ウォレット開発から始めた理由:Ginco 取締役副社長 房安 × ACV唐澤・村上(3)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

ポッドキャストで語られたこと

  • 企業が自前でNFTマケプレを作る理由
  • カストディアル vs. ノンカストディアル
  • ウォレット開発から始めた理由
  • 〝繋がるコールドウォレット〟が誕生するまで
  • 暗号資産業者の求めに応えた高いセキュリティ
  • 非Web3企業がWeb3を始める上で重要なこと
  • 事業開発の苦労、高かったハードル
  • インフラ・ウォレットを開発するユニークな存在
  • あらゆるチェーン&トークンへの対応
  • 「経済の巡りを変えていく」ためのアプローチ

ウォレット開発から始めた理由

村上:私も2017年ぐらいに始めたときには、もうGincoさんはあったイメージです。なぜ当時からこの領域をやられたいと思ったんですか?

房安:ビットコインとブロックチェーンというワード自体は学生の頃、2015年ぐらいから代表の森川と一緒に話題にしていて、元々大学時代からの友人なんですけど、インターネットがやっぱり2人とも元々好きだったので、少し遡るとマウントゴックス事件がTVでも報道されており、技術系の学生としても非常に興味を持っていて、自分たちでやるならブロックチェーンの分野かなみたいな、なんとなく当たりがあったっていうところがありますかね。

村上:比較的入ったのは自然で、マウントゴックス事件とかもあったから、そこで安心とか安全みたいなところを提供できることにニーズがあるんじゃないかということで、ウォレットとかを始めたということなんですか。

房安:ウォレットを始めた理由ですが、ハッキングのリスクというところは非常に大きいです。やっぱり安全じゃないと誰も使わないということは非常に思っていました。

当時のマウントゴックスもそうですし、その後も連続して2017年後半からいくつか取引所のハッキングがあったと思うんですが、やはり法定通貨の銀行口座のように暗号資産においてもユーザが安全な口座を持てないと入ってこない。企業も法人口座が安全じゃないと入ってこない。

シンプルに口座が安全であるべきということを実現しようとGincoという名前にしたんです。

「銀行」をもじったものです。結局、BtoCでもBtoBでもブロックチェーンの世界にアクセスするための口座が必要ですよね、アカウントを開ける人が必要ですよね、という思いがこの社名には入っています。

よく入り口でウォレットの議論をされますが、ウォレット以外にもたくさんあるんですよね。BtoBだとブロックチェーンノードやインフラの安定性、やり方がそもそもルールに準拠しているのかどうか、既存のビジネスと繋がるのかどうか、そういったものを全て含めて、お客様が使える口座を提供する。そこが我々のビジネスのイメージですかね。

唐澤:ご自身でウォレットを作って、C向けにやるという選択肢はなかったんですか?

房安:実は創業時はBtoCのウォレット事業から始めています。2017年の会社の最初の事業はモバイルアプリで提供するノンカストディアル型のウォレットです。今も公開されていて、当時のビットコインブームで暗号資産を持っている人は、今でも Ginco ウォレットを使っていただいていたりしていますね。一応、総入金額が500億円ぐらいあり、昔からウォレットとして認識していただいているお客さんもいます。

唐澤:でも途中からB向けに……別にピボットというわけではないんでしょうけれど。

房安:ピボットというほどの大事ではないんですが、我々がイメージしていた安全な口座を提供するということに対してまずBtoCから仕掛かり始めたんですが、順番が逆かもしれないと思ったんです。

ハッキング事件が多く起きたので。企業が安心して暗号資産を持てないとその先のサービスも出来上がらないから、コンシューマーのウォレットを作ったとしても、そもそも普及しないんじゃないかというところに立ち返ってですね。

モバイルウォレットを出したんですが、その後すぐに企業が安心して使える業務用のウォレットを作ろうということで、そこの特許を考えるところから始めたんですね。その特許を申請取得した後に暗号資産ウォレットをBtoB向けに作って、暗号資産交換所に提供し始めたのが、BtoB進出のきっかけです。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する