルスに拠点を置く同社は、主に会話型 AI 技術により、世界で5,000万人以上のユーザを抱えている。現在、MeetKai はメタバースを向いており、今週ラスベガスで開催されるトレードショー「CES 2023」でそのツールを披露している。

同社は、シームレスなメタバース体験の作成を支援する「MeetKai Reality」「MeetKai Metaverse Editor」「MeetKai Cloud AI」を発表した。

MeetKai は、3Dグラフィックの極端なハイエンドを目指すのではなく、高価な専用ハードウェアを必要とせず、誰もが Web ブラウザ経由でアクセスできる体験をターゲットにしていると、CEO の James Kaplan 氏は GamesBeat とのインタビューで述べている。

同社は、AI の専門家である Kaplan 氏と、億万長者の投資家で半導体のベテランである Weili Dai 氏がエグゼクティブチェアウーマンとして率いている。

昨年、MeetKai のチームはニューヨークに行き、タイムズスクエアのビルボードにある QR コードからスマホでアクセスできるメタバースデモを公開した。スマートフォンのカメラアプリで QR コードをタップすると、ブラウザアプリがタイムズスクエアのアニメーションを生成し、そこに自分のアバターを連れて歩き回ることができるのだ。アバターの行き先は、スマホ上でコントロールすることができる。

リアルさを追求

このデモのフィードバックを受けて、MeetKai が5日発表したツールの開発に着手したと、GamesBeat のインタビューで Dai 氏 は述べた。

メタバースを作ろうと思ったら、ゲームを作るのとはわけが違う。全部自分たちで作ろうとすると、Meta と同じように失敗すると思うんだ。トンデモないツールを作ってしまうことになる。高品質な Web サイトをたくさん見るのと同じだ。テンプレートを使って、モバイルでもデスクトップでも使える高品質の Web サイトを、非常に低いコストで実現しているところもある。(その方が)非常に効率的だ。(Dai 氏)

教訓のひとつは、リアリズムを重視することだった。メタバースが話題になるにつれ、Kaplan 氏と彼のチームは、現実世界から仮想世界へという動きに異を唱えた。彼は、現実世界とメタバースを融合させることが正しい動きだと感じたのだ。

「タイムズスクエアでのテスト以来、我々は多くのことに取り組んできた。何がうまくいくか、何がうまくいかないか、多くを学んた。その結果、インテリアはとても重要だということがわかった。メタバース的な体験の多くは、ブロック状に見える。だから、見た目が良いものを作れば、大きなチャンスになる。それが、我々の目指すところだ。(Kaplan 氏)」

カスタムプロジェクトの作成

MeetKai は、ビデオスキャンした映像から短時間で 3D 空間を構築できる。

MeetKaiは、ビデオスキャンを短時間で3D空間に変換することができる。

Kaplan 氏によると、チームは、影や照明の視覚的忠実性で多くの進歩を遂げたという。物理ベースのレンダリングは、より良く見えるディテールを捉えることができる。そのおかげで、先月、Los Angeles Chargers とパートナーシップを結ぶことができたのだ。

我々がそこで行っているのは、店舗を中心とした Chargers のメタバース体験を構築することだ。そして、ロッカールームやトレーニング施設など、多くの重要な場所でスキャンを行う可能性がある。そして、それをビデオゲームのように見えない方法で行うのだ。(Kaplan 氏)

同社は、このような高価格帯のブランドのカスタムプロジェクトを数多く手掛けている。

基本的には、彼らが考えているコンセプトから、見た目がよく、ブラウザで動作し、連携されたものを作るという作業を行っている。このプロジェクトは、主に我々が検討しているアクティベーションに活用されている。企業は、お祭りや特別なイベントのためにアクティベーションを行うのが大好きだ。我々には、これらを非常に迅速に構築する能力がある。

MeetKai は、実際の店舗と同じ外観の店舗を数日で構築することができ、その画像はモバイル、VR、デスクトップなどで機能する。視覚的忠実度は、ピクセルストリーミングなしでブラウザ上で動作しながらも、人々がハイエンド作品に期待するものにはるかに近づいている。ブラウザで見るほとんどのものは、ピクセルストリーミングを使用しているが、それはあまりにも多くの費用がかかる。(Kaplan 氏)

「MeetKai Reality」

MeetKai が開発中のバーチャルヒューマン

MeetKai は、バーチャルヒューマンを制作している。

Chargers の他に、同社は大規模な農業会社と契約を結び、よりカスタムな仕事をこなしている。CES では、部屋の映像を取り込んで、数分で 3D で歩き回れる空間に変換するデモを紹介している。レンダリングの質は時間とともに向上するが、非常に迅速に公開することができる。

