Adobeがテキストから画像を生成「Firefly」でジェネレーティブAIで勝負に出るーー著作権問題も直接狙い撃ち

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Image credit:Adobe

Adobeは、3月21日に開催された年次カンファレンス「Adobe Summit」において、テキストプロンプトのみでオンデマンドに画像を生成できる一連のAIイニシアティブを発表した。これらには新ツールが含まれる。

PhotoshopやIllustratorといった人気のクリエイティブアプリを開発するソフトウェア大手のAdobeが、自社のクリエイティブ製品により多くの人工知能を注入する取り組みのひとつになる。これらのツールには、「Firefly」と呼ばれる新しいツールが含まれ、ユーザーはソフトウェアにテキスト説明を入力するだけで画像を作成できるようになる。

Fireflyは、Generative adversarial network(GAN)と呼ばれるAIの一種を搭載しており、OpenAIなどの企業も画像、動画、音声を生成するシステムを構築するために使用している。このツールは、2016年に発表された同社のAIプラットフォーム「Adobe Sensei」の一部であり、Adobeのクラウドサービス全体の機能を支えているものだ。

Fireflyは、近年登場したDALL-EやStable DiffusionなどのジェネレーティブAIツールに似ており、ユーザーは最小限の労力で斬新でリアルな画像を作成することができる。しかし、FireflyはAdobeの製品やサービスと統合されており、ユーザーはPhotoshopやIllustratorなどのアプリケーション内で生成された画像にアクセスしたり、編集したりすることができるようになっている。

「ジェネレーティブAIは、AI主導の創造性と生産性における本当に重要な進化です。何億人もの人々が、すでに私たちの製品全体でAIを活用する機能を使用しています」とAdobeのクリエイティブ製品グループSVPであるAshley Still氏は、VentureBeatのインタビューに答えた。

Fireflyに加え、Adobeは組織が顧客データを管理・分析するためのツールである顧客データプラットフォーム(CDP)の新機能も紹介した。CDPは、Adobe独自のSenseiテクノロジーとサードパーティプロバイダーとのパートナーシップによるテクノロジーの両方を使用して、コンテンツ作成とマーケティング最適化のためのジェネレーティブAIをサポートするようになる。

Adobe、「Firefly」で著作権問題を直接狙い撃ち

Still氏によると、FireflyはAdobeが立ち上げるクリエイティブなジェネレーティブAIモデルの新ファミリーになるという。最初のモデルは画像生成に特化したもので商用利用でも問題ないように設計されている。というのも、FireflyモデルはAdobe Stockのライセンス画像でトレーニングしたからだ。

画像を作成できる強力なジェネレーティブAIモデルの台頭は、著作権や所有権をめぐる議論に火をつけた。DALL-EStable Diffusionのようなサービスは、何百万枚もの既存の画像を使ってトレーニングされているため、そのユーザーがAIが生成した画像に対して所有権を主張できるかどうかという疑問が生じている。例えば、ストックイメージベンダーのGetty ImagesとStable Diffusionの開発元であるStability AIとの間では係争中の訴訟がある。

所有権や著作権をめぐる懸念は、AdobeのFireflyサービスの開始で直接的に解決されようとしている。Still氏はAdobe Stockサービスにはすでに、適切にライセンスされた高解像度の画像が数億枚あると指摘する。さらに、AdobeはFireflyサービスの一部として使用された画像について、Adobe Stockのコントリビューターに補償する計画を持っていると述べた。

将来的には、個人や組織が独自の画像やスタイルでモデルをトレーニングできるようにする予定だという。

FireflyでジェネレーティブAIを使いこなす

Fireflyが学習したコアとなる画像ライブラリの他に、このサービスを可能にする一連のコアコンポーネントが存在する。

Fireflyは、自然言語処理(NLP)技術を統合し、画像を生成するために使用されるユーザーのテキストプロンプトを分析し理解することが可能だ。また、SenseiのAIモデルには、ユーザーが利用したいさまざまなクリエイティブスタイルを理解する機能が含まれている。

実際の画像は、Adobeのサービスが画像を作成する拡散モデルを使用して作成される。また、Fireflyは生成されたサイズから画像をより高解像度にする高効率なアップスケーリングモデルを備えている。

Image credit:Adobe

さらに一歩進んで、AdobeはFireflyが生成するコンテンツの偏りや弊害を防ぐための支援も目指している。Adobeによると、基礎となるAIモデルがプロンプトとコンテンツの両方を分析し、Fireflyが文化や民族のバランスを考慮した画像を生成し、かつ有害な画像を生成しないようにするそうだ。

画像がどのように作成されるかについて透明性を確保する機能も、Fireflyには備わっている。2022年10月、AdobeはContent Authenticity Initiative(CAI)基準で、ジェネレーティブAIの使用における透明性を約束した。CAIは、基本的にコンテンツファイルに直接書き込まれるメタデータで、画像がどのように作成されたかを詳細に示すコンテンツクレデンシャルを持つための取り組みだ。

Adobe Experience Cloudに新しいSenseiが登場

Adobeは、Adobe Experience Cloudプラットフォームに新しいAIサービスも導入した。Still氏は、Adobe Experience Cloudはマーケターに焦点を当て、ビジネスユースケースを支援するものだと説明した。そのために、Fireflyはキャンペーン用の画像生成に役立つと主張している。また、将来的にはテキストやクリエイティブコピーの生成も追加する予定だという。

「当面、活用するモデルとしてはAzure Open AIサービスや、オープンソースのFLAN T5などがあります」と彼女は語った。Adobeの全体的な目標は、エンドユーザー(クリエイターであれマーケティング担当者であれ)が効果的に仕事をこなせるように、ジェネレーティブAI機能を自社のサービス全体に統合し続けることだ。彼女は最後にこう続けた。

「エキサイティングなのは、明らかにこの分野のテクノロジーは信じられないほど速く進化し続けていて、毎日、私たちの製品やサービスにテクノロジーを組み込む方法について新しいアイデアがあることです 」。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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