匿名のはずのウォレットからSNSアカウントを割り出し?「Addressable」からWeb3マーケの未来を考えてみた/GB Tech Trend

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750万ドルの調達発表した「Addressable」(Image Credit: Addressable)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

2月2日、Web3マーケティングサービス「Addressable」が750万ドルのシードラウンドを公表しました。暗号資産ウォレットユーザーのSNSアカウントを特定し、企業やコミュニティが直接Twitterなどのソーシャルメディアを通じてマーケティングできるサービスを開発しています。

TechCrunchによると、Addressableが5億件以上のウォレットと1億件以上のソーシャルアカウントを調査し、これらのデータポイントに一致するアルゴリズムを作成した旨の記載があります。ただ、明確にAddressableの独自技術に関してパブリックな確証が得られているとの記載はなく、その裏付けはあくまでも今回のラウンドに出資した投資家の評価で語られています。投資家にはViola Ventures、Fabric Ventures、Mensch Capital Partners、North Island Venturesらが名を連ねています。

さて、Addressableの登場は、かつてのFacebookやInstagram、Twitterに関連したマーケティングサービス登場の最盛期を思い出させます。たとえばInstagramでは、ユーザーが投稿写真につけたロケーション情報(店舗や地名に紐づけられたハッシュタグなど)から、特定エリア周辺の店舗情報をプロモーションするサービス「GroundSignal」が登場しました。「ハイパーローカルマーケティング」と呼ばれる新たなマーケティング領域の誕生です。このトレンドは位置情報共有SNS「Zenly」を買収し、同社のコア機能にロケーションを組み込んでいくことになったSnapchatにも引き継がれています。

ではWeb3を起点とした時、どのような新たなマーケティング領域が誕生するのでしょうか?

今回、Addressableが提供するとしているサービスはシード段階でまだあまり情報も少ないので断定はできないのですが、匿名性の高いウォレットユーザーのSNSアカウントを特定「できた」とする点が特徴であり、やろうとしていることはMailChimpなどのシンプルな情報配信の可能性があります。ただ、購入したNFT資産に関連するゲームやイベント情報を単純にSNSにプロモーションするだけでは、Web3“ならでは”の領域として昇華することは難しいように思われます。

ここからは私見ですが、Web3ならではのマーケティング手法のアイデアとしてひとつ、「リミックス」という考え方をご紹介させてください。

Web3では著作権による利益を放棄し、作品を完全にパブリック・ドメインに置くことを可能にする「CC0」の考え方が率先して取り入れられています。誰かが生み出した作品を自由に使えるように開放し、新たな作品を生み出すためのリミックス活動を促進させる文化が醸成されつつあるのです。

この特定のユーザーに対して、企業が自社ブランドをモチーフにしたデジタル作品のリミックス創作オファーを出す「リミックスオファー」が、新たなマーケティング活動として価値を見出されることも考えられるのです。

実際、NIKEに買収されたバーチャルスニーカースタジオ「RTFKT」が、当時18歳のデジタルアーティスト「FEWOCiOUS」とコラボレーションして制作したNFTスニーカーには300万ドル超の値が付けられました。新進気鋭のアーティストとのコラボレーションによってブランド側の認知度のみならず、制作したアーティスト側にも制作費以上の利益がもたらされました。

企業とクリエイターがまさに「コラボレーションして」マーケティング活動を手がけたケースです。

Web3ではこのように、マーケティング活動で生じたクリエイティブに新たな価値を付与できる可能性が出てきます。この新しい仕組みを取り込むことで企業とクリエイターがブランド価値を相乗的に上げる、そんなWeb3ならではのマーケティングアプローチに注目が集まるのではないかと考えています。

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