ジェネレーティブAIの波に乗る前に思い出すべきこと【ゲスト寄稿】

本稿は、Cherubic Ventures(心元資本)によるものだ。2014年に設立された同社は、アメリカとアジアの両方で活動するアーリーステージ・ベンチャーキャピタルであり、運用総資産(AUM)は4億米ドルだ。シードステージ投資を中心に、次の象徴的な企業の最初の機関投資家になることを目指し、大きな夢と世界を変える勇気を持つ創業者を支援している。同社は、サンフランシスコ、シンガポール、台北に拠点を置いている。

英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Cherubic Ventures. Founded in 2014, they are an early-stage venture capital firm that’s active in both the US and Asia, with a total AUM of 400 million USD. Focusing on seed stage investments, Cherubic aims to be the first institutional investor of the next iconic company and back founders who dare to dream big and change the world. Their team sits across San Francisco, Singapore, and Taipei.

The original English article is available here on the Bridge English edition.


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ChatGPT は、ジェネレーティブ AI 製品の波を引き起こし、テック業界に大きな波紋を広げている。わずか1週間で ChatGPT のユーザ数は100万人を超え、Twitter や Facebook を凌ぐ史上最速の成長を遂げたソフトウェアとなった。コピーライティング、コーディング、インテリアデザインといった分野での新しい AI ツールが次々と登場し、ジェネレーティブ AI はすでにベンチャーキャピタル界の寵児となっている。

CB Insight のデータによると、2022年のジェネレーティブ AI 関連の調達額は26億米ドルを超え、2021年のほぼ倍増になるという。マイクロソフトやグーグルといったテック大手は、AI 時代の最後の一言を誰が手にすることになるのか、強さを誇示するように新しい AI 製品を展開している。

しかし、このジェネレーティブ AI の急増は、15年前の位置情報サービスの立ち上がりを思い出させる。

2008年に発売された iPhone に後押しされるように、あの頃は位置情報技術が起業家の話題を独占していた。ソーシャルメディア、ショッピング、デイティングなどの分野でこの技術を活用した新製品が次々と登場し、それぞれが時代の次の大きなプラットフォームを目指した。

「位置情報戦争」がどこから始まり、どうなっていったのか、その代表例として Foursquare を見てみよう。バッジ機能のチェックインと位置情報の共有により、アプリのローンチからわずか1年で100万ユーザを突破し、2年かかった Twitter を抜いたのは記憶に新しいところだ。これにより、Foursquare は7,000万米ドルの VC 資金を集めるに至った。Facebook、Google、Groupon、Twitter などのインターネット大手もこれに続き、同様のサービスを提供する位置情報技術のスタートアップを積極的に買収した。しかし、これらのスタートアップはいずれも、その後ビジネスモデルを変更したり、消滅したりしている。そして、もともと消費者向けだった Foursquare は、今では企業向けのデータ分析プロバイダーとなっている。

ここから得られる教訓は、新しいテクノロジーは常に大きなチャンスを生み出し、起業を誘発するが、最後まで生き残れるのはごく一部のスタートアップだけであるということだ。では、ジェネレーティブ AI をめぐっては、どのようなマインドセットを採用すべきなのだろうか。

時間が経つにつれ、新しい技術だけで作られたスタートアップは、その技術を導入するための障壁が低くなった途端、その優位性を失ってしまう。AI がやがてコモディティ化し、どんな企業でも数行のコードで自社のサービスに組み込むことができるようになれば、それも同じことだ。位置情報サービスは、まさにそうだった。このような時、最も多くのユーザのペインポイントを解決し、そのユーザを維持することができるスタートアップが、夜を乗り切ることができるのだ。

新しいテクノロジーに直面したとき、創業者は起業の本質に立ち返り、まず自分たちが解決できるペインポイントは何か、どの業界で解決できるかを自問する必要がある。この2つのステップを踏んでから、初めて「このユースケースで新技術はどんな役割を果たせるのか」を問うべきなのだ。位置情報技術によって Uber や Google Map が存在するようになったが、両社とも自分たちを「位置情報サービス企業」と定義していない。彼らは、どの交通機関のペインポイントを解決する必要があるかという観点から出発したのだ。

創業者であれ、投資家であれ、新しい技術が登場するたびに問題の本質に立ち返ることができれば、これらの質問に対する答えは明らかになるはずだ。

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