その技術は、「MeetKai Reality」と名付けられている。

MeetKai Reality は 、物理的な空間をデジタル化し、スマートフォンだけで瞬時に 3D レプリカを作成するユーザをサポートする新しいソフトウェアプラットフォームである。この技術を使えば、複雑なスキャン装置や何時間もかかるカスタム 3D モデリング無しで、現実世界の物や空間をメタバースに取り込むことができる。

Kaplan 氏は、職業を問わず、特に不動産業者、インテリアデザイナー、建築家、エンジニア、小売業者にとって有用なものになると考えている。ユーザは、スマートフォンやカメラ付きのインターネット接続機器さえあれば、数秒間の動画を撮影し、空間をレンダリングすることができる。

Kaplan 氏は、Chargers の空間のデモを見せながら、次のように述べた。

これは完全に自動化されており、人間が何もしていないのと同じだ。ただ、iPhone の動画を撮影しただけ。カスタム処理は一切していない。

無限の可能性

スポーツ企業各社は、実店舗ではスペースの関係で十分な種類の商品をストックできないため、MeetKai に e コマースストアの実現について相談している。また、現実世界をスキャンして仮想モデルにし、トレーニングやプランニングに役立てたいと考えている企業もある。また、ローエンドのスマートフォンが最も実用的なコンピューティングデバイスである地域でトレーニングが行われることもある。

このブラウザのコンセプトは、どんなプラットフォームでも使えるということだ。それが、タイムズスクエアテストを行った理由だ。(Kaplan 氏)

そして、メタバースに参加するために、何十万米ドルもかけて 3D 空間を構築する必要はないのだ。Kaplan 氏は、同社の AI に関する専門知識が、メタバース用のツールを作るという点で、成果を上げていると語った。ある空間をスキャンした場合、その空間のディテールを理解するために AI が必要だからだ。

Kaplan 氏は、空中で回転するスニーカーを見せながら、「靴を扱うのはかなり得意になってきた」と語った。

最近は ChatGPTStable Diffusion の影響で、AI が盛り上がっている。そして、我々もかなり面白いものを紹介できるようになった。コンシューマー空間では、AIで作れる楽しいものへの欲求が高まっている。

MeetKai Metaverse Editor

メタバース上の靴

「MeetKai Metaverse Editor」は、メタバースコンテンツ制作の新時代を切り開くのに役立つだろう。オブジェクト物理、クリッピング、ユーザフレンドリーに苦労する他の仮想デザインプラットフォームとは異なり、MeetKai の新しいソフトウェアは、複雑なツール無しで簡単に仮想構築と空間構築を可能にすると Kaplan 氏は述べている。

また、MeetKai のプラットフォームでは、誰でも自分のメタバースコンテンツを構築しながら、リアルタイムで共同作業を行うことができ、個人と企業の両方のメタバースプロジェクトをより管理しやすくすることができる。

これらの進歩に加え、MeetKai はその最先端のソフトウェアを使用して、会話型AIの境界を押し広げ続けている。このスタートアップは、現在の業界リーダーに挑戦するために独自の大規模言語モデル(LLM)を開発し、専門的な企業のユースケースを提供している。

MeetKai Reality」「MeetKai Cloud AI」「Meetkai Metaverse Editor」といった先進的な技術を世界で初めて展開した我々のチームの発明とイノベーションを非常に誇りに思っている。これにより、メタバースに関する我々の現実ベースのビジョンは、最初から達成可能で実用的なものになる。2022年の早い時期に発表したように、不動産、小売、スポーツ、建築、エンターテインメントなど複数の業界を対象に、超高速のスピードと効果で現実世界をメタバースに持ち込んでいる。(Dai 氏)

「MeetKai Cloud AI」

昨年、MeetKai はタイムズスクエアで QR コードをスキャンしてメタバースに入ることができるようにした。

MeetKai Cloud AIは、ドメインに特化したナレッジドリブンのバーチャルヒューマンを実現する初のクラウドサービスで、AI と人間のインタラクションを促進することにより、仮想空間に新たなレベルの没入感をもたらすだろう。

MeetKai のバーチャルヒューマンは、単なる雑談や過去の固定知識ではなく、業界初のリアルタイム推論機能を用いて、あらゆる形態のマルチメディアを活用し、わずかなコストと10倍の速度で、エンドユーザと即座に対話できる、と同社は述べている。

