COEXのデジタルサイネージ「Wave」デザインのD’strictが100億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(2月6日~10日)

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ソウル・カンナムにある国際展示場「COEX」に設置されたデジタルサイネージ「Wave」
Image credit: D’strict

2月6日~2月10日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは8件で、資金総額は1,415億ウォン(約142億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • デジタルデザイン専門企業 D’Strict(디스트릭트)が IMM Investment の SPC「Wave One」から1,000億ウォン(約100億円)を調達した。 COEX 広場に設置されたメディアアート「Wave」、済州(チェジュ)、麗水(ヨス)、江陵(カンヌン)に没入型メディアアート展示館「Arte Museum(아르떼 뮤지엄)」を運営している。昨年本社を海外に移転し、グローバル企業への成長を目標に掲げる。
  • ブロックチェーンメインネットスタートアップ Superblock(슈퍼블록)が90億ウォン(約9億円)を調達した。一般ユーザが運用できる軽量ノードを持つメインネットオーバーネットワークを開発中。今回調達した資金は、人材確保を通じて年内ローンチ予定のメインネット、ウォレット・スキャン・ブリッジなどの製品開発に活用する計画だ。
  • メディカルアグリゲータ MediBuilder(메디빌더)が90億ウォンを調達し、累積調達額は130億ウォン(約13億円)に達した。契約先病院にあわせ、カスタマイズされた経営支援会社を共同設立するモデルを提供している。調達した資金を使って、持続可能な病院の成長のための教育、人事、開発、海外マーケティングなどに集中する計画だ。
  • NdotLight(엔닷라이트)が80億ウォン(約8億円)を調達した。自社開発した 3D エンジンを活用し、手軽に高品質の3Dアセットを作れるデザインスタジオ「NdotLight」を開発。「Zepeto(제페토)」などのプラットフォームとの互換性と使いやすさが強み。クラウドベースの 3D マーケットプレイスを構築し、B2B に進出する計画だ。
  • エドテック企業 growV(그로비교육)が60億ウォン(約6億円)を調達した。幼児に特化した企業で、4~8歳を対象に英語、数学、ハングル関連のカスタマイズされたスマート教育コンテンツを専用タブレットで提供する「Super V(슈퍼브이)」を運営している。

トレンド分析

クライメートテックスタートアップが急浮上、各カテゴリにどんなプレーヤーがいるか

グローバルな景気後退の長期化により、スタートアップは資金調達にさらなる困難を抱えているが、クライメートテック分野のスタートアップに投資家の関心が絶えない。クライメートテックは、エネルギー、農業、フード、交通、建築など、広範囲に応用可能だ。韓国国内でもこの分野のスタートアップが徐々に主要な投資先として浮上している。Startup Recipe のデータによると、1月のスタートアップ資金調達額は12月と比べ60%以上下落したことが分かった。そんな中、100億ウォン台(約10億円)以上の資金を調達したのは、クライメートテックに関連したスタートアップだった。

国内で最も簡単に見つけられた分野は代替肉スタートアップだ。地球人カンパニー(지구인컴퍼니)DaNAgreen(다나그린)SeaWith(씨위드)CellMeat(셀미트)などがここ数年で何度も資金調達に成功した企業だ。ただ、最近では BeyondMeat など有名な代替肉企業の時価総額が下がり、関連分野の投資は鈍化しているという。

エネルギー分野では、エネルギー転換企業 H2(에이치투)が今年初め230億ウォン(約23億円)を調達し、累積調達額は560億ウォン(約56億円)を超えた。H2 は既存の化石燃料発電所の代替に不可欠な大容量二次電池技術だるフロー電池を開発している。1月には BlackRock から1,700億ウォン(約170億円)を調達したクリーンエネルギー企業 Brite Energy Partners(브라이트에너지파트너스)も注目された。そのほかにも累積調達額が700億ウォン(約70億円)に達したクリーンエネルギー企業 GridWiz(그리즈위드)、エネルギー IT プラットフォーム「SolarConnect(솔라커넥트)」なども過去数年間で大規模調達に成功した代表的な企業だ。

持続可能な建築プラットフォーム企業 EnergyX(에너지엑스)は、建築分野で ESG を実践している。 1月に200億ウォン(約20億円)を調達して累積調達額は315億ウォン(約32億円)に達した。EnergyX は、建物自体をカーボンニュートラルにして、建築部門から排出される炭素を減らす技術で、ゼロエネルギー建築物とエコな建築物を作っている。

循環経済の達成に注力するスタートアップもある。Reco(리코)は廃棄物管理サービス「UpBox(업박스)」を運営し、累積調達額は300億ウォン以上に達した。リアルタイム廃棄物排出データ、リサイクル量などをデジタルデータで記録管理し企業に SaaS 形態で提供している。そのほかにも、廃棄物収集とリサイクルを通じた循環資源ビジネススタートアップ SuperBin(수퍼빈)、スマート廃棄物管理ソリューションの Ecube Labs(이큐브랩스)なども注目された企業だ。

電気自動車分野では、Pluglink(플러그링크)が1月に電気自動車充電器の設置事業で150億ウォン(約15億円)規模の調達に成功した。

韓国国内では、気候テックスタートアップの中からユニコーンとなったスタートアップは存在しない。投資トップランキングに名前が挙がったスタートアップも存在しない。特定領域に偏らない多様性も必要であるし、まだグローバルな水準まで到達していない部門が多い。しかし、世界的な気候変動対応に合わせて関連企業が引き続き登場し、韓国国内の投資会社の関心も高まっており、市場はさらに活発になることが見込まれる。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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