10回目を迎えたHackOsaka、ピッチコンテスト「Hack Award 2023」に世界のスタートアップ9社が集結

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大阪市、都市活力研究所、JETRO 大阪本部、大阪産業局は21日、年次のスタートアップカンファレンスである「HackOsaka 2023」を開催し、日本内外から投資家・起業家・メディアなどが参加した。2013年からスタートしたこのイベントも今回で10回目を数えた。今年は4年ぶりにリアルイベントが復活し、ハイブリッドで開催された。

イベントの終盤では、Future Society(未来社会)をテーマに、クリーンテック、フィンテック、スポーツテックに関わるサービスを提供する、日本内外から集まったスタートアップ9チームが、大阪の企業との協業や投資誘致を念頭にピッチを行なった。本稿では、入賞チームを中心に紹介する。審査員を務めたのは、以下の2名の方々だ。

  • Brian Lim 氏(Rainaking Asia Pacific / Head of Rainkmmaking Expand)
  • Jingqian Ma 氏(Plug and Play Japan, Head of Ventures, Principal)

審査員は、オリジナリティ、フィージビリティ、コンセプト、社会へのインパクト、日本市場進出への意欲と可能性の各項目について10点満点で採点し、その合計点で上位チームが選抜された(スポンサー賞は、各スポンサー個別審査による選抜)。

GOLD Award Winner: Bramble Energy(イギリス)

気候変動はグローバルな課題であり、産業や用途を超えて、迅速で効率的な世界規模での脱炭素化に取り組む必要がある。それにもかかわらず、燃料電池技術は、長期にわたり単一ブロックでのソリューションしか提供されず、応用が利かないままだ。

Bramble Energy の PCBFC 技術は、 十分に確立されたプリント基板(PCB)産業由来の安価な生産方法や材料を活用することで、水素燃料電池を製造する際のコストと複雑さを削減する。既存の PCB 生産インフラや材料を活用することで、より単純かつ迅速に、はるかに費用効率が高い方法で市場参入を図る。

Expo 2025 Osaka Kansai Japan/JETRO Osaka Award Winner: Néolithe(フランス)

世界の温室効果ガスの約6%は、リサイクル不可能な廃棄物を処理(埋め立て・焼却)することで放出されている。これは近年掲げられている SDGs や排出ゼロ目標と相いれない。Néolithe では、これら廃棄物を化石化して骨材を作り、建設用(コンクリートや道路)に再利用する。同時に炭素回収という面においてもメリットがある(廃棄物1トンに付き CO2 換算で320kgが回収される)。

Néolithe は昨年、フランス発の体験型ギフトサービス「SmartBox」の創業者 Pierre-Édouard Stérin 氏のファミリーオフィスから2,000万ユーロ(約28.7億円)を調達した。同社ではフランス西部に床面積9,500㎡の工場建設に着手しており、また、1,700㎡の研究所と3,000㎡の本社も建設する予定だ。2026年には、売上高1億ユーロ(約143億円)を見込んでいるという。

Seevix Material Sciences(イスラエル)

現在利用されている素材は、強靭性、弾性、熱安定性、耐久性、持続可能性などの特性を持つ代わりに、その製造においてはエコフレンドリーではないという厄介な矛盾を抱えている。またこれらの素材は、海洋投棄や埋め立て処分をされると、海洋生物や陸上生物に害を及ぼし、分解されるまでに数十年を要する。

Seevix Material Sciences は、先端バイオ材料とさまざまな産業におけるその用途開発に特化した合成生物工学の企業特許を取得した独自のプロセスでクモの糸の化学構造を再現した。エコフレンドリーで非動物由来の特殊な物質を自然生成させ、それを基に強靭性と弾性をあわせ持つ有用な素材を製造している。現代の生活に最も必要とされる製品に利用できる。

NTT West QUINTBRIDGE Award Winner:
Hankyu Hanshin Properties Award Winner: JOOKS(フランス)

旅先でも運動を怠りたくないと考える人は多いだろう。しかし、初めて訪れた街では、ジョギングするにもどちらへ向かえばいいかわからない。いっそのこと、ジョギングしながら観光するのは、時間の節約と健康の維持という2つのメリットを同時に追求することができる。スポーツと観光、2つの要素を1つのアプリに込めたおが「JOOKS(旧 Runnin’ity)」だ。

