蓄電システムH2が23億円、Web漫画「外見至上主義」作者の制作スタジオが14億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(1月2日~6日)

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Image credit: H2, The Grimm Entertainment

<1月16日午後7時更新> 「主なスタートアップ投資」「トレンド分析」加筆に伴い、タイトルを一部変更。

1月2日~1月6日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは12件で、資金総額は658億ウォン(約65.8億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • フローセル ESS(蓄電システム)企業 H2(에이치투)が230億ウォン(約23億円)を調達し、シリーズ C ラウンドをクローズした。累積調達額は562億ウォン(約56億円)に達し、二次電池ベンチャー企業で最大規模となった。カーボンニュートラルの推進に伴い、フロー電池は既存の化石燃料発電所の代替に必須とされる大容量二次電池技術で、火災の危険性がなく大容量化が容易であるという特徴を持つ。
  • ウェブトゥーンスタジオ「PTJ Comics」を運営する The Grimm Entertainment(더그림엔터테인먼트)が140億ウォン(約14億円)を調達した。作品「外見至上主義」で知られるウェブトゥーン作家パク・テジュン(박태준)氏が設立した会社で、独自 IP の確保でグローバルウェブトゥーン市場での成長可能性を高く評価され、資金調達に成功した。
  • VR ゲーム開発会社 Stoic Entertainment(스토익엔터테인먼트)が60億ウォン(約6億円)を調達した。グローバル進出を加速させる。同社は「World War Toons: Tank Arena VR」を12月に発売した。今後、グローバル B2C 市場進出を本格化し、売上の90%以上を海外で確保する計画だ。
  • メタバースプラットフォームの Anipen(애니펜)が50億ウォン(約5億円)を調達し、総額220億ウォン(約22億円)の調達でシリーズ B ラウンドをクローズした。2013年設立以来、AR、XR、デジタルツイン、ゲームコンテンツ開発などの技術力を持ってメターバスの開発の基礎を固めた。調達した資金で今年公開予定のメタバース開発に注力し、IPO も準備する。
  • Business Canvas(비즈니스캔버스)がシリーズ A ラウンドのセカンドクローズで50億ウォン(約5億円)を調達し、累積調達額は123億ウォン(約12)に達した。同社はドキュメントツール「Typed」を提供している。今回の調達により、自社サービスをエンタープライズ市場に拡張する計画だ。

トレンド分析

2022年、スタートアップが買収したスタートアップ

2022年はスタートアップ投資の悪化が本格化した時期だ。しかし、M&A 市場は年初から年末まで1年を通して活発だった。特にスタートアップがスタートアップを買収する事例が全体の80%を占めるほど多くの割合を占めた。ただし、買収資金は昨年より低くなったことが分かった。市場の悪化により企業の評価額が減少したためだ。景気後退対応策として、一部のスタートアップはフォローオン調達の失敗などから、低い評価額で売却先を探したりもした。

このような機会に乗じて、ユニコーン、ユニコーン予備軍と呼ばれるスタートアップが、同業スタートアップの買収に積極的に乗り出して競争力を強化したり、新規事業拡大機会を確保したりした。一度に複数のスタートアップを買収して事業を拡大する事例もよくみられた。Drama & Company(드라마앤컴퍼니)MyRealTrip(마이리얼트립)韓国信用データ(한국신용데이터)FreshEasy(프레시지)などが複数のスタートアップを買収した。

スタートアップが中堅企業や大企業の一部部門を買収する事例も今年はたびたび見られた。ZigBang(직방)が Samsung SDS の ホーム IoT 事業部を買収したのは代表的だ。Viva Republica(비바리퍼블리카)も Merchant Korea(머천드코리아)を買収し、格安モバイル市場に進出した。Yanolja(야놀자)は子会社 Interpark(인터파크)を通じて旅行プラットフォーム「Triple(트리플)」を買収し、規模を拡大する機会にした。

一方、大企業はスタートアップ投資を続けたが、買収には消極的だった。Kakao(카카오)や Naver(네이버)など、2021年に活発に買収を行った企業の名前はなかなか見つけにくかった。Hyundai Motors(現代自動車)が 42dot(포티투닷)を買収したことが最も注目された。業界ではユニコーン予備軍として取り上げられた 42dot が市場低迷で安値で買収されたという話も出た。また、教育分野でユニコーン予備軍を狙った ST Unitas(에스티유니타스)も MegaStudy(메가스터디)に買収され、Tmon(티몬)は上場の代わりに継続的な資本浸食により、最終的に Qoo10 に買収された。

買収合併は新たな機会をもたらすが、毒になることもある。Jeongyookgak(정육각=正六角)Chorocmaeul(초록마을=緑色村)を900億ウォン(約90億円)で買収し、キャッシュフローに問題が生じた。フォローオン調達を実施できていないため、人材削減などリストラに乗り出した。

昨年のように流動性供給が活発なときには、企業価値上昇のための買収合併で事業に勝つことができるが、投資心理の萎縮が続く現状では賢明な買収合併戦略が必要になってくるだろう。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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