当社は、AI ファーストの製品が差別化を促進すると常に考えており、メタバースも同様だ。メタバースツールを構築する意図は、わずかな時間とコストで最先端の体験を構築できるようにすることだ。我々は、MeetKai Reality、MeetLai Editor、MeetLai Cloud AI を組み合わせて、ユニークなユーザ機能を提供するファーストパーティーの体験を数多く作っている。例えば、バーチャルストアでは、NPC がスキャンしたオブジェクトを検索して表示することができる。(Kaplan 氏)

MeetKai のメタバースツールは、アラカルトでも使えるという。

我々は、メタバースで構築しようとしているすべての人に、同じコストと時間の節約を開放したいのだ。つまり、あるブランドがすでにメタバースプラットフォームを持っていて、MeetKai の AI を連携したい場合、それが可能になるのだ。同様に、独自の NPC 技術を持っていれば、MeetKai の空間構築とレンダリング機能を活用することができる。(Kaplan 氏)

スケールの可能性

MeetKai 共同創業者でエグゼクティブチェアの Weili Dai 氏

Weili Dai 氏は、MeetKai の共同創業者であり、エグゼクティブチェアを務めている。

同社はこれまでに2,000万米ドル以上を調達し、従業員数は50人だ。マッキンゼーが2030年までに5兆ドルの価値があると考えるメタバースを狙う企業は500社以上あることから考えれば、MeetKai のそれは小さな努力に見えるかもしれない。しかし、Dai 氏は多くのリソースにアクセスすることができる。

彼女は、大手半導体企業になった Marvell Technology Group の共同設立者として裕福になった。ニューズウィーク誌が選ぶ「世界を震撼させる150人の女性」の1人に選ばれたが、彼女にも苦難の時期があった。7年前、Marvell の会計スキャンダルをめぐり、夫の Sehat Sutardja 氏とともに Marvell を解雇されたのだ。明らかな不正は発見されなかったが、規制当局によると、常に目標達成のための販売圧力があったとのことだ。

その後、Dai 氏は多額を投資する投資家として復活を遂げた。彼女は、自分の会社が世界レベルでスケールできるためのリソースを備えていると信じており、この機会は、彼女と夫が Marvell で行ったことを想起させる。

「あとは実行あるのみだ。我々は、常にテクノロジーを使って大衆にアピールしている。この製品は、最先端の技術であるだけでなく、非常に手頃な価格だ。規模を拡大し、大衆に届けることができる。MeetKai では、我々の戦略は、半導体側のリーディングテクノロジーと何ら変わりはない。」

メタバースは現実になるのか?

MeetKai CEO 兼共同創業者 James Kaplan 氏

Dai 氏はいろいろなことをやっていて、それを全部つなぎ合わせようとしている。

経済の低迷とメタバースに関する話題の減少について、Kaplan 氏は次のように語った。

「昨年の問題は、過疎通過とメタバースが非常に絡み合ったことだと思う。そして、人々は、実際にものを作ることを回避する方法として、仮想通貨の偉大な列車を見たのだ。仮想通貨は、実際に製品を作らなくてもお金を稼げる奇妙なものの一つだった。まるで詐欺のようでしょう? 古典的なボイラールームのようなものだ。でも、メタバースは Roblox の頃から存在していて、ずっと前からあったんだ。そして、本当に不況状態にあるのは仮想通貨関連だけだ。

我々が話をした企業は、ソーシャルで、人々が一緒に何かをすることができ、さまざまなブランドの活性化をもたらす 3D 没入型空間と定義されるメタバースに対して、非常に大きな意欲を持っている。NFT を販売し、それをメタバースと呼ぶことに対しては、あまり意欲的ではない。これは、我々にとって非常に良いことだと思う。

メタバースの構築には何年もかかるのだろうか?

Kaplan 氏は、子供たちが一緒に組み立てて大きな世界となることで、子供たちの間で根本的に成功した Minecraft を目指している。

私にとって、どうやってメタバースに到達するかという問題は、1つの会社が、この巨大な世界を、まるですべてのものを含めて開発するのではなく、人々が一緒に構築することになるのだ。MMO は以前から存在した。それには理由がある。私にとって、Minecraft は、World of Warcraft とは異なる魅力を持っている。なぜなら、Minecraft では、より大きな世界を構築しているからだ。

重要なのは、Roblox のようなものよりも、よりリアルなもの、より多様な芸術性を持つものを簡単に作れるようにすることだけだ。

クリエイターやビルダーは、我々のプラットフォームに来ることができ、我々はツールを用意し、すべての人々がこれを活用し、我々と同時に世界を作ることができるようになる。そして、これがとても手頃な価格なのだ。これは私の情熱のひとつで、世界中の誰もが並行して使えるようにすることだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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