このアプリには、フランス国内はもとより、世界の3,000以上の都市の数千ルートがジョギングコースとして登録されている。コースは GPS 連携のアプリによって音声案内され、ヨーロッパの8言語に対応できる。2024年には、アラビア語、ロシア語、中国語にも対応予定だ。一連の観光は、必ず出発地点へと円を描くように戻って来られるようコースが設計されているのが特徴だ。

O-BIC Award Winner: Bibit(インドネシア)

Bibit は、Z 世代に特化したロボアドバイザーアプリだ。卓越した UI により、手軽にミューチュアルファンドに投資を実行できる。インドネシア証券取引所とインドネシア中央証券保管所によると、インドネシアでは2020年、個人投資家が前年比56%増加し、うち、92%が21歳から40歳だったことが判明しているが、一方で、株式市場に参加したことがあるインドネシア人はわずか2%だ(2022年現在、生産人口の6%)。

つまり、若い個人投資家は増えつつあるものの、インドネシアの投資家はまだ少ない。若いインドネシア人は銀行の定期預金など低利の資金運用にとどまっており、彼らに投資へのタッチポイントを増やし、この伸び代にフォーカスしようというのが Bibit のアプローチだ。資金はインドネシア中央証券保管所に預託されるため、ユーザは Bibit の経営状態によってリスクを負わないで済む。

SAKURA Internet Award Winner: Chia Network(アメリカ)

Chia Network(XCH)は、独自のレイヤー 1 ブロックチェーンだ。新しい合意形成メカニズム「PoST(proof-of-space and time)」と、独自に設計したプログラミング言語「Chialisp」を組み合わせ、ネットワークセキュリティを損なうことなくブロックチェーンのエネルギー消費量を削減する。

また、同社は2022年に世界銀行傘下の IFC と提携し「Carbon Opporutnies Fund」を立ち上げた。このファンドは、高品質で認証された炭素クレジットを調達し、トークン化・販売するモデルのための民間投資を呼び込むことができる GX(グリーントランスフォメーション)投資プラットフォームだ。

Hylium Industries(韓国)

Hylium Industries は、液体水素の製造とその応用に特化したスタートアップだ。5時間以上の飛行耐久性を持つ液体水素ドローンや mHRS(移動式水素充填ステーション)などのモビリティ水素ソリューションを開発している。ドローンはエネルギー密度の高い液体水素燃料電池を動力源とするため、従来のバッテリ式ドローンの数倍の飛行が可能だ。

また、mHRS は任意の場所に出向いて、車両、ドローン、UAM(都市型航空交通)への燃料補給にも使える。モバイル液体水素燃料パックは、自動車、飛行機、船舶などへ水素エンジンを導入することで CO2 排出を減らせる。これまでに、大邱の創造経済革新センター、Korean Heat Exchanger、ヒュンダイ自動車などから累積で2,500万米ドルを調達している。

ICAROS(ドイツ)

ICAROS は、VR フィットネスデバイスを開発している。ユーザは「プランク姿勢(うつ伏せになって体全体を真っ直ぐ保った状態を腕で支える体幹トレーニング)」でデバイス上でバランスを取り、VR ビデオゲームを操作する。つまり、没入感のあるゲーミフィケーションを取り入れたエクササイズにより、有酸素運動を効率化しようとするアプローチだ。

ホームトレーナー「ICAROS Home」を使えば、ユーザは宇宙や雲の上、水中の世界をバーチャルに体験できる。また、マルチプレイヤーモード「ICARACE」を使えば、ユーザ同士や AI との対戦も可能だ。同社ではこれまでに、オーストリアの VC である Segnalita から1億米ドルを調達している。今後は、保険対象となる、いわゆる「デジタル治療薬」の開発も強化する。

Descartes Underwriting(フランス)

Descartes Underwriting は、気候リスクに対するパラメトリック保険を提供している。通常の保険は補償に対する保険料を支払うが、実際に被った損害を補償するため、損害を査定・調査した後でしか保険料を支払うことができない。パラメトリック保険では、予め定義されたイベントの発生確率に基づいて補償するため、保険料が支払われるまでが迅速だ。ビジネスが中断せず、気候変動リスクと相性が良い。

2022年1月に Highland Europe と Eurazeo がリードしたシリーズ B ラウンドで1億2,000万米ドルを調達し、累計調達額は1億4,080万米ドルに達した。災害国家でもある日本にも拠点を設け、日本の企業保険ブローカーと協力し、台風、洪水、山火事、地震にも対応できる多調な保険商品を提案した。

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