インドの高度デジタル人材を日本企業に繋ぎこむTech Japan、ローンチから4年を経てバンガロールに現法を設立

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Image credit: Tech Japan

日本企業がインドの高度デジタル人材を採用するためのプラットフォームを展開する Tech Japan は19日、インド・バンガロール(ベンガルール)にインド法人を設立したことを明らかにした。このプラットフォームは、インド国内に23校あるインド工科大学(IITs)のうち7校では就職学年の学生3人に1人が利用するなど、ローンチから4年を経て広く利用されるようになっているという。Tech Japan では現地法人の設立や日本および現地スタッフの充実により、さらなる人材マッチング事業の加勢に繋げる。

Tech Japan は、以前シンガポールを拠点にデロイトトーマツベンチャーサポートでアジア地域統括を担っていた西山直隆氏が2019年2月に創業。以来、インドの高度デジタル人材に特化して、新卒と中途採用対象者と彼らを採用したい日本企業のマッチングプラットフォームを展開している。インドの高度デジタル人材を日本に招いて仕事してもらおう、という動きはかねてからある。昨年3月の「日印経済フォーラム」では、岸田総理とモディ首相がインドの IT 専門家をさらに日本に誘致することへの期待が表明されたことは記憶に新しい。

Tech Japan 創業者兼代表取締役の西山直隆氏
Image credit: Tech Japan

しかし、日本企業による高度デジタル人材の採用は順風満帆ではない。それはインドの大学周辺の独特の就職事情にも要因がある。毎年12月1日に企業は就職学年の学生にアプローチすることが解禁されるが、企業が大学を訪問して実施するキャンパスリクルーティングでは、企業側は学生に会ったその日にオファーを出すかどうか判断を迫られ、また、学生もそれを受け入れるかどうかの判断を数時間以内に回答する必要がある。同時に企業から受けられるオファーは、学生1人につき1オファーと定められており狭き門だ。

結果として起きることは、学生は就職を希望する企業を、自分のしたい仕事ができるかや社風などで判断するのではなく、会社のブランドイメージで選ぶようになる。こうした企業がオファーする際に提示する報酬も高額だ。かくして大学の就職課も、欧米の有名テックジャイアントやファームを優先して学生に紹介するため、トップティアの学生は先に取られてしまう。その結果、日本企業が採用対象候補となる学生にアプローチできるのは解禁から1週間後とかになってしまうので、まさに後塵を拝する状態だ。

2019年10月、インド工科大学(IIT)ハイデラバード校との覚書締結式で。左から:同大学同校学長の B.S. Murty 氏、Tech Japan アドバイザーで IIT 准教授の片岡広太郎氏、Tech Japan アドバイザーの武鑓行雄氏、Tech Japan 代表取締役の西山直隆氏
Image credit: Tech Japan

ここにデジタルの力で参入の糸口を見つけたのが Tech Japan だ。従来の方法では、紙に統一されていないフォーマットで手書きされたレジュメが就職課経由で企業に届けられ、企業はそこから、採用を念頭に学生にインターンのオファーを出していた。Tech Japan では大学が承認したフォーマットに則って、学生がインターネット越しに自分のレジュメを登録できるようにした。また、学生は自己紹介や短い動画を登録できる上、その企業でインターンを経験したり就職したりした先輩のフィードバックも見られるようにした。

こうした仕組みは三方よしだ。インドの学生を採用したい日本企業にとっては、整理された状態でより詳しい学生の情報を日本にいながら入手できる。大学は、どんな企業からどんな採用のアプローチがなされているのか、その傾向を把握できるようになる。そして、何より主人公である学生たちにとっては、遠い異国の地での就職を検討する上で、就職先候補となる企業の詳しい情報や先輩からの経験談を事前に入手できるようになる。結果として、インターンした企業への就職確定や、就職後の定着率も格段も上がるようになった。

英語では人材紹介をヘッドハンティングと呼ぶが、我々はハンティングではなく、ハーベストモデルで提供していきたい。つまり、一度、就職した人がライフプランの変化に応じて転職を希望したときに、再び我々を頼ってきてくれるような、そんな一生を通じてサポートできるような関係性を作ることが大事だ。(西山氏)

Image credit: Tech Japan

Tech Japan を経由して就職した人や転職した人との関係を維持するために、Tech Japan では時々、彼らを集めて、カレーや天ぷらを食べながら語らいあうパーティーなども開催しているという。こうしたオーガニックな付き合いから、先輩から後輩へ、そして後輩へと評判が伝承され、ネットワーク効果がユーザ獲得にじわじわ効いてくるわけだ。大学就職課経由でのアプローチと、先輩ユーザからのオーガニックな口コミが相まって、Tech Japan は新卒(就職)・中途採用対象者(転職)共に登録者数・案件数を増やしているという。

Tech Japan は今後、ダイレクトリクルーティングにも参入する予定だ。また、コロナ禍という社会情勢も手伝って、インターンをオンラインで運用できるようになったことは、企業にとっても学生にとってもメリットは大きいが、その反面、就職後のリモートワークが常態化しているスタートアップなどで、異国の会社への勤務から孤独感を覚える人がいるかもしれない。Tech Japan では日本での就職者への精神面での支援、妻帯者の場合は、妻の日本での就職の支援なども行い、ユーザのローヤルティ確保に繋げるとしている。

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